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経済のマイナス成長と自殺者数の増加〜COVID-19のインパクト〜

COVID-19による世界経済への打撃シナリオをみていく。
そして。世界恐慌のケースを参考に経済的影響の解像度を高める。
最後に、社会的問題である自殺に対しての影響を示唆する。​
※2020/3月にまとめた記事の転載です。元記事

コロナ後の経済シナリオ

COVID-19: Implications for businessから抜粋。
COVID-19がもたらした経済的な打撃からの復旧で大事なのは
1.ウイルスへの対応の迅速さ
2.経済回復のための効果抜群な介入

一番濃い青のA1(赤枠)に落ち着くのではないか?と多くの人が予測している。
経済が短期的にぐっと落ち込み、2,3年かけて元に戻る、と予測している。

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WW2後くらいの打撃がありえる。世界恐慌とまではいかない。
USに限ってだけど、GDPが13%程度落ち込む、と。

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多くの人が予想しているシナリオにおけるGDP推移
落ち込みは22年3Qくらいから元に戻り始める予想。(もちろん地域によるが)

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つまり、中期的に大きく経済は落ち込むよ、っていうこと。
では、落ち込んだときに、何が起こるのか?

次に世界恐慌時に起こったことを見ていく。
直近のバッドケースを見ておきたくて、例として採用した。
ちなみに、コロナでの経済的な打撃は世界恐慌ほどにはならない予測が多い。

世界恐慌の「後」

世界恐慌を米国の事例に振り返ってみる。
「世界大恐慌」今だからこそ響く忌まわしい歴史 コロナショックの先に1930年代の再来はあるか がよくまとまっているので抜粋。

指標となる数値
・国民総生産……ピーク時から半減(1929年:100⇒1933年:53.6)
・生産指数……ピーク時の半減(1929年:100⇒1932年:54)
・卸売物価指数……3割の下落(1929年:100⇒1933年:69.2)
・失業者数……最大1283万人(1933年)
・失業率……最大24.9%(1933年)
・金融機関……銀行倒産件数6000行
・株価……ピーク時から89.2%の下落
発生したこと
失業者が街にあふれた。単純に言えば労働者の4人に1人が失業している。恐慌では賃金の落ち込みも深刻になる。平均賃金は3割超の減少。消費者物価も2~3割下落、デフレが深刻に。

ルーズベルト大統領が、有名な「ニューディール政策」をスタートさせ、貧困にあえぐ国民を救うための「連邦緊急救済局(FERA)」を設立した。1930年代の大恐慌下での最初の救済機関であり、最低限の生活費を給付するような機関だ。『世界大恐慌――1929年に何がおこったか』(秋元英一著、講談社選書メチエ)によると、1933年10月に行われた「救済状況調査」によると、300万家族、1250万人、アメリカ全人口の10%がFERAに依存せざるをえなかった、と記録されている。

要は、貧乏になるし、失業も倒産も増えるよ、っていうこと。
<2020年から始まる世界恐慌から新世界秩序に備える予備知識、金融/経済/ライフスタイルの対策法> もすごく参考になった。

よく言われるけど、
不況になると自殺者が増える、という話がある。
次に、その話をみていく。

不況と自殺率

日本では, 失業率と自殺率との間に強い相関関係がある。

不況・失業と自殺の関係についての一考察 が非常によくまとまっているので抜粋。
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Chen, Choi and Sawada (2009) の回帰係数によると, 日本における高失業率と高自殺率の正の相関関係については, 男性について, 完全失業率の 1%ポイントの上昇が 10 万人当たり約25 人の自殺者数増加と統計的に有意な相関関係を持っている。 女性の場合には, この関係は統計的に有意ではない。
自殺は人々の合理的判断の結果として選択される行動であると考え, 個人の生涯効用の期待値が各個人の閾値を下回ったとき, 個人は自殺するとしている。(Hamermesh and Soss (1974) )
失業率が高くなると自殺の増加要因となることが予想される。 なぜならば, 失業は, 今日や明日の生活が短期的に苦しいばかりか, 将来の収入見通しが立たないという所得不確実性の増大や生涯所得の低下をも意味するからである (Suzuki 2008)。

日本の人口を1.2億人とした場合、失業率が1%上がれば、3万人(=1200×25)が自殺する、という計算である。

日本の自殺の特徴は三つある。 第一に, 1997 年から 98 年にかけての 「急増」, 第二に, 98 年から 10 年以上にわたり年間の自殺者数が 3 万人を超えるという 「恒常性」, 第三に, 自殺者の時間を通じた 「若年化」である (Chen et al. 2009a)。

自殺に至る直接の原因で最も多いのがうつ病であることが知られている。
うつ病の背後に, 失業や負債, 生活苦, 職場環境といった社会経済的背景・構造的問題が潜んでいる可能性。
10 年間毎日およそ 90 人が自殺。

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もちろん、自殺の要因・特徴などは変わってきているかもしれないが、少なからずCOVID-19→不景気ないし不況→自殺者増っていうシナリオはありそう。

女性の自殺の背景
女性の就業率と自殺率には正の相関関係があり, 特に高齢男性と若年女性 (25~44 歳) においてその傾向が強く見られる。
女性の就業率と自殺率の正の相関関係は, 配偶者の失業によってもたらされた経済的困窮や, あるいは母子世帯の貧困と自殺率との相関関係を捉えている可能性がある。
自殺による経済的な損失
自殺死亡時以降にその人が生きていたならば得られたはずの賃金総額を推計することで, 経済的損失を推計している。 この推計結果によると, 1998 年から 2007 年までの 10 年間で発生した 20 歳から65 歳の人々の自殺死亡による逸失利益は, 累計で約 22 兆円にも上る。
当然、経済的な損失のみならず、残された遺族などの心理ストレスを加味すると上記損失は下限である。

うまく感染症と付き合っていきながらも、社会・経済の大幅な落ち込みを留められるようにせねば、って感じですね。
戦前期における景気と自殺の関係 も参考になりました。

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