見出し画像

映画『マニカルニカ ジャーンシーの女王』のネタバレなつぶやき。観終わったあとにどうぞ。

なますて。天竺奇譚です。

映画『マニカルニカ ジャーンシーの女王』の感想はこっちにまとめてるので、かなりうざいオタクのかんそうを読みたい人はそちらをどうぞ。

で、この記事は、映画の中に登場してたあれやこれやをまとめてみます。いままでの記事を読んだことがある人はわかるとおもうけど、わたしは推しが映画の主人公になったことに浮かれているオタクなので、 ウザくて申し訳ないです。王妃様についてもっと知りたい、映画の中にでてきたあの本はなんなのとか、あの歌の歌詞は?とか、そういうのもわかる範囲でまとめてます。

めっちゃネタバレなので観た人以外は読まない方がよい記事です。あと、「映画は映画として楽しみたいから、史実では実はこんな背景がとか語られてもなー。そーいうのいらないしー」と感じる人は読まないほうが良いです。

では行きます。

・少女時代、象にとび乗ってた。すごいな…
王妃様は子供のころ、象に乗って暴れ象をしずめたことがあるらしい。映画のは暴れ象じゃなかったけど、象は大事だ。象は王権を意味するのだ。「私が勝負に勝ったら象をあげるわ!」と宣言したこともあるそうな。

・マラーターの?ビトゥールの?宰相?あのおじいちゃん誰?
はじめに出てきたおじいちゃん宰相は栄華を極めたマラーター王国の最後の宰相バージーラーオ2世。彼の代でマラーター王国は滅び、ビトゥールに小さな領地をもらってひっそり暮らしていました。でも一応、当時のインドでとっても偉い人でもあったので、影響力はあったのでした。

以下に、ざっくり人物相関図どうぞ。

画像2

・結婚式でなんか結び目がどうとか文句言ってなかった?
結婚式のとき男女の服を結んで火の回りを歩く儀式があるんだけど、そのときに「結び目がゆるいわ!」って指摘して、周囲の人たちをヒッって驚かせた。これは伝説にもそのまま残ってるエピソード。結婚式の儀式の最中にそんな口きくなんてとみんなびっくりしたんでしょうな。

・王妃は真珠のネックレスを大切にしてたね…
真珠のネックレスが大好きだったというエピソードがある。戦いのときも身につけてたとか。…つまり、おわかりいただけただろうか…映画では、愛する王様からもらった真珠を大切につけてるっていう設定になってるんだ…ヒンドゥー教徒の未亡人はアクセサリーをつけてはいけないという慣習があるんだよ…それなのに真珠を…尊い…つらい…

画像1

・王妃様、二刀流じゃね???
パンフレットの王妃様をよくみてくれ。右側にも鞘があるんだ。王妃様は剣と乗馬の達人で、なんと両手に剣を持ち、口で手綱を咥えて敵をバッサバッサと切り倒したっていう話があるんだ。手綱を咥えるシーンはさすがになかったけど、両刀での剣舞はかっこよかったね!

・王妃が読みたかった本、『ハルシャチャリタ』とは?

हर्षचरित 『ハルシャチャリタ』。グプタ朝のあとに北インドを統一したハルシャ・ヴァルダナ王の物語。この王様は遠征とかして武も優れていたけど、文学や芸術を愛し、仏教を保護し、宮廷に多くの作家や詩人を招いて、本人もサンスクリットの作品を書いていた芸術家だ。玄奘三蔵つまり三蔵法師がインドに来た時の王様が彼だ。
映画の中では、輿入れする前からこの本を読みたがってたラクシュミー。結婚後に王様からこの本をもらってすごく喜んでる。もしかしたら、芸術が好きな王様は、自分の姿とこの本の物語を重ね合わせているのかもしれないし、本を読んだ王妃はたぶん王様のことをもっと好きに…アッ…尊くて…しんど…っ…
ちなみに偉大なハルシャ王は息子を残さず亡くなった…ので…ハルシャ王の死後は国が弱くなっていったという…うっ…

・結婚式のとき中心にガネーシャ様の像があったね
マラーター王国はガネーシャ様を特に大切にお祭りしてて、今のプネーあたりでのガネーシャ祭りのもとになってたりするので、マラーターの守り神としてガネーシャ様がいるんじゃないかなー

