私だけの物語

ここから見える景色は、いつもと同じだ。
家は小高い丘のうえに立っている、窓から見える景色は畑の中を単線の
電車が走っている。午前・午後の2回走る、そして踏切の処で汽笛を上げる。
わたしは先天的小児麻痺で、人の助けを受けなければ外に出してもらえない。部屋には白いグランドピアノがあり、わたしの唯一の楽しみはピアノを弾くことである。もう10年こんな生活をしてすぎている、ただ曲を弾けるようになるとその曲の世界をイメージしてそこに入る。この時はわたしにとって至福の時間である、最近は自分の曲も書いている。譜面台にある譜面に弾いたメロディの音符を書く、私の心の世界が拡がる。
そして私の心の物語を、私は原稿の白マスに一文字一文字書いていく。
それは私だけの物語になっていく。(了)



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