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【シリーズ第10回:36歳でアメリカへ移住した女の話】

 このストーリーは、
 「音楽が暮らしに溶け込んだ町で暮らした~い!!」  
 と言って、36歳でシカゴへ移り住んだ女の話だ。
 前回の話はこちら↓

 シカゴのノースサイドで知名度の高いブルースクラブといえば、ホルステッド・ストリートに面して、向かえ合わせに建っているキングストン・マインズ(Kingston Mines)とブルース(B.L.U.E.S.)の2軒だ。 
 ご近所のよしみで、日曜日には1軒のエントリーで、2軒の店を行き来できるサービスもある。
 ガイドブックにも掲載されているので、観光客も多くやってくる。

 以前はクリスマスも正月も関係なく、365日営業していたけれど、コロナの影響でブルースは閉店、キングストン・マインズも週末だけの営業になってしまった。
 残念だ。 


 さて、ローザズ・ラウンジにしばらく通った後、私はキングストン・マインズに通い詰めた。
 ハイウェイを降りてからウェスト・フラートン・ストリートを直進、ホルステッド・ストリートを左折すれば、たどりつく。
 迷子の心配はない。

https://kingstonmines.com/?v=7516fd43adaa

 キングストン・マインズの素晴らしいところは、メインステージと、ノースステージ、2つのステージがあることだ。
 つまり、ひと晩で2つのバンドが楽しめる。
 午後7時にオープン、夜9時半から、各ステージで1時間交代、朝の4時まで演奏が繰り広げられる。土曜日は朝の5時までだ。
 客は2つのステージを1時間ごとに行ったり来たりする。
 平日は6ショウ、土曜日は7ショウ、真面目に最初から最後までいると、ミュージシャンはもちろん、客もクタクタになれる店だ。

 週末は、ローカルで人気のあるバンドが演奏するので、お値段も少し高めだ。
 平日は日替わりでレギュラーのバンドが演奏するので、1週間通えば、ノースで活躍しているローカルのバンドが、ほぼ把握できる。

 初キングストン・マインズは、もちろん午後9時半入店だ。
 初日でわかった。
 最初から最後までいるのは、過酷だ。

 数日通うと、ステージがおもしろくなるのは、夜中の2時を過ぎてから、ということに気が付いた。
 というのは、他のクラブで仕事を終えたミュージシャンが遊びに来て、シットインするからだ。
 それ以降は、12時を過ぎてから行くことにした。
 レギュラーの演奏を1ステージずつ聞いた頃に、他のミュージシャンがやってくる。
 ちょうどいい。

 1週間通って理解した。
 シカゴのミュージシャンの中にも、感動的に上手い人と、普通に上手い人がいる。

 その日のグループは、普通に上手い人たちだった。
 客もほとんどおらず、シットインするミュージシャンもいなかった。
 1時間ずつ各ステージを楽しんだし、帰ろうかなぁ・・・と思ったときだ。
 青いバンダナの男の子がステージに上がった。
 男の子といっても、30代後半だと思う。ブルース村では若手だ。
 ギターリストらしい。
 彼が、ワンフレーズ弾いた。

「きゃ~~~~~~~~~~~っっっ!!!」

 身を乗り出していた!
 この一週間で一番、いや、シカゴに来てから一番、感動的に上手い人だった!!

お気に入りのギターリスト発見!!

 素人の私には、上手く説明することはできない。
 けれども、彼が最初のフレーズを弾いた瞬間、部屋の中の空気が変わった!

 皆、お金をもらって演奏しているのでプロなんだけれど、本当に上手い人、スペシャルな人は、ステージの空気をガラリと変えることができるんだ!!!

 演奏を終えた彼の名前を、その日のバンドのシンガーが紹介した。
 「チコ・・・・」
 と聞こえた気がしたけれど、過去に「チコ」という名前を聞いたことがなかった。
 私が知ってるアメリカ人の名前は、トム、ジェイムス、マーク、マイケル・・・そんな感じだ。
 
 「この世に、”チコ”なんて名前の人はいないよなぁ・・・」

 自分のリスニング力をまったく信用していなかった。

 青いバンダナの彼は誰なんだろうなぁ・・・。
 ここに通っていたら、必ず再会できるはず。
 そしてシカゴには、まだまだ素晴らしいミュージシャンが埋もれているに違いない。

 楽しみだぁ💛




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