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菌とともに

昭和は何につけてもよく言えばおおらか、悪く言えばおおざっぱだった。
衛生観念も今ほど神経質ではなく、除菌の概念も一般家庭では、通常はさほど気にしていなかった。
身近な除菌石鹸といえば薬用せっけんミューズくらいだった。衣類用・食器用洗剤に除菌の文字はなかった。ときどき漂白剤を使うくらい。ファブリーズやリセッシュみたいなスプレーもなかった。

オーソドックスな界面活性剤入り洗剤で食器を洗い、水で湿らせたふきんでテーブルを拭く。(ふきんは定期的に漂白はしていた。)それだけのことを普通にしていれば家庭で食中毒も起こらなかった。最近のCMで、水洗いしただけのふきんでテーブルを拭くのは菌を広げていると言うが、私のような昭和を生きてきた人間は鼻で笑ってしまう。
と言いつつも除菌シートというものが登場して以来、ふきんを出すのが面倒な時に便利に使っているのもまた事実である。

私が小学生の頃なんて衛生観念があるにはあったが今と違い、なんかもうワイルドだった。
手洗い・うがいは学校でも指導されていたが、その手洗い場では水道の蛇口にネットに入れたレモン石鹸を吊るして何十人もの生徒が共有していた。
飲料水は学校の水道水を蛇口から直飲みだった。夏場は体育の後など私もごくごく飲んでいた。潔癖かもしれないが今それができるかというと、抵抗がある。蛇口に口は付けないとはいえなんかイヤだし、学校の水の安全性を疑ってしまう。
給水機型のうがい薬なんてものもあった。これは珍しいかもしれない。水ではなく適度に希釈されたうがい薬が出るもので、たまに業者が中身の補充に来ていた。
プールでは目を洗う専用の形の蛇口(洗眼器)があった。今ではかえって目に良くないと、なくなっているらしい。加えてプールに入る前に下半身を漬けていた塩素臭のきつい“腰洗い槽”も、今のプールはほとんど濾過装置があるために使われていないという。

掃除時間は、机の上に椅子を上げて移動させ、教室の前と後ろを半分ずつやっていた。埃のすさまじかったこと。黒板消しもマスクなしでパンパンたたいていた。ぞうきんも広い教室の汚れを吸い取り、バケツの水が真っ黒になっても素手で洗っていた。

私の通う小学校は、靴箱は各教室の廊下にあった。なので、玄関から靴を持って入り、靴下のまま教室までの結構な距離を歩く。これがなかなか汚れるのだ。家に帰って私の靴下の裏を目にした母に、「うわっ」と言わしめるほどだった。

今の感覚だと、はっきり言ってきたねー。
きたねーけどそれなりに健康に生きている。この程度では人体に健康被害はもたらされないのだ。子どもの頃に様々な菌と接することで免疫力がつき強くなるらしい。
その割に現在アレルギー体質で、埃や花粉に弱いことにやりきれなさを感じている。

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