[毎週ショートショート] 疲弊

私は確実に精神を病んでいる。

咳が出て肺が潰れそうだとか、八十度の熱が体を焦がしたとか、皮膚が爛れて虫の餌になったとか、人から見て分かるものではないのだけれど。

それはここ一ヶ月、夜中に同じ夢を見ているからそう思うのだ。肌色を露出させた寂しい課長の頭がパックリと割れ、中から現れたドローンが私の住む三階、角部屋へと飛び立つ夢を。

繰り返された夢はいつしか現実になる。物語の世界から抜け出せず部屋に引き篭もるフリーターや、ホストの沼に落ちる女子たちのように、私は会社で課長と目を合わすことができない。いつ、その頭からドローンが飛び立ち、私の部屋を覗くのか、気が気でならない。

同僚に、私の精神が病んでいることと、原因となっている夢を事細かに伝えれば、笑いで吹き飛ばされるだろう。飲み会を通してその噂は伝播していき、ついに課長にたどり着いた時、彼の頭蓋から現れるドローンは、もはや数台ではすまなくなる。

私は、疲れている。課長からドローンが飛んでくるはずなどないのだから。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?