・ときどき写ってる銅像ぽいやつは?
マラーター王国を建国した初代の王様、シヴァージーだとおもうたぶん。めちゃくちゃ強くて、マラーター王国をムガル帝国も認めざるを得なかった。その後、バラモンである宰相のほうが偉くなるんだけど。とにかくとてもえらいひとです。映画ではグワーリヤルでマラーター王国再建って宣言あったけど、この初めに出てきたシヴァージーの銅像がマラーターをイメージさせて重要なんだなあと。

・夫が亡くなったあと水を?浴びてたのは?
未亡人はアクセサリーを全て外し、頭頂の赤い印を消さなければならないので、お水でジャーってされて印を消されてたんです。あと腕輪も壊す必要が。なので腕輪はわざわざ壊れやすいガラスとかで作ってあるものも多いっす。あと化粧もしちゃダメっていう。でもでも、結局そういうのガン無視な王妃かっこいいなー!

・みんなが叫んでた「ハラハラマハーデーヴ」はなんだろう。
ハラ ハラ マハーデーヴァ hara hara mahadeva हर हर महादेव
ハラ=破壊者を意味するシヴァ神のこと。
マハーデーヴァ=偉大なる神を意味するシヴァ神のこと。
破壊と戦いの神でもあるシヴァ様を讃える言葉っていうかマントラ。戦いの前に戦士たちが叫ぶシーンはよくインド映画にもあるよね。

・王妃の服、ワンピースみたいで素敵
王妃が着ていたワンピースみたいな服、スカートがひらひらしてるタイプのやつ(下にスパッツはいてる)は、当時の男性の服装です。他の男性も同じ形の服を着ていたと思います。当時の女性の正装はサリー。もちろんワンピースみたいな女性服もあるんですけど、ターバンを巻いてワンピースみたいな服で闊歩してる王妃は、あれは男装なんです。ターバンは女性はつけないので。

・マニカルニカって名前の由来
マニ=宝石、カルニカー=イヤリング。マヌ、って呼ばれることもあったみたいです。あと、マラーターの元宰相からはチャービリーって名前をもらって可愛がられていたそうです。

・なんかメインじゃないカップル?が踊ってたけど?

あの女性は、ジャルカーリー・バーイーという女性で、ラクシュミー・バーイーの女性騎馬隊にいた女戦士で、王妃の友人でもあり、王妃とよく似ていたので影武者をしていたという伝説がある人です。夫はジャーンシーの兵士だったらしい。で、ジャーンシー城が落ちるときに、王妃を逃すために影武者として城に残って死んだという…うっ…つらい…
インドではめっちゃ人気あって銅像もあります。ダリットというカースト外の差別される階級の村出身でもあったので、バラモン出身でクシャトリヤに輿入れした高貴な身分のラクシュミー王妃が彼女と友達になるとか、同じ手から食べ物をもらうとか絶対あっちゃいけないことなんですが、身分や慣習にとらわれない王妃の人徳をあらわすエピソードとしても人気があり。

ちなみにバーイーは敬称なので(~様とかそういうやつ)あんまりバーイーという言葉自体にはそこまで深い意味はありませぬ。

・敵側の英国人について知りたい
その1。
総督府にいる王妃からの手紙燃やしたおじいちゃんはダルハウジー。「失権の原則」でジャーンシーとかいろんな国の王国の後継に養子を認めなかった、インド大反乱の原因をつくったひと。史実だと、ローズ将軍が来る前には失脚してたんじゃなかったかな…。

その2。結婚式後にやってきたなんか偉そうな、いかにも敵な英国人はゴードン 。王妃が目で殺してた人。史実では、失権の原則後にジャーンシー城から王妃たちを追い出したあと城に住むが、インド大反乱で暴徒となったシパーヒーたちに殺される。家族や城にいた女性や子供たちも殺された。いかにもな悪役だけど史実でもこんないけすかない奴だったのかどうかはわからないです。

その3。将軍のヒュー・ローズ。ラクシュミー・バーイー許すまじ!と戦争のときに必死になってた赤服のリーダー。インド大反乱を鎮圧するためにまずはボンベイ(ムンバイ)に上陸し、途中でチェンナイ(マドゥライ)からの部隊とも合流しながら北上し、ジャーンシー城を取り囲んだ。この人はけっこうまっとうな人間だったらしいが。自伝ではラクシュミー・バーイーすげえ奴だったって褒めてたぽい。

