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2023年11月の記事一覧

御本拝読「作家超サバイバル術!」中山七里・知念実希人・葉真中顕

 作家の生活や来し方を書いたエッセイや自叙伝は星の数ほどある。そこには大抵、自分の生活習慣や趣味、思い出や主義主張、本人の心や脳の中身を適度にラッピングして読者が読みやすいように書き下してある。もちろん面白いのだけど、実は「モノを書く」という仕事についての話は案外少なくて、本書ではそこのみを抽出してさらりと、しかしかなり真摯に丁寧にさらけ出してくれている。
 当たり前の話っちゃあそうなのだが、まず

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御本拝読「好きになってしまいました」三浦しをん

ばらばらの「好き」

 三浦しをんさんのエッセイ集。ハーバーやVISA等、種類の異なる業界や会社の関連誌に掲載されたエッセイをぎゅっと集めた本書。巻末の初出一覧を見ると、およそ10年間分のたくさんのエッセイを収録。
 テーマや書かれた年は、見事にばらばら。縦にも横にも守備範囲というかトークテーマが広がっており、幅も高さも大変広くて大きい。なのに、ちゃんとまとまっている。最初から最後まで読みきっても

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御本拝読「パッケージデザインのひみつ」公益社団法人日本パッケージデザイン協会監修

包装の向こう側

 市販されているものはほとんど全て、何らかの包装を施されている。紙、プラスチック、特殊な素材や形状、実に様々な包装が店にも家にも溢れている。何の気なしに眺めているそれには、ちゃんと一つ一つ意味がある。
 一時期、シンプルライフに憧れて100均で買える透明なジャーや容器に調味料や食品を全部詰め変えたことがある。確かに同じ容器やガラスで揃えると見た目はすっきりして見えるのだが、品質管

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御本拝読「るきさん」高野文子

普遍でカラフル

 高野文子さんの漫画「るきさん」、実は学生時代に読んだ時はピンとこなくて、三十代後半になって沁みてきた作品。作品が描かれたのは、1988年~1992年、バブル崩壊、平成に改元の頃。同じ頃(か、バブル崩壊直前)にわたせせいぞうさんの「ハートカクテル」が描かれていますが、こちらも今手元にあるので並べてみたら、この二つは真逆の作品だなあと思う。どっちも好きだということは大前提で。
 「

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御本拝読「空想の海」深緑野分

静かな短編名手

 深緑野分さんの御本は、「オーブランの少女」から好きだ。その頃から、装丁と本の内容、文体、全てがこれ以上ないほどにマッチしていて、まさに「恵まれた作家さん」だなと思っている。描きたいもの、書きたいものに、筆(実際はキーボードやフリック入力であっても)が沿うている。文章が簡単で読みやすい、ということではなく、するりと脳に入りやすくじんわり心に届く文章だ。
 長編も、もちろんとても優

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