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【米国株】AIの次なる覇者を探る:エンタープライズAIに注目
「エヌビディア株はどこまで上がるか?」という問いと並んで、投資家の中で「次なるAIの覇者は誰か?」という疑問が浮上しています。本分析では、この重要な問いに取り組みます。
生成AI市場を形成する様々なカテゴリの中で、「エンタープライズ(企業向け)AI」に特に注目します。このセグメントは巨大なポテンシャルを秘めていながら、まだ明確な勝者が現れていない状況です。今後、AI投資テーマから利益を得る上で、このカテゴリが極めて重要になると考えられます。
エンタープライズAIの中でも、特に「データ活用による判断向上」のAI用途が本命になると考えます。この分野において、規模を持って取り組んでいる企業として、パランティア・テクノロジーズが浮上してきます。
パランティアのバリュエーションについては、現在のアナリスト予想を前提にすると割高感は否めず、注意が必要です。しかし、我々が見出した期待値がアナリスト予想にまだ十分に織り込まれていない可能性があります。テクニカル分析の観点からは、株価がブレイクアウトすれば「カップウィズハンドル」形成となり、強気シグナルになります。
これらの要因を総合的に考慮し、パランティア・テクノロジーズは今後注視すべき銘柄であると考えます。本分析では、エンタープライズAI市場の現状と、パランティアの位置づけについて検討していきます。
どこに着目するか:次なるAIの覇者を探る
生成AIの世界は急速に発展していますが、今後、その恩恵を最も受けるのは誰でしょうか?市場全体を見渡すと、いくつかの興味深い傾向が浮かび上がってきます。
下記に改めて、生成AIをとりまく主要企業をカテゴリごとにまとめました。
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ハードウェア・AIモデル・クラウドインフラ市場:プレイヤーは既に確立済み
AI半導体などのハードウェア市場、クラウドインフラ、そしてAIモデル開発では、既にプレイヤーは確立し、明確な勝者が現れています。エヌビディアを筆頭とする半導体メーカー、AWSやAzureなどのクラウドインフラプロバイダー、オープンAIやGoogleなどのAIモデル開発企業です。
ここでの投資の成否を左右するのは、市場の成長がどこまで継続するかという点です。
【このあたりにご関心があればこちらの記事をご覧ください】
チャットアプリ:着実に収益を積み上げるが、投資対象なし
ChatGPTに代表されるチャットアプリは、既に相応の収益を上げています。例えば、オープンAIの年間収益は、チャットアプリのサブスクリプション料金やAPI利用料を中心に、約80億ドルと推定されます。(報道にあった2024年の5ヶ月間の推定収益34億ドルを年間換算)
しかし、米国株の投資テーマとしては、リーダーのオープンAI、アンスロピック、AI検索のパープレクシティが非上場、投資対象が限られています。
オンデバイスAI:プレイヤーは明確だが市場の成長が鍵
スマートフォンなどのデバイスに搭載されるAIについては、主要プレイヤーがアップル(AIスマホ)、マイクロソフト(AI PC)になることは既に明らかです。ここでの焦点は、オンデバイスAIがユーザーに価値を提供し、新たな市場を創出できるかどうかにあります。
エンタープライズAI:ポテンシャルは大きいが明確な勝者なし
最後に、そして最も重要なのが企業向け(エンタープライズ)AIソリューション市場です。この分野は、AIを活用する本命と言える市場であり、そのポテンシャルは計り知れません。しかし興味深いことに、ここではまだ明確な勝者が現れていません。
つまり、エンタープライズAI市場こそが、投資調査の対象として最も興味深く、大きなチャンスが眠っている分野だと言えるでしょう。ここでの勝者を見極めることが、今後、AI投資テーマから利益を得る上で極めて重要になると考えます。
エンタープライズAI市場
エンタープライズAI市場は、大きく4つのカテゴリに分類できると考えます。
人員の置き換えによるコスト削減
既存ツールの一般的機能向上
データ蓄積
データ活用による判断向上
各カテゴリの特徴を挙げ、現状の分析を行います。
1. 人員の置き換えによるコスト削減
カスタマーサポートのAIチャットボット
文書からのデータ自動抽出・入力
製造ラインでのAI画像認識による品質管理
AI駆動の自動スケジューリング
分析: このカテゴリは本命の一つのはずですだが、まだ目立った収益化事例が見えてこない。
カスタマーサポートのAIチャットボットを提供する2社のコメント:
セールスフォース:現在は小規模な試行的な導入が多く、本格的な収益貢献は来年度以降になると見込む。ただし、需要は高まっており、生産性向上や業務効率化などの用途で活用が広がっている。
ハブスポット:インバウンドのサポート問い合わせを振り分けるチャットボットを導入しています。現時点では直接的な収益化よりも利用促進に重点を置く。
