住宅営業マン、悔しくて原価率を研究する
基本的に私は工務店VSハウスメーカーを語る二項対立が大嫌いです。
所詮同じ住宅をつくる会社なのは変わらず、規模が違うだけだと思っていますし、「工務店」や「ハウスメーカー」でくくれるほど、そんなに没個性な業界ではないと思っています。
そんな中見つけたのはこちらのツイート。
さも大手ハウスメーカーはぼったくりとでも言いたげなツイートですよね。
これはとても悲しい気持ちになりました。
この手の情報発信をしている工務店の方は非常に多く、そのためにこういった言説をうのみにしてしまう消費者がいたり、自分たちのオーナー様が高値掴みをさせられてしまったのでは?という心配をしてしまうからです。
同じ住宅建築の仲間が、こんな発信をしてしまうのは悲しい。
どうにかこの歯止めになるような爪痕を残したい。笑
それが本日のnoteの意図でございます。
ターゲットとすべき数字は?
ここで楽なのは、大手ハウスメーカーは株主向けに、財務諸表をネットでも見られるように掲示しています。
この損益計算書を見ればある程度の察しがつくというわけです。
メーカーによっては、賃貸住宅や、大規模なホテルなどの施設をつくっていたり、多角化経営で住宅以外の数字が入ってきてしまうのはご承知おきの上で、ご覧ください。
11月5日追記
確かに。
ハウスメーカーはさすがに見積時の利益率までは情報開示されていないので、なんとなく近い数字として優しい目でみてください。笑
これですね。
他にも営業利益や経常利益といった数字もあります。
ただ、営業利益は販売費および一般管理費が入ってきます。
経常利益は営業外収益と営業外費用が入ってきます。
つまり、その家を売るためにどんな広告をしたか、間接部門の人がどれくらいいるのか、本業以外でどれだけ稼いだかなど、家の売り上げに対しての利益以外の数字が多く入ってきてしまいます。
それよりは、シンプルな売上総利益÷売上高×100=で粗利率を出すのが一番シンプルだと思います。
ハウスメーカーの粗利率ってどんなものか??
ここでは、大手8社(これもあいまいな概念)の数字をネットから引っ張り出してきています。
○三井ホーム 2020年3月期
https://www.mitsuihome.co.jp/company/ir/pdf/koukoku_200625.pdf
売上高 165,121百万円 売上総利益 34,182百万円 粗利率20.70%
○へーベルハウス 粗利率未公開
○住友林業 2020年3月期
https://sfc.jp/information/ir/settlement/2020-4q_gaiyo.pdf
売上高 11,041百万円 売上総利益 2,427百万円 粗利率21.98%
○積水ハウス 2019年度
https://www.sekisuihouse.co.jp/company/financial/highlight/
売上高 2,415,186百万円 売上総利益 478,036百万円 粗利率19.79%
○セキスイハイム 粗利率未公開
○大和ハウス 2020年3月期
https://www.daiwahouse.com/about/release/house/pdf/FY2019.pdf
売上高 43,802百万円 売上総利益 8,702百万円 粗利率19.86%
○パナソニックホームズ 2020年3月期
https://homes.panasonic.com/company/ir/notification/pdf/63_202003.pdf
売上高 252,247百万円 売上総利益53,523百万円 粗利率21.22%
○ミサワホーム 2020年3月期
https://www.misawa.co.jp/corporate/irinfo/publicnotice/pdf/2020/0629.pdf
売上高 185,353百万円 売上総利益39,531百万円 粗利率21.33%
いかがでしょうか。
売上総利益というのは、広告も、オフィス代も、間接部門の人たちのコストは入っていない数字、つまりは「利益」を指す上で一番大きな数字かと思います。(財務はド素人ですから、詳しい人訂正してください。)
どこ行ったんだ、50%。
どこのメーカーも狙ったかのように20%前後でそろっています。
どのハウスメーカーも、歴史がありますから、ずっとしのぎを削ってきた結果、こういった横並び拮抗状態になったんでしょうね。
ちなみに、「10年以上前のネット情報で50%とか見たんじゃない?」という話もでていたので、下は2010年の積水ハウス。
