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割と若くして乳がんになった話① 〜しこり発見まで〜

馬車馬のように働き続けてきた。
忙しすぎて、寝る時間も食べる時間もない日々。
だけど仕事にやりがいを感じてさえいれば、そんなことはどうってことないものだ。

いくつになってもチャレンジし続けたい。
いくつになっても成長し続けたい。
年齢や性別は言い訳にせず、常に全力で結果を出していきたい。
そんな考えを持っていた私は、新しいことに次々と挑んでいってキャリアを開拓し、毎年人生のピークを更新していった。

しかし転機は突然訪れた。

それまでずっと耐えてきた上司のパワハラに耐えられなくなったのだ。
上司は私に次々に嫌がらせを仕掛け、人格を貶める行為を繰り返し、尊厳を踏みにじってきた。

パワハラによって心身ともにボロボロになった私は、まず心療内科に駆け込んだ。
診断結果は「適応障害」。
症状はうつ病と同じだそうだが、原因がハッキリしないうつ病とは違い、適応障害は原因から離れれば改善するとのこと。
医者からは、今すぐ休職するように言われた。

悩んだ挙げ句、休職ではなく退職をした。

それまで馬車馬のように働いてきた私は、自分の身体を気にかける余裕など全くなかった。
1日18時間働くこともザラ。
睡眠時間は移動中のタクシーのみ、もしくは休憩がてら床で仮眠。
食事は夜にお菓子をひとつまみだけ。
栄養はサプリのほか、ザバスとウィダーinゼリーから補給。
眠気覚ましのためにとにかく強めのブラックコーヒーを朝から晩まで(明け方まで)飲みっぱなし。

それが仕事を辞め、急に時間ができた。
しかし適応障害のため、心療内科に行く日以外は一日中ベッドから起き上がることすらできない。
そんなある日、ベッドに転がってうつらうつらしていた時にふと手が胸に当たった。
2cmくらいの硬いしこりに触れた。

ドキーン!! とした。

「なんかしこりがあるかも?」なんてレベルではなく、こんなに分かりやすく、明らかにしこり。ちゃんとしこり。
もうこれ、絶対ヤバいやつじゃん……って直感的に思った。

普段健康に気を遣っていない分、せめて健康診断だけはちゃんと受けようと考えている私は、乳がん検診と子宮がん検診を年に一度受けている。
最後に受けたのは半年前。
前回の結果では、毎年指摘されている「嚢胞」があっただけ。
こんなでっかいサイズの乳がんがいきなりできるはずもない。
ネットで調べたところ、がんは1cmの大きさになるまで10年かかるって書いてある。

ネットで検索したり、乳がんに関するYouTube動画を観たりして、自分の症状と照らし合わせては「やっぱそうかも」「いや、違うかも」と一喜一憂する日々。
近所の乳腺外科を検索し、電話してみようとしては思いとどまり、とりあえず週明けにまた考えよう……と後回しにしたりして。

そんなこんなで3週間ほど過ぎて、いつまでもこうやって気にしてないで、とっとと病院に行ってハッキリさせよう!
そう意を決して病院に電話をした。
すぐに予約が取れ、乳腺外科の医者にまずは触診をしてもらった。
半年前の検診で嚢胞が指摘されたことを伝え、それが大きくなったのだろうと思うと話した。

先生はしこりを触ると、「恐らく嚢胞でしょう」と言った。
ホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、すぐさま「うん? いや、どうだろう。念のためエコーを撮りましょう」と言った。

エコーの結果、先生からは「悪いものの可能性があるので、針生検をしましょう。」と言われた。
その瞬間「あ、やっぱりそうだったんだ。」と思った。
先生は私の表情を注意深く観察している様子だった。
患者が激しく動揺する場合もあるだろうから、慎重になってくれているのだろうなとありがたく感じた。

私は冷静だった。
そして「悪いものだった場合、治るんですか?」と聞いた。
先生は「もちろんです。手遅れってことは全然ないので、治ります」と言ってくれた。
若い女性の医師で、私はこのS先生のことをこの日から今に至るまで、とても信頼している。

その日の帰り道、息が荒くなり、涙がポロポロと溢れ出てきた。
過呼吸にならないよう、必死で息を整えた。
病院では冷静に振る舞っていたが、ショックを受けないはずがない。
しこりを見つけた時点でそんな気はしていたし、ある程度の覚悟を持って病院を受診したわけだから、青天の霹靂というわけでもない。
それでもやはりショックだった。

私、いくつまで生きられるんだろう……。

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