「プリンタニア・ニッポン」を全力でオススメするnote
「プリンタニア・ニッポン」は良いぞ。もちもちだぞ!
貴方も読もう、プリンタニア・ニッポン!
(雑に要約するとこれが言いたいだけ)
これはイースト・プレスのWebメディア「マトグロッソ」で好評連載中の漫画「プリンタニア・ニッポン」にドボンした人が書いた推薦記事。少しでも同好の士を増やしたい願いで出来ています。
もしこの文章が貴方とプリンタニアの架け橋になったのなら、書いた人はとても喜びます。
作品情報
作者:迷子
出版社:イースト・プレス
掲載サイト:マトグロッソ、LINEマンガ(3巻まで掲載のみ)
発表期間:2019年1月~ (連載中)、既刊3巻(2023年11月現在)
ネタバレ厳禁の方向け
作品のあらまし
たぶん、いつかの未来、日本みたいなどこか。
地形設計士の青年・佐藤が生体プリンタで柴犬を作り出そうとしたところ、出てきたのはもちもちの不思議生物。
生体プリンタの設計ミスにより無数に出力されたこの生物は『プリンタニア・ニッポン』の学名が付けられ、新種生物として認定されることに。
佐藤は出力されたプリンタニアに『すあま』と名付け、手探りの飼育を始めるのだった…。
オススメポイント
とにかくプリンタニアが可愛い! スンとポーカーフェイスを保ちつつも、もちもちでプリプリ、柔らかくて温かいプリンタニアたち。主役の『すあま』をはじめとする多数のプリンタニアが1ページに一度はモチモチと愛らしい仕草を見せてくれます。眺めているだけで癒やされるマンガ体験を貴方に。
近未来ほのぼの日常系 生体プリンタのほか、操作自在のホログラフィック・ディスプレイ、何でも作ってくれる自動キッチン、ちょっとポンコツなコンサルティングAIなど、愉快なガジェットに囲まれて暮らす佐藤たち。現代と地続きのゆるさのある日常が描かれます。
意外と骨太のストーリー 一話のページ数は少ないものの、丁寧に張られた伏線を回収しながらストーリーはゆっくりと進んでいきます。ハードめSFファンでも十分に楽しめるSF(すこし・ふしぎ)。
プリンタニアに癒されるも良し!
お気に入りのキャラクターを探すも良し!
世界観を考察してみるも良し!
多様な楽しみ方の出来るプリンタニアワールドをぜひ、お楽しみください。
第一話はこちら↓
多少のネタバレは構わない人向け
作品のあらまし
舞台はおそらく、人類が一度滅びた遠い未来の地球。
旧人類末期の混乱で、地上は汚染物質に満ち、人を分解・回収して廻るロボット『残兵』の徘徊する危険な世界になっていた。
現行人類は外界から僅かに守られた壁の内側こと『中央』を拠点に、『猫』たちの評議会の管理のもと、種の保全と継続的な進化の義務を課されて暮らしている。
地形設計士として中央で暮らす青年・佐藤46は生体プリンタで柴犬を作ろうとしたが、出力されたのは新種生物『プリンタニア・ニッポン』だった。そのプリンタニアを『すあま』と名付けた佐藤は手探りの飼育を始める。
コミュニケーションが不得手な佐藤は今まで幼馴染の塩野1以外に友人がいなかったが、プリンタニアたちと関わるうちに瀬田8や遠野70といった友人知人が増え、世界が広がっていく。
オススメポイント
やっぱりプリンタニアが可愛い!
もちもちした手触りで、びっくりすると固くなって、リラックスすると液体のようにとろけるプリンタニアたち。彼らはいつも一生懸命、大好きな人を守ったり、仲間を助けようと健気に奮闘しています。
暗めのシーンでも、画面の至る所で活動するプリンタニアたちの愛らしい仕草に癒やされる、それがプリンタニア・ニッポン。
読んだら自分も欲しくなる、生活改善コンサルタント
佐藤にはプリンタニアとガジュマル以外にも同居人が居ます。それが生活改善コンサルタント、室内を主な活動範囲とする高度AIです。評議会から人類ひとりひとりに配属されてサポートと監視を請け負っており、対象者に応じて性格が変化します。
佐藤のコンサル・nn266e38はちょっとドジなお兄さんのような性格。
コンサルは話し相手から食事メニュー・体調管理、留守中のすあまの遊び相手までこなしてくれ、物理ハンドを使って掃除もしてくれます。高級な物理ボディを使えば屋外でも活動可能。
欲しい。自分も管理して欲しい。そんな感想を持たれる方も多いのでは?
