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克服に向けて043. あんなサーブしか打てないのか、という他人の目も非常に気になる

丁寧なご返信をいただきましてありがとうございます。
スマッシュとサーブが打てなくなり
今はスマッシュを未熟なドライブボレーで誤魔化している者です。
サーブは、かつて自分が「そんなことやってると未来がない。」と言って
全否定し、侮辱していたアンダーサーブしか打てなくなっています。
アンダーサーブを打つ時すら腕がこわばって、
思ったようなボールが打てないでいます。ダブルフォルトもします。
アンダーサーブしか打てないのか、あんなサーブしか打てないのか、
という他人の目も非常に気になります。
「肩が悪いの?」と聞かれるたびに「いえ心の問題で…」と答えるたびに
二度と上から打つことができなくなっていってる気がして、
ほっといて欲しいと思っています。
 
所詮趣味レベルですが、やめようと思ったことも何度かあります。
 
吉田様の発信内容は非常にためになり、
ベースメソッドや他の教材も購入させていただいたことがあります。
 
今回はイップスに関する発信のバックナンバーを読んでみたいと思ったのですが
休止していた友の会を再開されると伺い、非常にありがたいです。
他のアスリートのイップス関連情報もご提供いただきありがとうございます。
幾分か楽になれ、少なくともテニスが続けられそうです。
今後ともよろしくお願い致します。
 
※※※※

回答
※※※※様

お返事を頂戴致しました。
 
前回はイップスに関するご自身の認識が改まると、「ありのままの自分」を生き直せる、それこそがイップス生還の道筋になるとお伝えしました。

今回いただきましたお返事は、そのための第一歩。

おひとりだけでは、まさか公言しない(できない)内容に、踏み込んでいらっしゃいます。

イップス治療としては、それが大事。

「ストレス発散」ではありませんけれども、そうやって溜め込まずに「出す」ことがいちばんです。

ただしアンダーサーブを打つさまを見て、「肩が痛いの?」などと尋ねられる今の環境では、無闇には打ち明けないほうが、無難かもしれません。

「イップスだから」などと正直に事実を伝えても、現状では理解を得にくいかもしれないからです。

「ただの下手」「上から打てないビビリ」などといった、的外れの誤った見方をされてしまいかねません。

さて私の推測いたしますところでは、過去には上からでもサーブは打てていたけれど、より強化したい、あるいは安定させたいといった思いから、スピンサーブやスライスサーブの打ち方などを意識したのが、イップス発症のきっかけだと疑われます。

今までは、打ち方やフォームなどについて、何も意識しなくても打てていたのに、意識し始めるのが多くのイップスの引き金になるという事例は、前回ご紹介したこちらの記事の内容と、そっくり符合いたします。

だからといって意識しないようにしようとすればするほど、意識的になってしまうというのも、問題をさらにこじらせる要因です。

差し当ってヒントとなりそうな話をお伝えさせていただきますと、瞬間に区切った場合、「心は同時に2つのことはできない」という事実を、思い返してみてください。

つまり脳内で何かを意識しているとき、見えませんし、聞こえません。

逆に見えているその瞬間は、意識できません。

だとするとトスしたボールのケバや回転を、肉眼でとらえた瞬間は、打ち方やフォームについて、あるいは「またイップスが出るんじゃないか……」などという不安、そして気になっていらっしゃる「他人の目線」についても、意識できなくなるというふうになります。

トスしたボールのケバや回転をはっきりと視認して、頭の中で何も考えずに、「ここだ!」と感じた直感に従って、打ってみてください。

この視覚的集中力が高まれば高まるほど、考え事が鎮まり、上から打つサーブや、スマッシュも、奏功しやすいはずです。


一般論として、力強く打てるサーブやスマッシュで、イップスが出るのはレアケースです。

テニスであれば、サーブのトスアップや、球出し、あるいは慎重に打とうとするフォアハンドストロークなど、むしろ力を加減する動作で特にイップスは出やすい傾向。

ですから仰せの「アンダーサーブを打つ時すら腕がこわばって」というよりも、アンダーサーブを打つ時だからこそ、特にイップスの渦中にあっては、腕がこわばりやすいとも言えます。

ゴルフであればパット。
野球なら、遠投というより近い距離で行なう送球イップスが、類例として少なくありません。

最後に付言致します。

イップスを発症している渦中にあっては、苦しくて悲観しがちになるのは当然ですが、私は過去にイップスをわずらって、当時は「死にたい」とも思ったけれど、今では本当に良かったと顧みます。

その理由は、恐らくご自身も、間もなく分かります。
 
今回の回答は以上となります。
また何かありましたら、ご連絡いただければと思います。

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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero