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ビジネス教養としての気象学

昨年、新星出版社からの「こども気象学」出版に監修者として関わりました。この本は、ありがたくも児童福祉文化財としての推薦も今年受けています。

こども向けの本でしたが、大人の読者にも喜んでいただけたような感触もあり、次は大人向けの本かな、と考えていました。その頃、日経BP社からビジネス向けの気象学の本を書いてみませんか、という声がかかり、意を決して書き始めた次第です。
これまでnoteにもいろいろと気象の話を書いてきましたので、これらも材料にしつつ、私の頭の中にあり社会の皆さんに伝えたいことをまとめてみよう、という趣旨で構成を決めています。気象学の基礎から、天気予報の技術、地球温暖化と異常気象、気象データの社会活用まで、それぞれの章だけでも一冊の本にする内容がありますが、それをあえて一気にこの小冊子にまとめてみました。
もっとていねいに説明したほうがわかりやすいかな、というところもあろうかと思います。しかし、地球温暖化が遠い未来の話でなく、日々の天気や防災にも影響するようになってきた今、細かいところの理解はともかく、全体像を私の言葉で伝えることの意義もあるのではないか、という考えです。
もともと出版元の日経BPさんとのつながりは、『気候変動の真実 科学は何を語り、何を語っていないか?』(スティーブン・E・クーニン著/三木俊哉訳/日経BP)への書評を求められたことがきっかけでした。この本は、いわゆる「温暖化懐疑論」を軸に問題提起をされている本でもあり、そこで展開されている科学的な論述について正しい部分は認めつつも私なりの意見を書いたのが下記になります。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00462/101800011/?n_cid=nbpnb_https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00462/101800011/?n_cid=nbpnb_twedtwed
ここから出発したという経緯もあり、これまでの私のnoteの記述も地球温暖化をセンセーショナルに語ることは避けていますが、新著についても比較的慎重な表現で記載したつもりです。ところが、今年の夏の世界的な猛暑で、世の中の意識はもっと先に進みつつあるようにも思います。確かに今年は今までにないような状況になっているのですが、科学的には、今の顕著なエルニーニョが今後どうなるのか、そしてその後の世界の気候の状況を分析した上で、より正確な認識が共有されるものと理解しています。それが、次のIPCC評価報告書等を含め科学的な見解として社会に共有されるものと思います。
なお、私自身が関わっているJSTのプロジェクトClimCORE(日本域の気象再解析を軸とする地域気象データ利活用研究)についての記述も入れました。このプロジェクトを理解いただくために、この本の内容を理解いただくことも実は重要かなというのもあります。私のnoteの記事の中でもっとも読者数が多いのが、「国土基盤データとしての気象再解析について」であり、プロジェクトの関係者がこれをお読みになっているのかなと推測しています。ただし、この記事は、プロジェクトの採択前(正確には提案前の時期)に書いたものですので、現状のプロジェクトの説明としては、この新著をお読みいただければと思います。

参考まで、下記日経BPのサイトから目次を転載します。ここしばらくnoteへの投稿が止まっていましたが、本業以外の時間の使い方として、こちらの執筆を優先していたということでご理解いただければと思います。noteの記事と合わせて、こちらの著書をお読みいただければ幸いです。
https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/23/07/25/00915/
目次

序 章 なぜ、気象を知ることが大切なのか
SDGsの土台に位置する気候変動
気象、気候、天気、天候
生物圏に及ぼす影響
社会・経済圏に及ぼす影響

第1章 気象を理解するための基本のきほん
大気の温度を決めている要因 
太陽からの日射が地球の気候に与える影響
低気圧・高気圧を天気図で見る
雲が雨を生む仕組み
熱帯とモンスーン・台風
〔コラム〕台風が引き起こした過去の大災害
積乱雲、豪雨、雷、竜巻
地表面と大気とのやりとり
〔コラム〕天候を左右する気団
天気についての時間空間スケール
〔コラム〕日本海側と太平洋側の降雪

第2章 天気予報はどのように行われているのか
観天望気の始まり
天気図による天気予報の始まり
数値天気予報(数値予報)の始まり
数値予報の現在
数値予報の精度とアンサンブル予報
気象庁の現業数値予報
〔コラム〕台風情報とその使い方
さまざまな気象観測
レーダー観測を用いたナウキャスト情報と解析雨量
海の数値予報と宇宙天気予報
火山灰、黄砂、花粉などの予報
〔コラム〕線状降水帯が大災害を引き起こす

第3章 なぜ、異常気象や温暖化が起きているのか
長期的な気候変化と日々の気象現象との関係
偏西風の蛇行とブロッキング
エルニーニョとラニーニャ
〔コラム〕冷夏と暑夏、暖冬と寒冬
温室効果ガスが増加するとなぜ温暖化するのか
水蒸気・二酸化炭素・メタンの温室効果
気温と海水温の上昇
〔コラム〕人工的な排熱の効果が気温上昇に及ぼす影響はどれくらいあるのか
大雨は増えているのか
異常気象は温暖化のせいなのか
地球温暖化緩和策と適応策への気象分野の関わり
IPCCについて

第4章 気象データはどのように作られ、活用されているのか
さまざまな気象データ
過去データを活用する「ガイダンス技術」
〔コラム〕過去の災害記録と気象データを組み合わせた「キキクル」
気象再解析とは
〔コラム〕クライムコア(ClimCORE)プロジェクト
交通における気象データ活用
農業分野の活用
電力分野の活用
保険の役割
近年再び増えてきた気象災害
気象情報をどう伝達するか
気象庁の天気予報と民間の天気予報


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