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難聴の子をもつ先輩に会いに行って思った事

毎朝、何となくつけている情報番組。その中で耳が聞こえない子供たちの為の塾が紹介されていて、じっと見入ってしまった。
今まで深く考えた事の無い世界の話が急に身近に思えたのは、その数日前に久しぶりに会った先輩との会話が大きく影響していた。

私が新卒で入社した会社の大好きな先輩。4つ年上のその人は、私が入社2年目になる頃に中途入社でやってきた。スラっと長身で、白石麻衣さんとか桐谷美玲さん風の美貌に、社内がリアルにどよめいていたのは今でも忘れない笑
サバサバしていて男前でチャーミング!私のお姉ちゃん的存在で、私が退職する前も今も、可愛がってくれている。


そんな彼女は2人の娘を持つ母でもある。
4月、私の誕生日にお祝いのメッセージをくれた先輩とやり取りしていた時の事。
「実は今年に入って会社辞めたんだー!下の娘の耳が聴こえて無いみたいで、これから病院とか頻繁に通わないといけなくて。色々話したいし、またご飯いこ!」
サラッとした文面だったけど、私は衝撃を受けた。どれ位聴こえないんだろう、普段の生活は手話?詳しい事は分からないまま会いに行った。

先輩宅のインターフォンを鳴らすと、2人の娘ちゃんが揃って出迎えてくれて、元気に挨拶してくれた。先輩が手話で下の子に何か言っている。後から聞くと「お母さんのお友達」と言ったそうだ。
手話で会話している部分もあるけど、私の想像とは違っておしゃべりもできるみたい。その後のおしゃべりの中で、現在の技術の進歩と問題点を知る事になる。

結論から言うと、娘さんの耳は何も装着しなければ全く聴こえないそうだ。
生まれてから少しして、呼んでも振り向かない・大きな音にも反応しない事に違和感を感じたそうだが、最初の検診の段階で異常が見られなかった為様子を見ていた。その後やはり違和感が拭えず病院に行ったところ、聴こえていない事が判明。ショックもあったが、「やっぱりそうか」と思ったそうだ。母ってすごい。

そして今、娘さんは「人工内耳」という器具を付ける事で音が聞こえているという。耳に引っ掛けてある機械と、内側に埋め込まれている機械が連動する事で音が聞ける様になるとの事で、私はその存在を初めて知った。

この治療を受けられた事で、先輩の娘さんは音も聞こえる様になったし、今はトレーニング中だが、おしゃべりもできるようになっていくそうだ。
日頃は聾学校に通っていて、お友達との会話で手話も使う為、お家でも手話を混ぜて会話するとの事だった。
医学の進歩すごいな〜、という話の中、先輩が言った。
「うちはこの治療が受けられたから良かったんだけど、苦しいのは瀬戸際で治療受けられない子たちなんだよね。人工内耳の治療って皆受けられるわけじゃなくて、一定ライン越えないと受けられないの。実際うちの子もすごくギリギリの所だった。同じ学校に通っている子の中にも、治療を受けられなかった子たちが何人かいる」

そうか。お金の問題ではなく、治療するチャンスも限られたものなんだという事実に複雑な気持ちになった。この治療を受ける事ができれば変わった人生もたくさんあるだろう。

帰り道、聴こえない世界を想像してみる。
あー蝉すごい鳴いてる夏だなぁ、久しぶりに東京事変の落日聴こー、
それが聴こえない世界。だけど想像は所詮想像でしかない。本当の世界は本人にしか分からない。だけどいっぱい想像して、世界を見てみようと思った。

昔、自分が狭い道を車を運転していて、道の真ん中らへんを歩いている人がいた。
全然片側に寄ろうとしてくれない。なんで?と思う。でももしかしたらその人は車の音が聞こえないのかもしれない。
すれ違う時に少しぶつかった。「すみません」と言っても軽く会釈して通りすぎて行った。「感じわる〜」と思ったその人は、もしかしたら声が出ないのかもしれない。
自分の見ている世界が皆の世界ではない。日々生活していると忘れがちになるけれど、忘れそうになる度に思い出していこうと思った。

ちなみに冒頭で書いている耳が聞こえない子供たち専用の塾、素敵だなと思ったので、興味のある方は見てみて下さい。代表の方は聴覚障害のある両親の元で育ち、それをきっかけに事業を立ち上げたそうです。



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