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メキシコの警察官って...

当然だが、日本とはまったく違う生活環境であるメキシコにいると、非日常的な現実に直面することがある。

その中でも代表的なケースは、犯罪に巻き込まれるパターンだろう。

現地で生活する日本人の大半が、大なり小なり犯罪にあっているのに比較すると、1992年から2007年まで15年間メキシコで生活していたわりに、ぼくは危険な目にあったことは少ない。
そんな少ない経験の中から、警察官にまつわるお話しを紹介します。

車でメキシコシティ北部のペリフェリコという大通りにできた、新しいホームセンターに行った時のこと。
目的地は信号のない幹線道路沿いにあるため、スピードも出ていて見つけづらく、気づいた時にはすでに通り越した後だった。
次の角で曲がり、大通りの裏側に回ってしばらく進んでいくと、完全な路地裏に入ってしまった。
更に進むと、地下鉄クアトロカミノスの駅前の大きなバス発着場が見えてきた。
と同時に、警察官がぼくの車を誘導し始めたのだ。

ぼくの前後にも同じように迷い込んできた車が、警察官に誘導されている。
指示された場所で停車し窓を開けると、警察官は丁寧な口調で話し始めた。

「ここはバス専用の入り口で、一般車両は侵入禁止ですよ。」

そんな表示には気がつかなかったが、交通違反をしてしまったようだ。

「通常の違反金だと1000ペソだけど、どうしますか?」

「どうって、どうすればいいですか?」

他に選択肢はないだろうと尋ねるぼくに、彼は口を開いた。

「今、現金で払ってくれれば、200ペソかなあ。」

日本でいうところの袖の下の要求だ。
1000ペソは当時日本円にすると1万5千円ぐらいだが、メキシコでは結構な大金なので、普段持ち歩いている人はほとんどいない。
その場で支払えない金額になると、警察官は彼らの懐に入れることができないので、絶妙にその場で支払うことができるであろう金額を、なんとなく提示するのだ。

「もうここに入ってきちゃだめだよ。」

笑顔で手をふって見送ってくれる警察官。
もと来た道を戻ると確かに進入禁止の案内はあったが、それは標識ではなく、A4サイズ程度の小さな看板に細かい字で書かれたもので、とても注意を促すものとは思えない。
この看板からして、仕込まれていたんじゃないかと疑うレベルのものだった。

結果的に安く収まっており、どちらにとってもWIN-WINというやつだが、罠にはめられた気分で釈然としない。
こういった警察官の犯罪は日常茶飯事で、彼らの不正を取り締まるべく町には監視カメラが設置されているが、この時警察官はぼくの車をちゃんとカメラの死角に誘導していたのだった。

メキシコでは警察官も信用することができないのだ。





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