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2023年12月の記事一覧

御本拝読「おみやげに選びたい!ときめくローカルパッケージデザイン」

 全国津々浦々、駅をはじめとして、各地で「名物おみやげ」とされるものが販売されている。その多くはお菓子や真空パックの日持ちする食品で、具材や味付けが地方や県、地域によって異なっている。たとえば職場や知人同士の集まりなどで「先日旅行で○○に行ってきて……」と渡されるそれら。この時期、「帰省したので……」とそっと差し出されるそれら。それ自体はもう何十年も前から繰り返されてきた光景で、おそらくこの後も連

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御本拝読「東慶寺花だより」井上ひさし

 白状すると、井上ひさしさん自体に興味や好意があったわけではなくて、映画「駆け込み女と駆け出し男」の原作本として読んだのがきっかけ。以下、映画版と原作の比較を中心に。
 まず、映画の方は120分越えなのにその長さや重さを感じさせない面白さだった。役者さんが実力派揃いなのはもちろん、やはり脚本の上手さが抜群だった。セリフの長回し、早口(特に前半)が気になっていたが、それも含めて伏線であり、原作を読ん

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御本拝読「よちよち文藝部」久世番子

 大きい版のコミックスとして既刊されていた二冊を文庫で合本にした本書。日本・世界の著名な文学者や作品を、漫画で解説していく一冊。前半は日本の近代文学、後半は世界の古典を中心に。文庫版はぎゅっと凝縮された感が加速して好き。
 「漫画で解説!」「漫画で分かりやすい!」と謳った本って、大概あんまりおもしろくない(※偏見です)理由は多々あれど、描いてる人間のエゴや自己アピールの方が前面に出ちゃったり、漫画

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御本拝読「雨だれの標本」吉永南央

 「紅雲町珈琲屋こよみ」シリーズの最新刊。七十代後半の珈琲屋店主・杉浦草が町や人に関する謎を解く、毎年楽しみに待っているシリーズのひとつ。謎解き、ではあるが、いくつも死体が出てきたり壮大なトリックや陰謀があるわけでなく、家族や友人という小さいコミュニティの関係のもつれや秘密を解いていくシリーズだ。
 失礼を承知で、それでも忌憚のない言い方をすれば、このシリーズは巻によって好き嫌いがはっきりと分かれ

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御本拝読「いきもののすべて」フジモトマサル

 今現在も普通に過去の作品の再版や改版・合本などが新しく出ているから、生きているんだと勘違いしてしまう。あ、そうだ、亡くなっておられるんだ、と気付いてその度に寂しくなる。そんな作家さん・漫画家さんの一人、フジモトマサルさん。ありきたりだが、もっと作品を拝見したかった方だ。
 私は、所謂「シュール」「トガっている」というものを好む人間ではないと思っている。めっちゃベタにコウペンちゃんやシルバニアファ

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御本拝読「新宿二丁目のほがらかな人々」新宿二丁目のほがらかな人々

 ゲイだから○○、というのは、A型だから几帳面とかみずがめ座だからエキセントリックとかいう迷信めいた言説と同じだと思っている。占いは統計学、という論にも一理あるが、基本的には成育歴や職種などの外的要因から成る「個人による」だろう。が、本書が面白くて読みごたえがあるのは、間違いなく本書に出てくる御三方がゲイだから、である。それは、単純に「ゲイだからこう考える」ということではなく、ゲイという性質と付き

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