対人恐怖症を克服した過程~ひたすら打ち込む~
音楽学校を卒業してからはひたすらにドラムに打ち込んだ。
すごく苦しかった。自分は本当にうまくなることが出来るのか?死ぬまでひょっとしたら変わらないのではないか?
そんな自問自答が頭でこだまする。
毎日練習したが、それが果たして本当に自分の目指すドラマーに近づくことなのか?不安でいっぱいだった。
朝から晩まで練習した。一生誰とも繋がれない、ただ孤独にこんなことをやって自分は死んでいくのか?と考えると涙が出てきた。
そして半年ほどそうやって過ごしていた時、それは突然やってきた。
いつものように音楽をスピーカーで流しながら、ドラムで合わせて録音した音を聞いている時だった。
今までは自分のドラムの音を聞くのが苦痛だったが、その時初めて音源に合わせたドラムが違和感なく音楽と一体化していて、聞いていて心地よかった。
プロの演奏と合わせても遜色なく聞こえた。勿論、プロの奏者が聞けばまだまだな所があるんだろうが。
多分素人が聞けばそんなに違いは分からないのではないか?という所まで叩けるようになっていたと思う。
その時になんだか肩の荷がすごく軽くなるのを感じた。言葉では表現できないが、もう自分はやれるところまでやった。もうドラムと向き合わなくていいと思った。
普通はそこでもっとドラムの技術に磨きをかけて本当のプロの人達と演奏したい!とか思うのかもしれないが、そうは思わなかった。
まぁベクトルがそもそも違ったから。
あくまで何も達成したことがない自分を変えたい!ということが大きな目標だった気がするから、そこでもう終わった、と思う気持ちの方が強かったんだと思う。
それからというものは今まで自分には何も出来ないと思って挑戦してこなかったことを手あたり次第にやっていった。
普通は下らないと思うようなことかもしれないが、例えば自分は字がすごく下手だった。中学の卒業文集を見返した時にミミズがはったような字でほとんど読めない程だった。
だから字の練習をした。それから音楽学校でメロディー楽器にも興味がでたためピアノにも挑戦した。
1年程やった。そしたら字も周りからうまいね。と言われるようになり、自分でも自分の字が好きになった。ピアノも1年練習して、自分の満足できるくらいまでは上達した。
なんだ、やれば自分でも出来るんだ!と大きな自信を掴んだ瞬間だった気がする。
そこからは何にでも自信が付き人生薔薇色。とうまくはいかないのが人生の憎らしいところである。
…つづく
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