イップス克服に向けて013:ロジャー・フェデラーに学ぶ「しない」選択
※過去の記事をさかのぼった情報です。ご了承ください。
▶イップスの人は、練習・研究・分析したがり屋さん
イップスになると、どうにかしようと、気ばかりがはやり、あからさまにボールが入らなくなる。
明らかに違和感を覚える。
漁るように情報を調べようとする……etc.
「自分はイップスなのか?」
「イップスとは何か?」
「どうすればイップスは治るのか?」
要するに、「する」ばかりになります。
そこで参考にしていただきたいのが、コチラ。
ロジャー・フェデラーの「出場すべきトーナメントを選ぶ」とは、出場「しない」トーナメントを選ぶ、とも言い換えられます。
復活を遂げたフェデラーも、たとえば2016年は、ツアー優勝が「ひとつもない」不調にさいなまれました。
そこで彼が打って出た施策が「しない」という選択。
イップスの人は基本的に真面目で、とにかく練習・研究・分析をしたがります。
しかしそのような今までのやり方で上手くいっていないのだとしたら、こちら(テニス上達メモ036.「今までのやり方では、どうしても上手くいかなかった……。そんな人へ捧ぐ必須の逆転成功法則!」)でご説明しているとおり「逆」をやらないことには、話になりません。
当該コラムでも触れていますが「20世紀最高の物理学者」とも評されるアルベルト・アインシュタインは“奇人”について、「同じことを繰り返しながら違う結果を期待する人」のことだと、定義したそうです。
上手くいかないにも関わらず、イップスの人が練習・研究・分析を繰り返していては、アインシュタインに“奇人”扱いされてしまいかねません。
そこで、フェデラーにならう「しない」選択です。
▶「しない」でいると、冴え渡る
「しない」でいると、ダメ人間になりそうな印象かもしれませんけれども(笑)、そう簡単にはすぐに、「何もしないではいられません」から、ご心配なく。
そのためには、「しない練習」に勤しむとよいのです。
そして印象とはまったく裏腹に、「しない」でいると、ダメ人間になるどころか、意識がクリア・シャープに冴え渡ります。
「ああなりたい」「こうなったらどうしよう」などという、普段の夢見がちな状態から、目覚め、覚醒するのです。
普段の日常が、いかに意識散漫だったかに気づき(言葉を変えれば、頭の中は「セルフトーク(考え事・雑念・セルフ1)」でいっぱいなのに、何かを「する」ことでそれらのおしゃべりが揉み消され)、思考の回路に電気信号が「放電しっぱなし」になっていたと、気づく。
イップスを患うと「どうすれば治る?」という「迷い」、「治りたい!」という「欲」、そして「こんなの嫌だ!」という「怒り」からなる三毒のエネルギー同士が、相乗効果で強大化するのでした。
そういった「どうすれば治る?」「治りたい!」「嫌だ!」などという囚われを、いったんリセットしてみるのです。
イップスになるとどうしても、「する」ことだらけで、頭の中がいっぱいになりがちです。
すると、ますます囚われてしまいかねません。
不調時にフェデラーが打って出たのと同様に、「しない」選択が奏功する。
そのためには先述しましたとおり、「しない練習」に勤しんでみるのです。
▶「しない」でいると「できる」ようになる!
多くの場合は、「迷い」「欲」「怒り」の三毒に絡め取られて、何かしたくなる。
「治りたい!」などと期待せず、受け身的な姿勢で「待つ」ことがポイントです。
それは「しない練習」ではっきりと自覚できますから、ご心配なく。
すると、「しない」ときと「する」ときの使い分けが上手にできるようになる。
先の記事を参照すればノバク・ジョコビッチの言う、「ピークを正しいタイミングに合わせることができる」ようになるのですね。
▶嫉妬するから苦しくなる
ところで当該記事にはもうふたつ、いつも申し上げているポイントがあるのですけれどもお気づきでしょうか?
