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姓名判断を批判する人々(4):森田正馬

●森田正馬の批判

森田正馬氏も姓名判断について批判的な立場で書いています。ひとこと触れておくべきでしょう。

森田もりた正馬まさたけ(1874年~1938年)といえば、神経症を治療するための精神療法、「森田療法」を開発したことで有名です。わが国の精神医学の草分けといわれる呉秀三に師事し、犬神憑きや催眠・暗示など、興味深い研究もされた方です。

森田氏の批判もまた、日野九恩氏に劣らず辛らつです。昭和初期までに行われていた姓名判断の技法をほとんど言い尽くしたあと、次のように断言しています。

●森田正馬は当たらないことを証明したか?

「以上のような種々の配合は陰陽五行説から割り出し、牽強付会して吉凶を定めたもので、一種の迷信であることは明らかである。

私はかつて人々の実際につき、また世に最も不運不幸なる精神病者、犯罪者等の多数について、これを統計的に調べたことがあるが、いつでもその姓名の運勢の吉凶は平均の数が出てくるのであって、結局、吉と凶が50%ずつになるのである。すなわちこれら不運の人でも、決して常にその姓名が凶であるのではない。

しかるにまた新説を唱道するものは、かくのごとき運命学は決して統計的に研究すべきものではないし、選名の暗示力が偉大であることは自覚的修養の比ではない、などと論ずるのである。

そのようなことに学と名づけるのは、ただ衆愚を欺く誇張の言であって、もとより科学的な性質のものではない。」

『姓名判断』(森田正馬著、『迷信と妄想』所収、実業之日本社刊、昭和3年) [*]

さて、当ブログでは『姓名判断の正しい信じ方:プチ懐疑主義』 の中で、「姓名判断の有効性、あるいは無効性を示す実証的な研究はこの世に存在しない」 という意味のことを書きました。ところが、ここで引用した文中にあるように、森田氏はそれを実地で試したらしいのです。

ただ惜しいかな、その手順や詳細なデータは示されていないようです。私は確認できませんでした。また、誰かが追試して同様の結果を得たとも聞きません。従って、彼の調査は厳密な意味での実証的研究とは言えないでしょう。

なお、ご存知かと思いますが、ここでいう「追試」とは第三者による検証分析のことです。試験を受けそこねたり、落第点をとった学生の救済措置のことではないので、念のため。

===================<参考文献>===================
[*] 『姓名判断』(森田正馬著、『迷信と妄想』所収、実業之日本社刊、昭和3年)

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