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【シリーズ第8回:36歳でアメリカへ移住した女の話】

 このストーリーは、
 「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」  
 と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
 前回の話はこちら↓

 ココ・テイラーとメイヴィス・ステイプルに会えるぞー!!!

 会場に入ると、ココとメイヴィス、二人がステージで歌っていた。

 ・・・アンコールだった。

 滞在時間3分なり。
 椅子に座る間もなかった。

 再び車に乗り込む。
 発車してから気が付いた。

 帰り道がわからない・・・。

 聞きに戻ろうと思っても、前後に車がびっしり詰まっている。

 会場から大通りに出た。

 私には2つの選択があった。

 右折か直進だ。

 迷っている時間はない。
 直進を選んだ。

 はずれだった・・・。

 またまた薄暗い道へと突入する。
 今回は、会場から暗がりの方向に向かう車もあるので、ひとりぼっちではない。
 けれども、このまま行けば、皆はお家へ帰り、私は暗闇で取り残される。 
 どこかでUターンをしなければならない!

 しばらく行くと、一車線から二車線に変わった。
 Uターンに備えて右車線に入った。

 ・・・その瞬間!!!

 右車体が宙に浮き、ものすごい破裂音と金属音がした!
 態勢を取り戻し、バックミラーで後方を確認すると、私のタイヤのホイールキャップがコロコロコロコロ・・・

 なにが起こったんだ~!!!

 ・・・二車線になったと思った場所は、バスの停留所だった。
 街灯がなく、真っ暗だったので、まったく見えなかった。

 私の車は縁石に乗り上げ、タイヤはパンク、ホイールキャップが外れたようだ。 

 ここで車を停車し、ホイールキャップを拾いに行くか?
 歩道には、特に歩いているわけでもなく、黒人のお兄ちゃんが、ウロウロしている。
 道沿いの店の窓には、シューティングに備えて、鉄格子がはめ込まれている。
 ・・・拾いに行かないよなぁ。
 行きたいライヴは、まだまだいっぱいある。
 ホイールキャップは、あっさりあきらめた。

 問題はパンクだ。
 ガスステーションが目に入った。

 ・・・怖すぎる。

 けれども、この状態で帰宅できるとは思えない。
 そもそも戻り方がわからん。
 本気で困った。
 確か少し前にも困っていた記憶がある。

 私の前後を走っていた車は、右へ左へ、自宅のある方向へ消えていく。
 気付くと、周囲に走っている車はなくなっていた。
 ゼロ・・・またまた、ひとりぼっちだ。

 運転をしながら、スローな脳をフル回転して解決策を考えた。

 思い出した~っ! 
 唯一、私が知っている場所があった!
 コンサート会場だ!
 
 奇跡的に、スムーズに会場に戻ることができた。
 しかし、ショウが終了して30分も経っていないのに、駐車している車は一台もなく、あたりは静まりかえっていた。
 ・・・楽屋に乗り込んで、演奏者に助けを求めようか・・・
 と考えていたら、車留めでポーターをしていた4人の黒人男性を発見!
 
 間に合った~!!!
 
 「車がパンクしたので助けてください!」

 英語が通じたかどうかは不明だけれど、私の悲壮な顔と、パンクしたタイヤを見れば、すぐに状況はわかったようだ。
 トランクからスペア・タイアを取り出し、雪の降る中、タイアを取り換えてくれた。

 「寒いから中に入っとき」

 彼らは、私を車の中で待つように言った。

 優しい~💛

 と、感動している暇はない。
 私にはもうひとつ、英語でお願いしなければならないことがあった。

 小銭を恵んで欲しい・・・。

 私が使うハイウェイは、降りるときに1ドル75セントだったかな?出口で支払わなければならない。
 精算機といっても、バケツみたいな入れ物に、小銭を放り込むシステムなので、両替はできない。

 私は小銭を持っていなかった。
 会場はダウンタウンにあるはずだったので、帰りにガムでも購入して、小銭を作ろうと思っていた。
 けれども、サウスの会場の周りには、店なんてひとつもない。
 ダウンタウンに寄って、小銭を作ることもできたけれど、迷子+迷子+パンクで、エネルギーは枯渇していた。

 タイヤ交換が終わった。

 「ありがとうございました!皆で温かいコーヒーでも飲んでください!」

 20ドルを差し出した。
 躊躇しながらも、受け取ってくれた。
 次が問題だ。
 
 「すみませんが、小銭を頂けませんか?」

 「??????????????」

 4人全員がキョトンとした。
 
 やっぱりわからないよなぁ・・・。
 その時の私には、”ハイウェイの料金所で払う小銭がないので・・・”と、理由を説明して、お願いする実力がなかった。 
 20ドルを返そうとするのを阻止して、
 「20ドルはいらないから、クウォーターをください!」
 
 4人のおじさん全員が、ゆっくりと、顔を見合わせながら、小銭を出した。 

優しいブラックエンジェルたち

 なぜ小銭を欲しがるのかは理解していなかったと思うけれど、”このアジア人は小銭を欲しがっている”ということだけは、わかってもらえたらしい。

 タイヤをチェンジし、小銭を恵んでくれた彼らは、私の恩人である。

 会場を出ると、ダウンタウンに向う幹線道路があった。
 15分後には、ダウンタウンを通過していた。
 どうやって、迷子になったのか、未だにわからない。

 この日、ココとメイヴィスは観れなかったけれど、4人のエンジェルに出会えた。
 ありがとうございました💚
  
 


 

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