変わった風味のポストアポカリプス・ディストピア
評議会に生体信号を記録され、監視猫に交友関係を把握され、コンサルに素行のすべてを見張られ、定期的に精神テストを受ける人類。
室内には名作ディストピア小説『1984年』をオマージュした"Big cat is watching you."のメッセージ。いっそ清々しいくらいのディストピア社会が物語の舞台ですが、作中人物は皆けっこう明るくこの状況を受け入れている様子。
猫たちは確かに人類を監視しているものの、怪我をすれば助けに来てくれるし、トラウマに苦しめばリハビリ施設へ連れていき、過労気味の人には仕事を斡旋せず、休暇を勧めます。意外とホワイト社会?
ストレス負荷の高い精神テスト。でも、クリア条件は不当な評価に対して怒りを示すことだったりして、無理難題というわけでもない様子。何だか妙に人間味のあるディストピア。
旧人類は滅び、外界は汚染と残兵の脅威にさらされた世界。登場人物は皆、この一見ディストピアな社会を仕方ないものとして明るく受け入れているのかもしれません。
作中のキャラクターたちは世界の成り立ちに関する情報を簡単なレベルで認識しているのですが、もちろん読者にはそんな情報はありません。
そのギャップからくる感覚はまさにセンス・オブ・ワンダー。謎に対する回答が開示されたときの驚きも魅力のひとつ。
可愛いプリンタニアのゆるさと存外ガチなポストアポカリプスSFの同居する奇妙な世界観を楽しんでみませんか?
プリンタニアだらけの工場跡地に行く回はこちら↓
ネタバレどんとこい、核心を知りたい人向け(ほぼ考察)
作品のあらまし
舞台は我々人類が迷走の果てに世界を壊し、ほぼ絶滅した大破壊からおそらく数百年後の未来。
地球と思われる惑星の地表は汚染され、防護服や壁で守らないと生物は活動出来ない環境になっている。加えて、外には現行人類を排除対象とみなす危険なロボット『残兵』が自動増殖しながら徘徊している。
旧人類が滅んだあと、世界は『大きな猫』率いる評議会の管理のもと、男性のみからなる現行人類の暮らす場所になっている。人類は環境再生と旧人類の遺物を収集する『開拓』と知的労働者層の暮らす『中央』に分かれつつ、それなりに協力し合って暮らしていた。
主人公の青年・佐藤46は現実および仮想空間の地形設計を専門に受け持つ地形設計士。地道な貢献が認められ、念願の犬を飼育できる評価レベルに到達した佐藤は、ニューチノー社の生体プリンタで柴犬を出力しようとする。が、エラーにより出力されたのは新生物プリンタニア・ニッポン。
偶然発生したように見えるプリンタニア。しかしそれは現行人類の安定的な繁栄を願うニューチノー社CEO・高城11の思惑によるものだった。
自らが生み出した生物の可愛らしさに暴走する高城11。
爆発的に活躍の場を広げるプリンタニアたち。
佐藤46を守りたいプリンタニアすあま、全世界の美味を探求したい元気なそらまめ、モフモフのもなか。
佐藤の幼馴染である天才発明家・塩野1、開拓から事故による特進で中央にやってきた繊細な青年・瀬田8、戦闘能力の高い外界の遺物採掘家・向井62、プリンタニアに詳しい獣医の遠野70、謎に満ちた彼岸管理人の永淵。
プリンタニアと関わるうちに、単調だった佐藤46の日常が少しずつ変わっていく…
オススメと考察ポイント
たとえ何が隠されていてもプリンタニアは可愛い!
ニューチノー社元CEO・高城11は非常に高レベルの世界の秘密を知り、『大きな猫』とも対話できる重要人物。
そんな彼が人類の存続の支えとして生み出したらしきプリンタニア・ニッポンには隠された能力がいくつもあります。例えば…
電脳空間と親和性が高く、アバターをかなり自由に変化させる。サイズ可変。
ストレス値の高い人間に反応して寄り添う。
不干渉壁を破壊する植物型生体兵器に反応。
人の精神に干渉して夢を共有。
果ては宇宙空間の変化を捉えているフシまで。
獣医の遠野ですら知らないブラックボックス情報だらけのプリンタニア。世界の秘密に精通している永淵が『プリンタニアの性質は不思議だね…(略)…これとよく似たものを知っているよ』と告げており、どうやら不穏な秘密がありそう。
プリンタニア・プランでは様々な特性を持つプリンタニアを人為的に出力しています。外界の環境浄化にはじまり、色々と試している様子…。
でも大丈夫。高城11が彼らを溺愛しているのは事実だし、プリンタニアたちが可愛く健気なのも揺るがぬ真実なのです。
つまり、やっぱりプリンタニアは可愛い!
現行人類って何?
今のところ男性のみ登場。背景を見ても男性しかいませんね。
幼少期からコンサルによって養育されている。親は存在するのでしょうか?