・なんで女の子を木に吊るすの?
けっこうショッキングなシーンだったよねあれは…実は英国軍は、反乱したインド人たちに見せしめにするために、村ごと焼き払ったり女子供もまとめて木に吊るすとか公開処刑とか普通によくやってたそうな。インド大反乱の後は特に。ヒンドゥー教徒に牛の血飲ませる拷問とか。まあ今回は吊るしたのは一人だけだから…まだローズ将軍は敵ながらましな描写だなあとも思ってしまったすまない…女の子かわいそうすぎるけど…まだましなほうなんだ……史実で彼がどのくらい殺したのかとかまでは追いかけてないけど…部下たちの中にはいろいろやらかしてた人たちはいただろうなあ…

・英国に寝返ったサダシヴさんって?
はじめ誰だかわかんなかったけど、ナーラーヤン・ラーオのことか!(サダーシヴ・ラーオ・ナーラーヤン)王様の従弟で、ジャーンシーの王位をずっと狙ってた人で、王様が王位を継ぐ前にも2回王位を求めていろいろやらかしてたらしい。王妃が城を取り戻したあとに兵をあげたけど王妃たちの軍にすぐつかまったとか。英国にも協力したんだろうなあ…映画の中では小物感がアレだったね……

・ジャーンシー城に籠城した王妃たち、簡単にやられすぎない?

映画だけみるとあっというまに陥落したようにみえるけど、ジャーンシーで英国人が殺害されたのが1857年6月。その後ジャーンシー城に戻った王妃は、ナーラーヤン・ラーオと戦ったり、籠城にむけて準備をすすめた。
ローズ将軍がジャーンシー城を取り囲んだのが、1858 年3月。3月24日から攻撃がはじまり、4月3日にジャーンシー城は陥落している。つまり、数万の兵、砲台に取り囲まれ10日間は持ちこたえたということだ。それはかなりすごいんだよ………装備も兵力も英国軍がはるか上だったし。
あと、ターンティヤ・トーペーが援軍を数万率いて合流しようとしてたけど英国軍に阻まれて失敗、協力を依頼した周辺国はみんな英国側に味方したとかもあって。ジャーンシーが無策だったわけではないんだ。映画の尺の問題…

あと英国軍は焦ってたってのもある。5月6月は暑くて45度超えるあの場所での長期戦は絶対に避けたかった。進軍は冬だったし、暑くなる前に一気に攻めたかったんじゃないかな。それなのにジャーンシーはすぐに落とせなかった。これは王妃の戦略でもあったんだろうと。おまけに逃げた王妃は他の反乱軍と合流して、難攻不落の要塞グワーリヤルを奪ってしまった。
映画には描かれてないけどグワーリヤルに到着する前にも5月にカルピー城でも英国と戦ってる。結果、英国軍が苦手ないちばん暑い時期に戦争することになった。実際の兵隊はネパールやシク王国の人たちも多かったみたいだけど指揮官はみんな英国人だったから、これはローズ将軍歯ぎしりしただろうなあ。

シヴァシヴァ歌ってる歌がなかった?
あります!!!これですね!これ!!!!

バーフバリ大好きなファンなら知ってる、『バーフバリ伝説誕生』でシヴドゥがシヴァ・リンガを担いだシーンと同じ、シヴァ・ターンダヴァ・ストートラの歌詞です。よく聞くと曲は違うけど同じ歌詞が使われてるのがわかるとおもいます。オーム・ナマ・シヴァーヤってシヴァのマントラです。

・ニザームの砲って?
ニザーム王国は英国派で、ダイヤモンド鉱山があったし超お金持ちの王国だった。いまのハイデラバードあたりだ。ハイデラバード藩王国。今でものこってる宮殿はほんとすごくて、めっちゃキラキラしてる。
ハイデラバードのチョウマハラ宮殿に行ったときの写真がこちら。磨かれた大理石の宮殿。英国やヨーロッパから取り寄せたシャンデリヤ、天井までみっしり模様が掘り込まれてるっていうそりゃあすげえところだった。

画像3

ニザームは英国にめっちゃ税金払って、協力しまくって、自分の国をなんとか守っていた。でもインド独立後は英国大っ嫌いなインド政府に嫌われて王国は取り潰しになった。という歴史がある。つまりニザームの砲ってのは、同じインド大陸にある国でありながら、英国に与したニザーム、同胞の武器によってジャーンシーが敗れたということを表していて、めっちゃかなしいことをあらわしているんだよ…うっ…つら…ああああ

・王妃、馬で城壁飛び越えてるすげえ!
これは伝説になってて、王子を背負って馬にのってジャーンシー城から脱出した、っていうやつだ。でもこれは実際の城壁の高さからみたら難しかっただろうと言われている。あと、一人だけが脱出したわけじゃなくて、実際は落ち延びた人たちと一緒だったぽい。でもこのシーンは、銅像にもなっている有名なやつなので、映画にはぜったい入れたいシーンだっただろうなと思う。かっこいいし。