現段階では状況をフォローすべきカテゴリと考えます。
2. 既存ツールの一般的機能向上
文書等作成支援(マイクロソフト365 コパイロット)
コーディング支援
デザインコンテンツ作成支援
プロジェクト管理ツールのAIタスク最適化
分析: このカテゴリの収益化は厳しい状況にある可能性。
最も成功している事例の一つとされる、コーディング・サポートのGithub Copilotでも、年間収益は1億ドル規模に留まっているようです。
SaaS(サブスク型ソフトウェア)ビジネスモデルでは、激しい競争の中で顧客に継続的に使ってもらうために絶え間ない価値向上が必要ですが、生成AIはその一つの追加機能の枠を出ておらず、AIを導入したからといって意味ある追加料金の請求が難しい可能性があると見ています。
また、SaaSは席(人数)ベースで課金される料金体系が多く、AI活用によって人員が削減されると、結果、契約席数が減り収益へはネガティブになってしまいます。各社は提供価値に焦点を当てた、AI時代の新しい課金体系を検討しています。
SaaSとして最も期待の高い、マイクロソフトオフィスにAI機能を組み込んだコパイロットは、フォーチュン500企業の約60%に利用されており1万席以上の導入を行ったとしていますが、これがどの程度維持でき、業績に貢献するかを確認する必要があります。まだ大きな成長加速は見えていません。
3. データ蓄積
AIによってデータを活用するために企業のデータを一括して収集して蓄積
活用しやすいようにデータを整える
分析: 企業はAI活用に向けてデータを整えており、需要が見られる。
セールスフォースのデータ統合・蓄積サービスは全社の10%よりも高い20%超の成長を示しています。セールスフォースは、「多くの顧客が、活用されていないデータを抱えており、優れたデータ戦略がない」と言っています。
データ蓄積は有望な事業ですが、あくまでデータの収集・整理であり、AIを本格的に使用する前の段階です。
また、セールスフォースは、「顧客企業はデータのあるところでAIを使う」と言っていますが、この見方には疑問を持っています。データはあくまで顧客企業のものであり、顧客企業は手段とセキュリティが確保されれば、最も価値を引き出せる場所でデータを使おうとするはずです。
4. データ活用による判断向上
AIを用いた高精度な需要予測
金融機関でのAIによるリスク評価
顧客データのAI分析によるセグメンテーション
センサーデータを用いたAI予知保全
分析: このカテゴリが最も有望と考える。
AI活用により、個別企業の具体的な状況を踏まえた、付加価値の高いアプトプットが期待できる
AIによる、今までにはない分析の精度、スピード、切り口という新しい価値を提供
データ整備・分析人員を削減し、コスト削減にもつながる
しかしながら、多くの企業が「データ活用による判断向上」を自社開発で行おうとすると、下記のような点から結果的にコスト高という課題に直面すると考えられます。
長い開発時間が必要
技術的な先進性を保てないリスクを抱える
足りない社内のAI開発人員を補うためコンサルの導入が必要(例:アクセンチュア、IBMなど)
これを、ソフトウェアを使ったアプローチにより、短期間、低い導入コストで実現する、スケールある唯一の企業がパランティアです。
パランティア・テクノロジーズ
概要
パランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)は、2003年にPayPalの創業者ピーター・ティールによって設立されたアメリカのソフトウェア企業です。主にデータ統合と分析を行うプラットフォームを提供し、政府機関や民間企業の意思決定を支援しています。
生成AIを統合したソフトウェア製品:AIP
パランティアのAIP(Artificial Intelligence Platform)は、企業がAIとデータを活用した意思決定を行い、業務プロセスを最適化し、全体的なビジネス成果を向上させるための包括的なプラットフォームです。このプラットフォームは、既存のパランティアのデータ統合・分析機能と生成AIを組み合わせており、技術的な専門知識がなくても利用できるように設計されています。
主な特徴
包括的なデータ統合
企業内に散らばる構造化データと非構造データ(メール、PDF含む)の統合
企業特有の判断ロジックの組み込み
統合されたデータの生成AIによる効果的な活用
データアクセス権限の細かい設定
データ統合と分析に特化
AIモデル開発なしない。データ統合技術に強み
CTO Shyam Sankar 「大規模言語モデルのモデル自体は必然的にコモデティー化すると以前予想していたことが正しかった。」
AIモデルは顧客が選択して使用可能
革新的な営業手法:ブートキャンプ
AIPの販売促進のために「ブートキャンプ」を開催しています。企業からの参加者がパランティアのエンジニアと肩を並べて、短期間で、実際に企業のデータを使用した分析プラットフォームを構築します。その有効性を確認できるところから契約につながっているようです。
ケーススタディー