大人と子供は住む場所が分けられており、簡単には行き来できない仕組みになっています。子供は『スクール生』と呼ばれ、1と2のスクールがあるようです。このあたりの話は4巻収録予定。
遠野や継枝(回顧祭や彼岸で出会う文化史研究者)の言葉から、現行人類は原罪のようなものを負っており、償いの意識を持っていることが示唆されます。
知れば知るほど不穏な情報が出てくる現行人類。作中人物はどうしてそうなったのか、スクールで教わってある程度知っていたり、評価レベルによっては機密が開示されている風なのですが、いかんせん読者には分からないことが多すぎる。
もしかすると、現行人類は生体プリンタで出力した旧人類のコピー体なのかもしれません。名前に付いてるNo.が何人目かを示しているとすれば、佐藤は46番目、塩野は1番目になるのかな?
実際、彼岸深部で断片的に聞かされるニュース(44話)によると、旧人類はDNAを登録・保管していたみたいなんですよね。さらに侵略者の存在も示唆されているので、現行人類とは事故により旧人類を滅ぼしてしまった生命体が人類のガワを被って償いをしている姿なのかも…という怖い妄想すら成り立ってしまう。考えてみると結構ディープなプリンタニアワールドなのでした。
残兵って何?
外界の開拓地に出没し、国民No.の提示を求めてきて、提示がないと回収(排除?)してしまう自律型ロボットのような何か。自力で工場を建造して勝手に増えるらしいので、それはもう生物みたいなものでは?
大きさは数メートルの大型から蜘蛛サイズの超小型まで。見た目もさまざまで、年代によって変化しているようです。
現行人類に国民No.を持つ者はいないため、誰しも回収対象になり得ます。かつては旧人類を守護していたことが示唆されており、『BLAME!』のセーフガードに似た存在なのかも。(ネット端末遺伝子がないと襲ってくるやつ。面白いのでBLAMEも読もう)
残兵はかつて『マリヤ』を守護していた『ハリス』を敵と認識しており、ハリスに似たものがあると襲って来ます。指定された作戦行動が阻害されると対象の殲滅行動に移行する特性もあるようです。
人類がいなくなった後も稼働し続ける人類保護機構。旧人類は何と戦っていたんでしょうね?
信仰の対象? 人類の始祖? ハリスとマリヤ
プリンタニア世界では宗教は機能していないようですが、祈る対象があるとしたらハリスとマリヤがそれに該当する様子。
断片的な情報によると、マリヤはかつてハリスに守護されていた存在。ドーム型の居住区で暮らし、お菓子を作ったり木登りをしたりしていたが、外界の気候が激しくなる『荒期』に残兵に連れ去られた、とのこと。
彼岸には『回収の慰霊公園』なる場所があり、残兵に回収された者が出ると『マリヤの碑』にお供えをする風習があるので、現在ではおそらくマリヤとは喪われた存在の象徴なのでしょう。
現行人類は幼少期からハリスとマリヤの物語を絵本などで読み込んでおり、大ファン(遠野や瀬田)から普通に好き程度の者(塩野など)までさまざま。子供(スクール生)は毎年『凪の劇』でハリスとマリヤの物語を演じるそうです。
ハリスは超高性能の自律AI搭載ヒューマノイドと思われる存在。マリヤ亡き後、猫の地下施設で眠りについており、数年に一度一般公開されるようです。けっこう高倍率なので見るのは大変らしい。
コンサルたちの人格の核はハリスのものが使われており、仮想空間のアバターにハリス型のデザインを用いる人も多いのだとか。
ハリスとマリヤという名からはハリストス(Χριστός、ギリシャやロシア語でキリストのこと)と聖母マリアを連想します。もっともマリヤが女性という保証もないんですけど!
まだまだ気になる、ハリスとマリヤ。
彼岸と此岸
佐藤たちが普段暮らす此岸に対し、彼岸は仮想空間上に構築された世界。佐藤たちも電脳空間へダイブすることで簡単に接続出来ますが、彼岸の真骨頂は肉体の死を迎えた後にあります。
なんと、現行人類は肉体が死んでも精神はしばらく活動を続け、その期間内に移行手続きを取れば彼岸で生き続けることが可能なのです! 肉体は失われますが、一種の不老不死が実現しているんですね。
(彼岸という名称とグレッグ・イーガンのSF作品にある電脳空間上の不老不死の取り合わせにテンション爆上げ)
彼岸の人々もけっこうハッピーに暮らしているようで、あちらにはあちらの仕事があり、此岸の生活を支えています。例えば食事のレシピは先に彼岸で試作されるらしく、バリエーション豊かみたいですね。
残兵に回収されると彼岸への移管が出来なくなり、不老不死の枠組みに入ることが出来ない…つまり永遠の別れになるために現行人類は酷く回収を恐れています。知人が回収されたとき悲しみに暮れるのは、本当の別離が訪れるからなんですね。
彼岸は現在も拡張中。まだ未定義の空間から夜になると声が聞こえるとか、謎の人影を見かけたといった怪異譚も彼岸の住人の間で囁かれています。
彼岸には管理人が複数人おり、彼岸空間内を自在に移動して保守管理に努めています。彼らは彼岸深部に眠る世界の秘密についても相当な知識を有しているようです。相当な変わり者でないと耐えられない職業とのこと。
彼岸深部には滅びた旧人類の残滓が彷徨っています。人類を守るために生み出された『大きな猫』が関与しているとのことですので、猫は彼岸という精神データシステムに旧人類の断末魔をコピーして保存しているのかもしれません。
プリンタニア世界の謎はまだまだたくさんあります。旧人類の一部は地球外に脱出していたようですが、彼らはその後どうなったのか。猫たちの目的は何か。プリンタニア・プランは何を目指しているのか?