・バーラタ=インドって思想は当時なかったのでは?
バーラタという思想はあったけど、当時は国々がまとまって一つのインドという国になり英国と独立しようという動きはなかった。だからインド大反乱は反乱で終わってしまった。王妃は必死に周辺国に呼びかけたけど、ほとんどの国は英国が怖くて保身に走ったんだな。デリーで擁立したムガル皇帝も捕まってしまったので、映画では王妃はマラーター王国を再建しようとしたと描かれてる。ただ、もしかしたら王妃は神のように未来を見据えていたのかもしれない。そういう女性をこの映画で描きたかったんじゃないだろうか、と思ったのだった。


・い、インド映画ってさ、ハッピーエンドじゃないの…?きっつい…

インド映画って、踊って歌っての楽しい映画だと思ってたのに。。。
わかる。わかる…でもインド映画ってのは楽しい映画だけじゃないんだ。歴史物とか、古典の映画化になると、どうしても悲しい終わり方になるものが多いかもしれない。
というのはインドの古典には、ナヴァ・ラサ(9つの感情表現)てのがあって、笑、泣とかいろいろあるんだけど、9番目には「シャーンタ・ラサ」平安、寂静の境地みたいなのがあるんだ。
これは、叙事詩『マハーバーラタ』がハッピーエンドじゃなくて「そしてみんなみんな死んでしまいました」みたいな終わり方するのもそうだったりして。さいごみんな死んじゃって。栄華を誇った国も滅びていまう。そして何もなくなった……ていうのも美学だったりするのだ。
この世はヴィシュヌの夢であるって考えもあってな…
ハッピーなロマンス小説が大好きなハピエン厨の私にとっては、こういう悲しいお話はめっちゃつらくてきつい…きつんだけども…ああああ…でも…すき…つらい…しんどいね…王妃様ずっとハッピーに暮らしてほしかった…でもこの生き様が王妃の役割で、王妃にとってハッピーだったと思おう…


などなど、思い出しながら記事を追加していこうとおもうです。

さいごに。

インドって、ガンディーのイメージがあるのか、平和で戦争しない、みたいに思ってる人いるかもだけど真逆で、歴史みるとめっちゃ戦闘的だし、苛烈だし、クシャトリヤは戦場で死ぬことが美徳だし、英国統治時代とかも抑圧されたあれやこれやで溜まった鬱憤とかは暴動で都度発散だから、だからこそガンディーの運動が生まれたってことでもあるんだなあとおもってみたり。(結局ガンディーが続けてきた非暴力の運動も、インド独立前に人々が暴動を起こしたことがきっかけで、悲しい結果になってしまうのだ…)

あと、映画では「英国は敵!」ってわかりやすかったけど、過去の記事で書いた通り王妃様はジャーンシーを奪われるまでは英国人とそこそこ良い関係を築いてたぽくて、映画では王妃様は英語ができるってのはそういうことも暗示してるのかなと思いつつ。英国はたしかに酷いことしてるけどインド人側も無抵抗の英国人殺してるし、無駄にインド人の行為を美化してないところは真摯な作りだなあと思った。(長期的にみたら英国統治の影響で死んだインド人はものっっすごい数なんだけどそれはまた別のお話だ)

この映画が史実まんまを描いているかといったらそうでもないかもだけど、これは映画なのでそういうもんだとおもうです。映画は映画での楽しみ方があるので。王妃へのリスペクトに溢れた、とってもよい映画だと思ったです。女神になった王妃だったな……
タイトルにある「ジャーンシー キー ラーニー」っていうのはそのまんま王妃を讃える詩の題名でもあり。死後、インド独立に向けて人々に希望の炎を灯した女性の一生というか。

映画をみた人もみなかった人も、それぞれの心の中に、それぞれの王妃様がいていいとおもうです。


史実のラクシュミー王妃とその周辺の時代背景については過去の記事をご参考ください。

FGOでラクシュミー・バーイーが登場して驚いた件。英国統治時代のインドとインド独立についてざっくりまとめ。

伝説の王妃について調べてみた。FGOでラクシュミー・バーイーが登場して驚いた件その2

とりあえず今日はここまで。

ここまで読んでいただきありがとうございます。
皆様に女神様のお恵みがありますように。
王妃様の魂が安らかにありますように。

オーム・シャンティ・シャンティ・シャンティ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?