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赤ちゃんの名づけ本は魔術書だった!
●「占い」と「呪術(魔術)」
ほとんどの占い師は、姓名判断が人の性格を読み取り、未来を予知するだけでなく、名前が運勢に影響し、改名によって運命転換も図れると考えています。
ただ、次のことははっきりさせておくべきでしょう。いわゆる「姓名判断」は性質のまったく異なるふたつの信念から成り立っているということです。ひとつは「人の性格や一生の運勢はその人物の名前に暗示される」というものですが、もうひとつは「名前は人の運勢を左右する」という信念です。
ちょっと考えればわかることですが、姓名判断で人の性格や過去・未来を当てるのと、名前で運勢がよくなるのは別の問題です。
なので、仮に姓名判断で性格や過去を正しく言い当てたとしても、同じ理屈で吉名に改名すれば、必ず開運するという保証はないのです。(といって、開運しないと断定する理由にもなりませんが)
●名前には魔力があるか?
人の性格や過去・未来を当てようとする姓名判断は、名前に隠された情報を引き出す技術(現実に可能かどうか、ここでは問わない)であり、「占い」です。それは手相術、人相術などと同じ原理にもとづくもののようです。
ある人物について、肉体の一部に現れた特徴から、その人物の内面や過去・未来を推測するわけです。手相術なら手、人相術なら顔、そして姓名判断では、名前もその人物の一部と見なして、名前から占おうとするのです。
ところが、名前で運勢を良くしようというのは、一種の「呪術(魔術)」であり、名前にお守り札か何かのような神秘的効果を期待しているのです。
いい名前で運勢がよくなるとすれば、名前に魔力がなければなりません。名前のように実体のないものが、はたして現実的な作用を起こせるのでしょうか。さらには、姓名判断のルールに従って、意図して画数合わせした名前が、そうした魔力を発揮するでしょうか。
●赤ちゃんの名づけ本は魔術書だった!
もうお気づきでしょうが、世の中にあふれている姓名判断の本にも実は二種類あったのです。「ピタリと当る!姓名判断」 などの運勢判断の書と、「幸運を招く赤ちゃんの名前」 などの命名用の手引書です。
前者は名前から当人の性格や過去を言い当て、未来を予測しようとします。これは占いです。一方、後者は名前のつけ方で性格や運勢を左右しようというのですから、これは文字通りの姓名判断(姓名による運勢判断)ではありません。明らかに呪術(魔術)です。
もっとも、たいていの姓名判断書には改名による開運法が記されていますから、若干の例外を除けば、「姓名判断書=魔術書」と言ってよいでしょう。
いずれにしても、姓名判断が当たるか当たらないかを論ずるなら、まず、「占い」と「呪術(魔術)」というふたつの機能を区別してかかる必要があります。さもないと、とんでもない間違いを犯すことになるからです。
●汚れた靴下は魔力の源泉か?
スポーツ選手はよく縁起を担ぐと聞きます。もし野球選手がヒットを打ったときの靴下を洗濯しないで履き続けるとすれば、ある種の心理操作としてやるのでしょう。
「ヒットを打ったとき、この靴下を履いていた。この靴下は幸運のシンボルだ。だから、このままの状態で履き続けていれば、またヒットを打てそうな気がする(あるいは自信を保てる)」
というわけです。まさか、汚れた靴下に魔力があると本気で考える人はいないでしょう。これを姓名判断の改名問題に対比させると、どうなるか? 姓名判断では次のように推論します。
「あの人はとても幸運だ。名前は○○さんだ。きっと○○という名前(あるいはその字画数)が幸運を引き寄せるに違いない。だから、名前(あるいはその字画数)を○○にすれば、誰でも幸運に恵まれるはずだ。」
この論法でいくと、野球選手のヒットと靴下の関係は次のようになります。
「ヒットを打ったとき、この靴下を履いていた。きっと、この靴下がヒットを打たせてくれたに違いない。だから、この靴下を履いていれば、またヒットを打てるはずだ。」
つまり、名前で運が良くなるという論理では、「汚れた靴下」 こそが魔力の源泉だ、ということになります。名前には魔力など無いかもしれないのに、名前で運が良くなると期待するのは、ヒットを打てたのが「汚れた靴下」のおかげと信じるようなものです。
もちろん、名前と靴下は同じではありません。ですが、姓名判断の占い機能と魔術機能を混同するとどんなばかばかしいことになるか、この例ではっきりします。
姓名判断を合理的に疑い、かつ信じるためにも、このふたつの違いをわきまえておくことが大切です。
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