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おじいさん

 買物を終えて、カートを戻しに行くと、不機嫌そうな白人のおじいさんがいた。
 カートを取りたいのかな?
 取りたければ、いくらでもある。
 でも、何か迷っているみたい。

 「これ使う?」

 と聞くと、

 「いらない。小さいのを探しててん。ありがとう」

 おじいさんは、奥にあった、小さめのカートをちょうど見つけたところだった。
 ニコリともしないけれど、きちんとお礼を言ってくれたので、悪い人ではないようだ。
 
 「オッケー、Have a good day!」

 「ありがとう。君も、Have a good day・・・」

 仏頂面で、私を見ながらお礼を言った。

 そして、

 「・・・ハグしてあげる」

 と言って、私に近付いてきた。

 知らない人だし、ハグされるほどのことはしていない。
 コロナのこともあるし、機嫌悪そうだし、ハグをしたいわけではない。

 でも、なんとなーく、ハグして欲しいんじゃないかな?と思ったので、おじいさんとハグをした。

 おじいさんはジェントルマンで、触れたかな?という程度のハグだった。
 おじいさんの背中をポンポンと叩いて、

 「じゃあね!」

 と言って、別れた。

 なーんもわからない。
 けれども、おじいさんは寂しかったのかもしれないなぁ・・・と勝手に思った。

 パートナーが病気なのかもしれないし、いないのかもしれない。
 話をする相手も、特にすることもなくて、でも、お腹が空いたから、買物に来た。
 買物に来たけれど、カートもすぐに見つけられない。
 色々なことがおもしろくなかったのかもしれない。

 すべて、想像です。

 でも、おじいさんとハグをして、良かったな、と思った。
 
 おじいさんが、あの後、ちょっとだけでも、明るい気持ちになっていたら、嬉しいなぁ。

 実際には、なーんもわからないけれど、

 「おじいさんとハグをして良かった」

 と、一日中、ずーっと思っていた。

 おじいさん、ありがとう💛

 

 

 



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