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伝統を壊してみる

『伝統』、歴史を感じられる素晴らしい言葉だ。私が所属していた、清風高校も、早稲田大学も、テニス界では伝統校と呼ばれている。

私は伝統には、良い伝統と、悪い伝統があり、悪い伝統は時代の流れと共に変化させ、いらない部分は切り捨てて行かなければならないものだと感じている。

今回、私が学生時代に部活動で悪い伝統だと感じていたほんの一部分、下級生の雑用について書いていく。

どの部活動にも、下級生が行わなければならない仕事が存在するかと思う。昔からある下級生の雑用、冷静に考えれば無駄でも中々変わらない雑用、心当たりある部活生もいるのではないだろうか。

【違和感に反応する事】

私のいた早稲田大学庭球部では、1年生の時と4年生の時では、下級生の雑用内容が大幅に変わった。今も優秀なコーチ陣の方々と、優秀な後輩達によって、変わり続けているはずだ。

下級生の雑用は大まかに、コート掃除、部室掃除、練習準備などだ。

早稲田大学庭球部の朝のコート掃除を例に挙げる。私が2年生の時までは下級生(1-2年生)のみで、早い時だと朝6時頃からせっせとコート掃除をしていた。(今は変わりましたよ!笑)

連日長い練習で疲れている中、眠すぎて朝ごはんも食べずにひたすら落ち葉を集め、コートに落ちている鳥フンを雑巾で除去し、箒で毎日のように出来ている蜘蛛の住宅街(巣)を破壊。

日の出が遅い時期は太陽が昇る前に真っ暗闇の中ひたすら落ち葉を集めて、懐中電灯で宝物を探すかのように鳥フンを探していた。
あんなに『木』と『鳥』を憎んだ時期はない。

冬は雨が降った次の日は地面が凍る。その地面の氷も練習までに溶かせと言われていた。意味がわからなかったが先輩に言われたのでやるしかない。
私は世間でも有名なティファール君でお湯を沸かし、凍っているコートにかけた。一瞬溶けた。そして寒すぎてまた凍っていく地面を見て私はティファール君を元いた場所へ返却してトイレで寝た。

そんな朝のコート掃除だったが、私が3年生の時にコーチ陣の命令と当時の4年生の協力で、朝の掃除を練習前に全員で行うようになり、かなり効率的になった。

コーチ陣、4年生のお陰で従来よりかなり下級生の負担が減った素晴らしい取り組みだった。

私が主将で4年生の時にも、庭球部の電話当番の制度を変えようと話になった。これは主に1年生の仕事で、外部から部の固定電話にかかってくる電話を取り次ぐ係なのだが、練習が休みの日にも1年生はわざわざ部室に来て、交代で電話を待っていなければいけなかった。

私は1年生の時から、こんな馬鹿な事があってたまるかと感じていた。休みの日に何故わざわざ部室に来て1日に1本か2本かかってくれば良い程度の電話を待って、貴重な1日を終えなければならないのか。1日くらい留守電にしておけば済む話だ。
本当に急用なら誰かの携帯電話にかかってくる。時代遅れにも程がある、何より自分達の時間が無駄だ。

勉強したい時は部室でもできるから構わなかったが、そもそも電話を待つ為に部室に行く事にもイライラしていた。私の休日だそ。基本的には吉祥寺で幸せのパンケーキを食べたいんだ。
固定電話を部室の庭に埋めてママチャリで踏み潰してやろうかと思った事もあったとは言わないでおく。

だがついに、私が4年生になってから、練習が休みの日は留守電にし、急用であれば主務の携帯に電話が来るように仕組みを変えることができた。当時主務だった和田の協力があってできた事で、本当に感謝している。

お陰で下級生の負担は私達の頃より減ったはずだ。毎年毎年そうやって少しずつでも良くなっていって欲しいと願っている。
私が卒部する時点でも改善したい部分は多かったが、部のルールを1つ変えるにしても、周りの承諾をある程度得なければならなかったので、主将になってからの1年では正直足りなかった。

【無駄に気付き、そのままにしない事】

他にも細かい雑用内容の変更は4年間で色々あったが、事あるごとに部員から反発の声は絶えなかった。

気持ちは凄くわかる。自分達がひたすら我慢してやってきた事が急になくなる事が悔しくて、自分達がやってきた時間は何だったんだと思うのも理解できる。

ただ、それを言っていてはずっと同じ体制のまま、庭球部が時代に取り残されて廃れていくだけだ。

強いて言うなら皆無駄を自分達で経験してきただろう。早朝から下級生だけでコート掃除をしてもコートが凍っているし落ち葉が多すぎて練習時間に間に合わない、丸一日かかってこない電話の横で勉強するかゴロゴロしながら1日が終わる。経験がそれらの行動が無駄だという事を証明してきたはずだ。

それに、コート掃除、部室掃除、練習準備、これらを全て、部活動で下級生がやらなければならないなんて一体誰が決めたのか?上級生はそんなに偉いのか?
1つ上の先輩や1つ下の後輩なんて、ママのお腹から数ヶ月早く出たか遅く出たかの差だろう。指導者や上級生がきちんと考えれば雑用面なんて変えようと思えばいくらでも変えられる。

伝統に縛られ、しがみついて時代の流れに取り残されて廃れていく組織は見ていて心苦しい。

帝京大学のラグビー部の岩出監督の様な改革とまでは言わないが、あれが理想的な部活動の形だと思う。帝京のラグビー部では主力の4年生や3年生が進んで掃除や、雑用を行なっている姿がある。興味がある方は是非YouTubeなどで帝京大学ラグビー部について調べれば出てくるはずだ。

【時すでに遅し】

4年目の王座が終わった後の年末の話。毎年部員同士で年賀状を送ると凄い量になり、下級生が特に大変だから、監督やコーチ陣、お世話になったOBOGの方々のみに出す事にして他は廃止にしようと同期に提案した。

どうせ年始すぐ皆に会うのに、必要ないだろうと。私自身1年生の時に膨大な量の年賀状を無表情、無感情で作業のように書きまくった記憶があったので、是非実行したかった。だがこの提案は一瞬で却下された。

卒部していたから。

坂井勇仁


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