見出し画像

韓国語マスターへの道(10)「詩人のことば」

原子力災害後、韓国語会話を練習するすべを失い、どうしようかと考えあぐねていたある日、福島市内のNPO法人主催で、韓国のト・ジョンファンという詩人の詩の朗読会に参加することになりました。

Googleで調べていただくとすぐわかりますが、ト・ジョンファン氏は政治家でもあり、文在寅政権では文化体育観光部という日本で言うと文部科学省の大臣を務めていたこともあります。

お察しのとおり、政治的には左派に属する方であり、軍事政権時代には何年も投獄されていたことがあるそうです。

ト・ジョンファン氏の詩そのものもすばらしかったのですが、当時(今も)様々な中傷に傷ついていた聴衆である福島県民の皆様からは、「投獄されるような絶望的な状況の中で、どのようにしてポジティブに考えれば、あなたのように元気に活動できるようになりますか」といった趣旨の質問が相次ぎました。

その時の、いくつか似た質問を聞いた後のト・ジョンファン氏のシンプルな答えがとてもとても印象的で、今でもよく覚えています。
자기가 자기를 버리면 안 돱니다
(自分で自分を捨ててしまってはダメです。)

正直、いろいろあって少し自暴自棄になりかけていた私には、本当に体にも心にも染み入るような言葉でした。絶望的な状況に置かれたことがある方から発せられた、シンプルかつ本当の言葉。

ほどなく、私は県内にある大学への出向を命じられました。
大学には何人か韓国人の先生がいらっしゃり、(当時4人いらっしゃいました)すぐに皆さんと知り合いになりました。
特に一番年長の先生がとても親切で、構内でお会いすると必ず声を挨拶だけでなく、声をかけてくださるようになりました。

出向となって2か月過ぎたころ、その先生から「尊敬語」の会話教えることができます。やってみますか?とのすばらしいオファーをいただきました。

これまで丁寧な表現の場合でも아요,어요体で基本的に話していた私に、ついにもっときちんとした尊敬語を学ぶチャンスがやってきました。

次は、その親切な先生からどのようにレッスンを受けたのか書いてみたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?