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勝利への四ヵ条 〜テニスで最も重要な技術とは〜 #2 攻撃

勝利への四ヵ条、二つ目は「攻撃」です。攻撃とは、自らがポイント奪取のために、効果的なショットを仕掛けることを言います。この際、攻撃はリスクを伴いますが、ベースラインからエースを狙うことは、ミスの危険度が非常に高く、お勧めできません。確かに、ストロークからのウィナーは非常に快感があり、トッププロがコートのコーナーからエースを打ち込む姿を幾度となく見た事でしょう。

しかし、、、

トッププロが正確無比なフォアハンドダウンザラインや、ジャンピングバックハンドをベースラインから決められるのは、僕たちの想像を絶するようなハードなトレーニングと反復練習があるからです。アマチュアプレーヤーがその正確なコントロールと強力なパワーを週1回や2回の練習で習得するのは、非常に困難です。だから、私が目指すべきだと考える「攻撃」とは、効果的なアプローチショットを打ち、ラリーをボレーで締めくくる展開です。

ダイナミックなジャンプでバックハンドを打つアメリカ人テニスプレーヤー、フランシス・ティアフォー選手。バックハンドのジャックナイフは、タイミングよくジャンプし、上半身のひねりを戻す事で、強力なショットを打つ事ができます。

バックハンドのアングルショット

僕が最も有効だと感じるアプローチショットは、バックハンドのアングルショットです。このショットを打つ際、一番重要なのは、あえて小さくジャンプし、打つ角度を広げる事です。ジャンプする事で跳ね上がる球と体の高さを合わせるだけでなく、相手のコートに打てる範囲を広げているのです。こうする事で、フラットなバックハンドもコートに突き刺さり、相手をコートから追い出す事ができます。また、打つ球種を、例えばスライスショット、特に右方向に曲がるスライスを打つ事で、相手をさらに走らせる事ができます。球にバリエーションを与えることで攻撃の効果はさらに増えるわけです。

バックハンドスライスで前に詰めにかかるファン・マルティン・デルポトロ選手。低く滑るスライスショットを打つ事で、相手はボールをすくい上げなければならなくなり、デルポトロはネットに詰めることで、そのチャンスを仕留めることができるのです。ダブルスで使われるアプローチショットがスライスなのは、ポーチボレーでポイントを終わらせるための布石だというわけです。

フォアハンドのループボール

別のショットで非常に効果的だと感じるのは、フォアハンドのループボールです。この戦術は、フォアハンドストロークでネットへアプローチする際、あえてゆっくりで、高く弾むトップスピンボールを打つ展開です。球速が遅いと言うことは、相手選手がそのボールに追いつく時間が産まれるわけですが、その返球が攻撃的なショットになる可能性は非常に低いです。なぜならば、トップスピンで跳ねるボールは、後ろに下がって打つか、高い打点で打つかの二択しか無いため、相手は遅いスライスショットか、またはロブショットで応戦するしか無いのです。あなたは、その相手がぎりぎりで取った緩い球をボレーやスマッシュで仕留めれば、『完璧な攻撃ができた』と言うことになります。

日本人史上最強選手の呼び声高い錦織圭選手。写真の中で分析できるのは、彼がサービスライン付近でフォアハンドのトップスピンを打っている事だ。ラケットヘッドは頭の高さまで振り上げられているのにも関わらず、右肘が胸の高さに残っているのは、ラケットの縦のガットを使ってトップスピンを放った証拠だ。この時リスクを取ってフラットショットでエースを取らず、トップスピンショットの判断をしたのは、錦織選手がボレーで決めようと展開しているからだと推測できる。

ベースラインゲームの重要性

最後に、効果的なベースラインでの展開、そして戦術をマスターすることは、現代テニスで勝ち上がるためにこの上なく重要です。テニス界の「ビッグ4」は、非常に攻撃的で、正確な、いわば『詰め将棋』を思わせるほどに計算されたベースラインでの戦いで勝利を掴んできました。現在の「新鋭」と呼び声高いカルロス・アルカラス選手やステファノス・チチパス選手も、ボレーでポイントを締め括ることが非常に多いですが、それはラリーの主導権をベースラインゲームで握り、自分の展開、すなわちネットプレーに持ち込めているからです。テニスの根本的な強さと言うのは、やはりストロークのラリーにあるわけです。

ギリシャの貴公子、ステファノス・チチパス選手。彼の最大の武器は、なんといっても大きなリーチと手首のしなやかさを活かした、ダイナミックなスイングのフォアハンドストロークだ。そのフォアハンドを支えるのが彼の類稀なフットワークだ。普通の選手ならバックハンドで捉えるだろう球に、素早く回り込み、フォアハンドで逆クロスやストレートに打つ彼はまさに空を舞う蝶だ。

最後に

「攻撃」とは、奥が深い分野です。今回の記事では、バックハンドのアングルショットフォアハンドのループボールについて触れましたが、この二つの戦術が必ずしも、あなたのライバルに効果があるとは言い切れません。また、戦術というものは、無限に存在し、時代によって変わるものと言っていいでしょう。鈴木貴男選手のようなサーブアンドボレーヤーが牽引した時代、ナダル、マレー、ジョコビッチなどの守備的な選手が活躍した時代、そして『現代テニス』があります。この変革が次はどのようなプレースタイルを産むのか、テニスから目が離せません!

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