尽きぬ謎を考察しつつ、ゆっくりと進んでいくストーリーを楽しむのもまた一興。
貴方も入ろう、プリンタニアの沼。
個人的好きエピソード
5話:反省穴掘削機のエピソード。反省するすあまの「悔いっ」の可愛らしさ、漫才のようなオチの面白さが好き。
6話:すあま、病気になる。病に倒れたすあまと看病に奔走する佐藤の心の触れ合いがグッと来るんですよ…
11話:ひざしにとける やわらかさ、ふれればとりこ もちのはだ、ゆけ すあま。
残兵騒動:みんなが協力して残兵対策に乗り出す展開が熱い。動くハリス(デコイ)が見れるのはここだけ! レジェンドもちにお願いする跡地プリンタニア諸氏の頑張りが可愛すぎてたまりません。
33話:予防接種をしよう。遠野さんの注射テクに対するすあまの反応が可愛すぎる!
彼岸騒動:長編ストーリーはやっぱり好きです。瀬田君が異様に慌ててる理由が最初分からなかったのですが、行方不明になったプリが瀬田君にいつもくっついている瀬田大好き個体(小)なことに気付いたら感情移入がぐっと深まりました。永淵の捉えどころのない振舞いも好きです。(考えてみると、瀬田大好き個体は作者さんの裏話で解説されたネタなので、本編を読んでいたら気付かないのも当たり前ですね?)
まだまだ語りたいし、なんなら全話コメントしたいくらいですが、今回はここまでにします。
お読みいただき、ありがとうございました。
よりディープな楽しみ方
単行本は紙派? それとも電子派?
プリンタニア・ニッポンの単行本は紙媒体と電子版があります。
これは違いが気になる方のためのインフォメーション。
単行本の書き下ろしは表紙カバー・本体表紙・巻末おまけ漫画1(プリンタニア編)・おまけ漫画2(人間編)。
おまけ漫画1はすあま、そらまめ、もなかがそれぞれ思っていることを語るプリンタニア漫画。
おまけ漫画2は幼少期の佐藤と塩野、瀬田の開拓編、幼少期の遠野と向井のエピソードが語られます。必読。
2巻以降は作者がツイッターその他で公開している描き下ろし四コマなどが追加されています。
紙媒体は初版だとおまけが付くこともあり、しおりやシールが封入されています。3巻のみAmazon限定版があり、ミニクリアファイルが付属します。
電子版は基本的に紙版の内容は完全網羅しており、追加の電子限定特典があります。内容は紙版未収録の作者ツイッター描きおろしで、8Pくらいあります。
細部までプリンタニアを愛でたい方には紙版がおすすめ。じっくり見ると新たな発見も!
作者ツイッターXを見よう
プリンタニアの作者・迷子氏のツイッターXでは頻繁にプリンタニアの落書きや裏ネタ、追加漫画が公開されています。どれも必見なのでチェックしよう!
第一話で出来たてのすあまを執拗に欲しがる塩野のサイドストーリー。すごく友達想いなことが分かる。
おてて つめたい。だた可愛いだけの一枚。可愛い。
毎回更新の前には告知イラスト有り。本編と繋がる重要なネタだったり、あんまり関係なかったりする。
瀬田くん大好き個体・大中小はこちら!漫画でもしばしば登場している。
まだまだたくさんあるプリンタニア設定情報。過去の分は比較的最近のものは作者HPで閲覧出来ます。こちらもオススメ!
グッズあれこれ
プリンタニア・ニッポン、実はそこそこグッズが出てます。時期によって在庫がまちまちなのが悩みですが、すあまぬいぐるみ可愛いのでオススメ。
そらまめぬい、再販待ってます。
またポップアップコーナーしないかな…
(前回開催時はプリンタニアの存在を知らなかったんだ)
プリンタニア・プランTシャツはいつでも買えるぞ!
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?