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「坂の上の雲」と「キャリア」

人事部から下りてくる個人主義的な(西洋的)キャリア観も分かるものの、この韓国人マネージャーの意見もしっくりくる、という方も多いのではないでしょうか。東アジア的な文化背景においては、やはり組織や社会のなかでどう活躍すべきかという外在的要素が強いのも事実です。あなたらしいことは何か、あなたは何を実現したいのか。それぞれの社員がその価値観のもとで自己実現し、リーダーシップを発揮すれば、よりイノベーティブな組織になるのではないか―――。理念的には分かっても、どうにも本当に可能なのか、組織目標がある中で具体的にどうするのかよく分からないという方も多いでしょう。

韓国人マネージャーの気持ち、よくわかります。
儒教文化を根底にした我々の文化においては、
やはり組織の縦軸の中に自分自身を置いて行動しようとする価値観は否めないですよね。

私たちが「自己実現」を考えるとき、漠然としたのっぺらぼうの「自分」というものを考えるわけにはいかないからです。それは「○○株式会社の××」であり、「子ども2人を抱える母」であったり、すでに社会的な立ち位置があることが殆どでしょう。そしてそれらを選択してきたのもまぎれもない「自分」です。

肩書きで相手を呼んでしまうこと、往々にしてあります。
できるだけ職場では「○○先生」ではなく
「○○さん」と呼ぶように訓練しているのですが、
染み付いた慣習はなかなか抜けないものです。

いきなり「何がしたいのか」「好きなキャリアを描け」といわれても、私たちは急にWant toを描くことはできません。キャリア形成について、私たちは白紙に絵を描くわけではなく、今まで描いてきたキャンパスに色を追加していくことだからです。その過去を否定することなく、しっかり受け止め、そこに自分の強みや活かしたいもの(真之でいうところの「直感力」)を見いだしていくこと。従って、Want toのキャリアを見いだすためには、まず自分が今まで何をやってきたか(Have done)を棚卸ししてみる必要があるのです。

生徒に「何がしたいのか」と言うからには、
その生徒が過去にどのような道筋を歩んできたのかにフォーカスさせることが大切ですね。
その上で、Have to からWant toへと変化していくのだなと感じました。

繰り返しですが、私たちはのっぺらぼうの白紙の人間ではなく、過去実際に生きてきた人生というものがあり、そこで培った関係性やつながりがあるものです。人とのつながり、モノとのつながり、場所とのつながり、書物とのつながり、様々な積み重ねの中で自分というものは規定され、そして未来への飛躍もそこから始まるはずです。漠然とした「私はどうしたいのかな」ではなく、「今まで○○してきて、そして今××している私」と真剣に向きあうことが、地に足のついたキャリア形成に繋がっていくでしょう。

西洋的なリーダーシップ論やキャリア論が巷に溢れる中、
「わしは日本陸軍の騎兵中尉秋山好古という者で、ざんねんながらばく然とした人間ではない」
という秋山好古の言葉は朦朧とした視界を切り拓く一筋の剣になるかもしれません。私たちの多くは関係性の中で生きており、幸せもその中に存在します。
一方で現状の中に閉じてしまっても発展性はありません。人事部が全てを決めてくれる時代でない以上、私たちは過去・現在の自分と向き合い、その上で未来のキャリアを作り上げていく必要があります。シンプルに自分の行動原理を捉え、今のキャリアに埋没することなく新しいキャリアへの挑戦へつなげていきたいものです。

こどもにキャリア教育をする前に、
自分自身のキャリア形成についてビジョンを描いてもいいかな。
そうやって大人が学び続ける姿を見せることが、
結果として子どもにも伝わるのかな。と思います。

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