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割と若くして乳がんになった話④ 〜針生検の結果〜

針生検から2週間。
ついに結果を聞く日が来た。

もしかしたら良性かもしれないという期待がどうしても拭えないが、悪性だった場合、果たして自分は正気でいられるだろうか。
ステージが思ったよりも進んでいた場合、あと何年生きられるのだろうか。
右胸は全摘だろうか。
抗がん剤はやるのだろうか。
それらの現実に自分は向き合えるだろうか。

不安な気持ちで診察室に入ると、S先生の表情に陰りを感じたため、これから何を言われるのか察した。

予想通り、乳がんだと告げられた。
そしてホルモン受容体が陽性、HER2(ハーツー)陰性のルミナルBタイプであること、グレード3で悪性度が高いこと、Ki-67(キーロクジュウナナ)の数値も高値で増殖スピードが早いことなどの説明を受けた。
腫瘍の直径は最大の部分で2.5cm、現状は腋窩リンパ転移が見られないため「ステージ IIa」という診断だった。

乳がんには大きく分けて3つのサブタイプがある。
ひとつは私が罹患しているルミナルタイプで、いわゆる女性ホルモン由来の乳がんだ。そこからルミナルA、Bの2種類に分けられる。
もうひとつはHER2が陽性のタイプ。
そしてもうひとつはホルモンもHER2も陰性のトリプルネガティブ。

それから腫瘍の悪性度を示すグレードが1から3まであり、数字が大きいほど悪性度は高い。
Ki-67の数値は腫瘍の増殖スピードを示す。
これらの情報は針生検によって調べることができるが、針生検ではあくまで腫瘍の一部のみの採取となるため、腫瘍全体を見る術後の病理検査とは結果が異なることもあるらしい。
つまり手術で腫瘍を取ったあと、腫瘍全体を検査して初めて正確な情報を把握することができるのだ。

私のがん細胞は悪性度も増殖スピードも高いため、半年前の検診は見落としではなく、この半年で一気に大きくなったのだろうとのことだった。
以前も述べたが、セカンドオピニオンの医師も同じ見解だった。

S先生はまず右乳房の全摘手術を受け、そのあと抗がん剤をやってからホルモン療法をやる流れを提案してきた。
抗がん剤をやる必要があるかどうかは微妙なところだが、悪性度や増殖スピードが高いこと、それからまだ年齢が若いことを考えるとやっておいたほうがいいだろうとのことだった。
「オンコタイプDX」という検査で抗がん剤が効くかどうか調べることができるので、それをやってみることも提案された。
「オンコタイプDX」はちょうど保険適用になるタイミングだとのことで、これまでは全額自己負担で40〜50万円したのが13万円程度になるということだった(それでもずいぶん高額だが)。

それから年齢が若いことを理由に、遺伝子検査をしてみることも提案された。
私の親族には乳がんどころかガンに罹患した者が一人もいないため(祖父母4名、父母2名、兄1名、おじ3名、おば3名、いとこ11名)遺伝ではないだろうとは思いつつ、念のため受けてみてもいいかなと思った。
遺伝子検査の結果が陽性であれば、将来もう一方の乳房も乳がんになるリスクがあるし、卵巣がんになるリスクもある。
その場合、予防的に胸も卵巣も取ってしまう方法もあるそうだ。
取らないにしても、それに応じた治療法なども考えられるため、受けておいて損はないだろう。
ただしこちらの検査も保険適用で自己負担が約6万円。
病気になると本当にお金がかかる……。

手術は右乳房の全摘を勧められたが、部分摘出で温存はできないかダメ元で聞いてみた。
S先生は改めて触診をしてくれて、「うーん、温存でもいけるかもしれないけど、腫瘍が脇のほうだったら脂肪を寄せることができるのに対して、あなたの場合は胸の内側に腫瘍があるから胸の形が大きく崩れちゃうと思います」と言った。
そして「MRIで腫瘍の全体像を詳しく調べてから決めてもいいかも」と言った。

そのあと「乳がん看護認定看護師」という乳がんのエキスパートの看護師と話をした。
胸を全摘することは女性にとって非常に大きな決断となり、精神的になかなか乗り越えられない人が多いことを話してくれた。
私ももちろんそんなに簡単に受け入れられないし、できれば避けたいと思っているのも事実だが、治療のために必要であるならば受け入れるしかない、命に代えられないと話した。
そんな強がりを言ったけど、ここにくるまでの2週間、どれだけ涙を流したことか。

そしてCT検査とMRI検査の予約をし、病院をあとにした。
帰り道、不思議とスッキリした気分だった。
初めて病院を受診し、悪性の疑いがあると言われた日は過呼吸一歩手前で涙を流しながら帰ったというのに、がんが確定したこの日はなんだか清々しい気分ですらあった。
病理検査の結果を聞くまでの2週間の地獄が嘘のようだ。

確定してしまったからには、向き合っていくしかない。
できることをやるしかない。
つべこべ言っても乳がんになった事実は変えられない。
この2週間、生活習慣を改善したことでこんなに快便になって、こんなにメンタルも健やかになったのだ。
これを続けていけば、乳がんなんて克服できるのではないか?
そんな前向きな気持ちで満ちていた。

なんで自分が……って思わなくもない。
現実を受け入れているわけじゃない。
それでも、できることをやるしかない。
何をしても、しなくても、時間はどんどん流れていく。

悲観してるヒマなどないのだ。

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