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本当は死んでしまいたかった去年の夏とその延長線にある冬

去年の夏、私は毎日死んでしまいたかった。

毎日毎日、残業して家に帰って、疲れているはずなのにまったく眠れなかった。
でも眠れなければ次の日仕事ができない。

だからウイスキーを瓶から直飲みして、どうにか2時間くらい寝る生活を2ヶ月ほど続けた。

頭はずっとぼんやりしていた。
明らかにパフォーマンスは下がっていたけど、
初めてやる仕事だから自分一人でやり遂げてものにしなければいけないと思っていた。

仕事を一部やってもらえないか先輩に頼んでも、スケジュールをちらっと確認して「これくらいならできるでしょ」と言われた。

毎日毎日、死んで楽になりたかった。
毎日、会社のトイレで泣いて、手首や太ももを切った。
制服が長袖長ズボンだったおかげで誰にも気づかれなかった。でも本当は誰かに気づいて欲しかった。

生きるために仕事をしているのに
仕事をするために生きてるみたいだった。

ある日から咳が止まらなくなった。
コロナが猛威を振るっていた時期だから
当然周りからは距離を取られた。

こんな状態なのに休もうとしなかったのは半分は自分がやらなきゃいけないという使命感と、残り半分はもしコロナだったら誰も助けてくれない会社の人間に移してやろうという最低な思いだった。

家が遠く車がない私は母親に毎日迎えにきてもらわなくてはならず、そのストレスで母親も毎日私にあたった。

全てが嫌な方へ進み、どうすることもできず、
ウイスキーを直飲みして幻覚を見る時間だけが
何も考えずに済んだ。

そして、上司と二人で23時過ぎまで仕事をしていたとき、上司からの注意か叱責かで、涙が止まらなくなった。

頑張りたいのに頑張れない。
眠れない。うまくいかない。
でもできなければ私は不要だ。
ここにいる意味がない。

コンプラ案件になることを恐れてフォローし始めた上司の言葉は何一つ頭に残らなかった。

その夜も眠れずウイスキーを飲んだ。
自分の頭が二つになる幻覚を見た。
私の頭は左側だった。右にも頭があった。

翌朝起きて、着替えて、食パンを齧っていたら
また涙が出てきた。

涙が止まらなくてバスに乗れなくなった。 
母親が気を利かせたのか何なのか、上司に電話で
怒鳴った。私はもう会社にはいけないなと思った。

母親が家を出て、私はお風呂に45度のお湯を溜めた。ウイスキーとワインを持って風呂場に行き、両方がぶ飲みして熱いお湯に服を着たまま入った。だんだん心臓が苦しくなって、顔が熱くなって、息ができなくなった。

でももう少しというところで、気がついたら風呂から出て、びしょ濡れで倒れていた。

寒さに震えながらまた寝て、頭が痛いので熱を測ると39°だった。でもそれもすぐに下がった。

私の体って頑丈だな、とちょっと笑った。

翌日精神科に行った。待ち時間が長かった。
音量大きめでクラシックを聴いて、二階堂奥歯さんの『八本脚の蝶』を読んだ。

先生は私の話をあまり聴いていなかった。
一方的にいろいろ説かれて、不眠に効く漢方をもらった。自殺未遂のことは話せなかった。

漢方を飲むと笑っちゃうくらいちゃんと眠れたので翌日出社した。

「生きていくために仕事をするのであって、仕事のせいで体を壊したら意味がない」

上司の手はぶるぶる震えていた。
そりゃそうだろう。部下が残業続きで突然泣き出したりしたなんて報告すれば自分の評価に関わる。

なんで周りを頼れなかったのか、私にもわからない。
いや、「これ、締切に間に合わない可能性があるんですが……」と話しかけたら「間に合わせるしかないでしょ」と返される職場で誰を頼れって話なんだけど。

そうして会社からは一週間定時で帰れと言われた。

気まずい気持ちのまま毎日定時退社して、何かしないと落ち着かず家で資格の勉強をした。

そして今年の冬、また同じ業務が始まり、残業が続いた。また眠れなくなった。

お酒に頼らず今度はあのときの漢方を飲んだ。
でも効かなくなった。だからまた酒に頼った。酒を飲んでいる間だけは、頭の動きが停止してごちゃごちゃ考えずに済んだ。

前の反省を生かして、要領よくやれているはずだった。それなのに、仕事中気づいたら涙が出てくるようになって、トイレで泣いた。
悲しくないのに涙はたくさん出てきた。

涙を止めようと深く息を吐いて、吸って、また吐こうとしたら息が吐けなかった。

吸って、吸って、吸って、吸って、
ゆっくり息が吐けない。

苦しくなってトイレに倒れた。足に力が入らなくなった。

しばらくすれば治ると思って、頑張って息を整えた。どうにか立てるようになったのでフロアに戻ったところで膝から崩れ落ちた。

過呼吸は苦しい。恥ずかしい。
私は別に困ってないし、悩んでないし、
悲しくないのに、こんなに派手な症状が
出たらまた人に迷惑をかけてしまう。

先輩が心配して付き添ってくださる。
申し訳ない。仕事ができないのにこうして
迷惑だけかけて、何をしているんだろう。
私がいなくなれば全部解決する気がする。

また一週間定時で帰るよう指示が出る。
こんな忙しい時期に。結局先輩の負担を増やす。

何で頑張りたいのに体がついてこないんだろう。
無理しないでと言われても、無理しないと仕事ができるようにならないのに。

私にできることなんかこの世にないのかも

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