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姓名判断が「統計」ってホント?

よく「姓名判断は統計だ」と言われますが、この説の根拠は何でしょうか。どなたか占い師で実際の統計データを示した人がいるでしょうか。せめて、統計の取り方や調査手順くらい示した人がいるでしょうか。

私は、たった一冊の例外を除き、見たことがありません。しかも、その例外でさえ、調査手順の説明が十分とは言えず、データの取り方にも重大な欠陥がありました。[注1]

どうやら姓名判断の統計説を疑う余地は 大あり のようです。もし姓名判断が統計だとすると、奇妙なことがいくつもあります。

そこで、この説の真偽をただすべく、ちょっとしたクイズを用意しました。考えてみてください。今まで気づかなかった姓名判断の陰の部分が見えてきますよ。

では、さっそく始めましょう。

●「画数の吉凶表」の不思議

① 画数の吉凶表にある「1画=大吉」って、どうやって調べた?

占い本や占いWebサイトを見ると、1~81の画数の吉凶表が掲載されています。そして、たいてい「1画=大吉」と書いてあります。

姓名判断ではふつう二文字以上の画数合計で吉凶を判断しますが、画数を合計して1画になる漢字(文字)とは何でしょうか?[注1]

② 画数の吉凶表にある「81画=大吉」って、どうやって調べた?

紀伊国屋きのくにや文左衛門ぶんざえもん」は江戸中期の豪商です。字画数を合計してみると、こんなに長い名前でも、68画(紀9、伊6、國11、屋9、文4、左5、衛16、門8)にしかなりません。

画数の吉凶表には「81画=大吉」とありますが、昭和・平成生まれの人は江戸時代の人より名前が長いのでしょうか?[注2]

③ 超激レアな画数の吉凶、どうやって調べた?

複数の占いサイトで、架空の一字姓一字名を試してみました。字画数が最小の「一」を使った「一一」さんは、人格と総格が2画で「凶」でした。

人格と総格が2画になるのは、姓も名も1画の場合に限られます。使える文字は、漢字の 、平仮名の 、カタカナの くらいです。

さて、これらの文字を使った一字姓一字名の人は、日本に何人いるでしょうか?[注1]

④ ウルトラ・超激レアな画数の吉凶、どうやって調べた?

字画数が最大の漢字は「鬱(29画)」です。そこで架空の二字姓二字名 「鬱鬱(姓) 鬱鬱(名)」さんを占いサイトで試したところ、人格が58画で「吉」でした。

人格が58画になるのは、姓の最後と名の最初の文字がどちらも「鬱」の場合に限られます。さて、このような名前の人は、日本に何人いるでしょうか?[注1]

以上の4つのクイズは、統計をとるべき対象者がいないのに、なぜか画数の吉凶だけがわかっているという「不思議」がテーマです。では、次のクイズはどうでしょうか。

●70年以上も続く「新字体vs旧字体」論争の不思議

⑤ 「沢」を7画、16画、17画にする三つの流派、どの流派も当たるのはなぜ?

漢字の「沢」は7画ですが、これを旧字体「澤」に変換して16画にする流派、さらに「澤」のサンズイを4画に数えて17画にする流派があります。

この三派(新字派、旧字派、康熙派と仮称します)の対立は70年以上も続いていますが、その理由が摩訶不思議です。新字派は7画だけが当たり、旧字派は16画だけが当たり、康熙派は17画だけが当たるというのです。

さて、この奇妙な現象はどう説明がつくのでしょうか?[注1]

⑥ 三派で画数が同じ場合も、「新字体vs旧字体」論争を解決できないのはなぜ?

田中大吉さんの四つの漢字、田(5画)、中(4画)、大(3画)、吉(6画)は上記の三派で画数が同じです。三派で画数が同じになる名前は10人に1人くらいあるので、とくに珍しいものではありません。

ところが、吉凶判断は占い師ごとに違います。たとえば、中(4画)+大(3画)=7画ですが、この7画の評価が大吉~大凶まで数段階に分かれるのです。

さて、このような収拾がつかない結果を導き出す統計手法とは、一体どんなものでしょうか?[注1]

以上の2つのクイズは、論理的な統計の世界では有り得ないはずのことが起こっている、という「不思議」がテーマです。では、次のクイズはどうでしょうか。

●日本人の「運の悪さ」を証明した三才配置の不思議

⑦ 3人に1人が「凶」って、日本人はそんなに運が悪いのか?

「三才の配置」という技法では、天格・人格・地格の画数を五行(木、火、土、金、水)に変換します。その組合せは全125パターンです。つまり、すべての日本人がこのどれかに該当するわけです。

そこで125パターンの吉凶を調べてみたところ、なんと凶の比率は33%でした。3人に1人が「凶運」とは異常です。日本人は世界でも希に見る「運が悪い民族」なのでしょうか?[注1]

このクイズは、統計にしては「凶」の該当率が非常識なほど高すぎる、という「不思議」がテーマです。

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いかがでしたか?「やはり姓名判断は統計だ」と再認識したでしょうか。

それとも、「姓名判断とは、勘違いや思い込みがミルフィーユのように何層も積み重なった、そして得体の知れないスパイスが少々加えられた、本来の占いとは別の何かだ」と新発見したでしょうか。

==========<注記>=========
[注1] 本項で参照した当ブログの記事
姓名判断の統計データは存在するか?
姓名判断は「統計」とは言いがたい
占いサイトの信憑性:珍姓名の運勢
『 Q:新字体と旧字体の流派があるのはなぜ?
その画数が「凶数」ってホント?
その「三才の配置」が「凶」ってホント?
名前で運勢が変わるか?(7):12万6千人の姓名判断で実証?

[注2] 字画数の多い名前は明治・大正期でも珍しかった
 昭和初期に毒舌で鳴らした根本円通氏は、字画数と調査人数がデタラメだとして、同業者たちをおよそ次のように批判している。

「佐々木泰幹氏の『姓名学大観』、神陽堂易断所の『姓名学自在』、高島勝俊氏の『姓名学宝典』などには『成功者と運画数』という章を掲げ・・・「81画 7人」と記載している。
 しかし、私はすでに十万人以上の名前を収集しているが、81画の名前は2人しかいない。また、昭和3年2月20日 普通選挙第1回の当選代議士466名中、宮城の藤澤幾之輔 64画、福島の菅野義右衛門 65画、大阪の廣瀬德藏 67画などは画数が多い方で、栃木の齋藤藤四郎 70画より多い者はいない。昭和4年1月、雄弁会講談社発行の『全国金満家番付』 3,670名中にも、73画 4名、74画 0名、75画 1名(千葉県の地主 齋藤萬壽雄)で、それより画数の多い姓名はない。」
<出典> 『姓名学真髄』(根本円通著、日本霊理学会、1929年)

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