2024年6月に開催されたパランティアAIP Conferenceでは、数十のパランティアの顧客企業が自社でのユースケースと導入の成果を共有しました。その中で、登壇した日本企業を取り上げます。
損保ジャパン
パランティアのプラットフォームを使用して、データを活用した保険料算出の効率化、高速化、最適化を達成し、過去3年間で6,000万ドルの利益改善を達成し、今後3年間でさらに1億ドルの利益改善を見込む。
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富士通
パランティアのプラットフォームを使用して、ビジネスとオペレーションを変革。85%以上のシステムを接続し、100以上のアプリケーションを構築。1つのユースケースの例は、ハードウェア事業で、アラートシステムと需要予測を作成することで、たった3か月で年間コスト900万ドルの削減を達成。
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事業構成、業績動向
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政府と企業への売上が約半分ずつを占める。
政府:軍事、情報機関、法執行機関などが含まれる。これらの機関は、国家安全保障に関するデータの収集と解析にパランティアのソフトウェアを使用。
企業:顧客行動の分析や業務の最適化のためにパランティアのソフトウェアを利用。
「生成AIを統合した製品:AIP」と「革新的な営業手法:ブートキャンプ」により米国企業向け収益を大きく成長させている。
2023年12月期の四半期に米国企業向け収益を70%成長、2024年3月期には40%伸ばした。
2024年3月期、1年間で米国顧客企業は69%と急速に成長。
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パランティア:バリュエーション、チャート確認
結論:割高ではあるが、全く正当化できないことは無い。
【分析手法に関してはこちらをご覧ください】
PER分析:割高
成長性を加味しても市場平均よりも大きく割高
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予想PERは過去2022年以降最も高い水準
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DCF分析:アナリスト予想ベースでは割高、前提を少し引き上げれば正当化可能
アナリスト予想を使用:アップサイドはマイナス21%
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売上成長、将来の利益率の前提を引き上げ:アップサイド+7%
売上成長の前提:2026年まで21%
利益率の前提:2038年営業利益率39%
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アナリスト予想:株価はアナリスト目標よりも高い
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チャート(テクニカル分析):ブレイクアウトで「カップウィズハンドル」(強い買いシグナル)
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総合すると、割高感があり注意が必要なのは間違いありません。ただし、AIストーリー、次はパランティアという主張は、CNBCやBloombergのようなメインストリームでは全く見ないため、アナリスト業績予想も含めて、我々の見てきた期待はまだ織り込まれていないと考えることも可能です。
テクニカル分析では、ブレイクアウトすれば「カップウィズハンドル」が形成され、強い買いシグナルになります。
まとめ
生成AI市場が急速に発展する中、投資家の間で「次なるAIの覇者は誰か?」という問いが注目を集めています。本分析では、この重要な問題に取り組みました。
生成AI市場を形成する様々なカテゴリの中で、「エンタープライズAI」が最も大きなポテンシャルを秘めている。
エンタープライズAI市場では、まだ明確な勝者が現れていない。このため、今後のAI投資テーマにおいて極めて重要な分野となる。
エンタープライズAIの中でも、特に「データ活用による判断向上」が本命と考える。
この分野で大規模に取り組んでいる企業として、パランティア・テクノロジーズに注目。
パランティアのバリュエーションは、現在のアナリスト予想を基にすると割高感があり、注意が必要。
しかし、我々が見出した期待値がアナリスト予想にまだ十分に織り込まれていない可能性。
テクニカル分析の観点からは、株価がブレイクアウトすれば「カップウィズハンドル」形成となり、強気シグナルとなる。
以上から、パランティア・テクノロジーズは生成AIテーマの中で、今後注視すべき銘柄であると考えます。
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