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姓名判断を批判する人々(3):日野九恩

●日野九恩の批判

この著者は、姓名判断で用いている原理は陰陽五行説などの古いものだが、それ自体は比較的新しく作られた迷信であるとして、次のような主旨で手きびしく批判しています。[*1]

姓名の字画数、その上下の配列、文字の音の五行などを旧来の誤った陰陽五行説にもとづいて吉凶判断するのであるから、在来の日がら・方位の迷信と少しも変らない。・・・

人がもし運命に迷って姓名判断家のもとに走れば、いい鴨が掛かったとばかりに、慈父がつけてくれた名前に難癖をつけ、改名しなければすぐにも災難に見舞われるとおどしつける。

・・・わずか五十円の改名手数料で最良の運命を買えるものであるなら、悲運に沈み不幸に泣くものは、世にも笑うべき迂闊うかつ者である。五十円を借金してでも改名すべきだということになる。

思わず、「まぁ、まぁ、そう熱くならないで」などと言いたくなりますが、当時も現代と同様、占い師がらみのトラブルが少なくなかったのかもしれません。この著者はそうした被害事件を見聞きし、義憤に駆られて、つい過激な文章を書いてしまったのでしょう。

●昔も今も変わらぬ占いトラブル

和泉宗章氏の『占い告発』や『占いの謎』には、無責任な、ときには悪質ですらある占い師にひっかかり、被害を受けた人たちの実例がたくさん載っています。[*2-3]

和泉宗章氏といえば、あの「天中殺」で一躍有名になった元占い師です。昭和55年、巨人軍長島監督辞任の予告が外れたことを機に、占い師から占いを告発する側に転身されましたが、さすがに元プロだけあって、占いの落とし穴についても通じておられます。

和泉氏の著書にでてくる被害例を読むと、なるほどこれは許しがたいという気持ちになってきます。別に占い師がみんな無責任で悪質なはずもなく、特定の業種にそうした人間が偏っているとも考えにくいですが、影響力の大きさという点で他の業種より難しい立場にある、ということかもしれません。

●過剰な思い込み、過剰な信頼にはご用心!

誰しも迷い悩むことがあり、そんなときは信頼できる人物から明確な指針を示して欲しくなるものです。このような精神状態にあると、依頼者はついつい占い師に過剰な信頼を寄せてしまうのです。

ところが、信頼すべき相手を間違えると、ときとして悲惨な結末になります。占い師の側に悪意があろうがなかろうが、依頼者に対して強い思い込みでアドバイスすれば、あるいは依頼者の側が強い思い込みで占い師の言葉を受け止めれば、結果は同じです。

このような危険があることを占い師はもっと自覚すべきだ、と日野氏は言いたかったのではないでしょうか。(そうでもないか・・・)

====================<参考文献>====================
[*1] 『迷信の解剖』(日野九恩著、昭和13年刊)
[*2] 『占い告発』(和泉宗章著、読売新聞社、1982年刊)
[*3] 『占いの謎』(和泉宗章著、集英社、1993年刊)

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