○積水ハウス 2010年度
売上高 1,488,369百万円 売上総利益257,208百万円 粗利率17.28%
むしろ低いです。
実際、何社か見ましたが、10年前の方が粗利率は低いんですね。
私も入社してから、段々と値引きのルールが厳しくなっているのを感じます。
各社、近年は付加価値提案と称して、値引きを大きくできなくなってきているのではないかと推測しています。
一方工務店はどうなのか
一方、工務店は上場企業ではないので、決算書を公開しているわけではありません。
個別企業の情報を取得するのは困難です。
そこで、急いで日経クロステックに登録し、工務店の原価や粗利について言及している記事を探しました。
原価率で検索をかけると、日経ホームビルダー2002年12月号内、「 特集 顧客の心をつかむ見積書 見積書は会社の姿勢を映し出す鏡:見積書は会社の姿勢を映し出す鏡」がヒットしました。
この中ではサンプルとして、4社が匿名で原価まで公開しています。
各項目は15~25%。
住宅1軒の粗利率としては、20~25%弱。
この数字はさっきのハウスメーカーと比べると高い数字になっています。
もう一つくらい記事を探してみました。
今度は「粗利率」で計算をしてみました。
2015年のネット上のPR記事ですが、「10年後勝ち残るのは強み持ち社員満足度高い工務店」がヒットしました。
その中で書かれているのは、10年後も続く工務店になるには、粗利率は30%を確保しようと書かれています。
これらを見ると、工務店さんは20~30%程度の粗利率で経営されている会社が多いのではないかと推測されますね。
工務店は25%とおっしゃっていた数字は納得の数字なわけです。
50%とは??
「ハウスメーカーも工務店も変わらないじゃん。」という結論に。
11月5日追記
これも日経ホームビルダーの2001年4月号とかなり古い記事ではありますが、住宅業界経営指標において、完工粗利率が大手ハウスメーカーは29.5%、地域工務店は26.5%とという数字が出ておりました。
この住宅業界経営指標なる数字が誰がつくったものかは知りませんが、完工粗利率であれば、両者の前提は揃いそうですね。
私はこの数字の出元を調べて勉強したいと思いました!
住宅産業研究所だろうか。会社に分厚い本があったので、読んでみます!
更にいうと、2017年4月の日経ホームビルダーには、地域工務店のランキングが掲載され、純利益率のランキングトップ15に並ぶ工務店は、軒並み10%前後という高収益をたたき出しているのに対して、ハウスメーカーは5%程度が多い。
粗利率は大きく変わらないのに、純利益率になるとメーカーが下がってきてしまうのは、皆さんがよくハウスメーカーが高い理由として挙げられる
・営業マンの高収入
・モデルハウスの建築費、維持費
・芸能人を使ったCM
こういった項目になるのではないでしょうか。
先ほど比較していたのは、売上から原価だけを引いた売上総利益から導き出した粗利率です。
なので、そこには、営業マンの収入やCM代は基本的には含まれていないわけです。
これらは販売費及び一般管理費に含まれますから、売上総利益には反映されず、営業利益、経常利益、純利益などであれば、比較可能です。
いかがでしょうか、それなりに根拠のある内容にまとまっていないでしょうか。
ただ、最初に申し上げたようにハウスメーカーについては個別物件の見積もりではなく、あくまで損益計算書の数字ですし、工務店についても業界誌内のサンプルでしかありません。
でも、少なくともハウスメーカーは利益が大きい、人件費やCM代で高い、という言説に対しての一つの反証になって。。。いませんか??
あまり数字に強くない素人の一夜漬けです。
ぜひ、経営者や会計知識のある皆様のツッコミを受けて、リライトしたいです。
このnoteはあくまで、論争を生み出すためではなく、「お互いにらめっこしたところで消費者は幸せになりません。消費者が幸せになることに時間を使いませんか。」という提案です。
宜しくお願い致します。
ちなみに自分の過去の仕事を振り返ったnote書いてます。
よかったらこちらも読んでください!
~~~~~~~~~~お知らせ~~~~~~~~~~
2023年1月から、みのはハウスメーカーから独立し、転職エージェントとなりました。
住宅営業マンのキャリアアップを中心に、住宅業界に恩返しができるような活動をしていきたいです。
ぜひ、応援してくださいね♪
詳しい内容は、WEBサイトを見てくださーい!!
「役に立った!」、「こいつ、好き!」って思ったらサポートをお願いします(*^^*)