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この世界の記憶と描写の力
はじめに
この記事は、教室Webサイトの以下の記事を統合・簡略化したものです。
よりくわしい内容は、記事を参照してください。
描写とは
生き生きとした文章を書くには、描写が重要です。描写には、読者を文章の世界に引き込み、感情や印象を追体験させる力があります。
質感とイメージの力
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干したバスタオルのざらつきやプールの底に映る光の揺らめき……。
描写の核心は、五感で感じるこの世界の「質感」です。こうした「質感」の記憶がなければ、描写をすることも、描写を読んで受け取ることも難しくなります。
描写は俯瞰的な視点ではなく、一人称で世界に入り込むことが求められます。そのためには、その世界で感じることを再現する「イメージ能力」が必要です。
しかし、イメージの力を使うことが難しい子どももいます。
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イメージは学びの本質です。しかし、イメージをするのが苦手な子もいます。
それには次のような理由が考えられます。
・集中力が続かない
・自分の内面に気づけない
・イメージの材料となる知識や体験がない
特に、「イメージの材料となる知識や体験」、この世界の「質感」の記憶がなければ、描写をすることも、描写を読んで受け取ることも、難しくなります。
質感のある体験の大切さ
質感を持った体験を得ることは、近年、難しくなっています。夕立に打たれたことがない・虫に触れたことがない・木に登ったことがない・海で泳いだことがない子どもたちは、少なくありません。
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夕立に打たれた体験がある子は、「夕立に打たれた」という描写から多くのイメージを得られますが、体験がない子は、ステレオタイプな想像しかできません。
心理学者ジャン・ピアジェ(Jean Piaget, 1896-1980)が指摘するように、子どもたちはまず、具体的な体験を通じて考える力が養われ、その後、身体を使わずに、頭の中だけで操作する思考力が育まれます。直接的な「体験」の豊かさは、表現力や理解力の基盤なのです。
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鉛筆は、「鉛筆」に留まらない。よく見れば、木肌や、二つの木の接着された線、黒い芯に映るとても細なきらめきに気づく。鉛筆は「鉛筆」ということばから解放され、木や、黒鉛が組み合わされた「もの」となる。
今、自分が生きる世界をよく見て、「紙」や「鉛筆」といった言葉から自由になるところから、自分の言葉が生まれる。この段階を飛ばしてしまうと、曇りの日の海なのに、「海」だから青く描いてしまったり、夏の花壇の花なのに、「花」だからチューリップを描いてしまったりする。
「りんご」という文字や音を食べることができないように、ことばは、「それそのもの」ではありません。自分自身の質感をともなう具体的な体験が、誰とも違う、自分だけの豊かな描写を生み出します。
体験は、耳を澄ませることから
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質感を持った体験は、自然の中だけでなく、日常生活の中にもあります。大きな音ではなく消えゆく音、激しい動きではなくゆっくりとした動き、目立つ色ではなく小さなささやかなものに、生きて感じるこの世界の「質感」はあふれています。机の上の学習だけでなく、そうした質感を五感で味わう時間が、子どもたちには必要なのです。
耳を澄ませて、目を凝らして、手を伸ばしてみるところから、表現を始めてみましょう。
元の記事
よりくわしい内容は、記事を参照してください。
書いた人
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