ひとつはジョコビッチが、フェデラーやラファエル・ナダルを、「リスペクト」している点です。
ごく普通のメンタルならば、ライバルに対して「嫉妬心」が生まれてきます。
彼らさえ落ちてくれれば、自分が№1ですからね。
仲間で構成されたサークル内の人間関係でさえ、自分よりもちょっと上手くプレーする人がいると、「リスペクト」どころか、「目を背けたくなる」でしょう(笑)。
しかし、だから「苦しくなる」のです。
▶「自己肯定感」を高める、対戦相手やライバルへの「リスペクト」
対戦相手やライバルへのリスペクトが、「自己肯定感」を高めます。
逆に対戦相手やライバルへの「嫉妬」は、力み、過緊張を招き、攻撃的(というよりも暴力的)になって、自己肯定感を損ないかねません。
嫉妬する自分は「醜い」という感じ方になってしまうからです。
とはいえ、嫉妬するのが、悪いわけではありません。
それは「自分の立場がおびやかされかねないことを伝えるサイン」ですからね。
たとえば自分のパートナーが異性の友だちと仲良くしていると、「取られそう!」な不安が沸き起こるかもしれませんね。
悪いわけではないけれど嫉妬は人として、とても「苦しい感情」です。
なので嫉妬するのが心のデフォルトですから、嫉妬「しない」ためにリスペクト「する」練習もオススメ。
リスペクトすると、リスペクトされます(「尊敬」というより、「ありのまま」を受け入れ合えるようになります)。
実践あるのみです。
▶もっと早く知りたかった「瞑想」
そしてふたつめが、「コートで平静を保てるよう瞑想を始めた」というジョコビッチ。
これは瞑想を「する」というよりも、思考を「しない」と、ここでは言い換えて話を進めます。
瞑想に慣れると、心と体と脳が休まります。
頭の中の「セルフトーク(考え事・雑念・セルフ1)」のせいで、いかに心身および脳が苦しんでいたかと、省みることができるのです。
瞑想というと、ややもすれば「厳しい修行」がイメージされがちかもしれませんけれども、さにあらず。
苦しみが癒えるぶん、瞑想は「気持ちいい」のです。
その効果を実感したてのころの私は、「もっと早く知りたかった」とすら、つくづく思ったものでした。
▶瞑想は難しくない。「反復」で身につく
瞑想は難しくないのに、「難しそう」などと考えるから、実際に難しくなります。
詳しいやり方は割愛しますが、また世の中にはさまざまなやり方がありますけれども、ここでは「これだけ覚えておけば大丈夫」的なポイントに絞ってご紹介。
一言でいえば、「呼吸に集中するだけ」です(集中力を高めるために目は閉じるか半眼、適度な緊張感を保つために背筋は伸ばします→「ゾーン」へは、緊張とリラックスのハイバランスによって入るのと同じ理屈です)。
だけど慣れないうちは、止め処ない頭の中の「セルフトーク(考え事・雑念・セルフ1)」の嵐に、嫌気もさすでしょう。
そこで、「セルフトーク(考え事・雑念・セルフ1)」に意識が逸れたら、呼吸に集中し戻します。
「逸れては戻す」「逸れては戻す」「逸れては戻す」「逸れては戻す」
ひたすら、この繰り返しです。
テクニックもスキルもへったくれもありません。
簡単♪
腕立て伏せが、「曲げては伸ばす」「曲げては伸ばす」「曲げては伸ばす」「曲げては伸ばす」の繰り返しにより、腕力や胸筋がたくましくなるのと同様に、瞑想の場合は「逸れては戻す」「逸れては戻す」「逸れては戻す」「逸れては戻す」の繰り返しにより、心の筋力であるところの集中力が培われます。
▶目で聞けるの? 耳で味わえるの?
私たちが注意を向けられるのは「一時にひとつ」。
見ながら聞けないし、聞きながら嗅げないし、嗅ぎながら味わえないし、味わいながら感じることはできないし、感じながら考えることはできません。
「できる!」という人がいたら、それはマルチタスクに長けているのではなく、単に意識が分散しているのです。
眼耳鼻舌身意(げんにびぜつしんい)は、それぞれ捉える対象が違います。
目で聞くことはできないし、耳で味わうこともできないし、舌で聞くこともできません。
なので、頭の中で考え事をしながら、呼吸を感じることもできません。
呼吸を感じながら、頭の中で考え事もできません。
▶「しない」を「する」に何の矛盾もない。とにかく実践!
思考を「しない」という練習。
この記事を読んでも今後の行動が何も変わらなければ、ここまでお読みいただいた価値はゼロに等しく、著者としても(イップスを経験した仲間としても)効果を感じてもらえないから残念(◞‸◟)
「しない」を「する」に、何の矛盾もありません。
実践あるのみです!
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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