[短編] 卵が割れた

手が滑って床に卵が落ち、割れた。割れた卵のかけら、一つ一つに名前をつけた。一番大きいのを由美、小さくて細長いやつを康太郎、裏側に白い膜がついたやつをジェニファーとした。いくつか名前をつけ、すぐに飽きて、何をしているんだ自分は、と頭を抱えた。そばに置いてあった布巾で黄身を吸い取り、テイッシュを持ってきて床に張り付いた白身と殻を摘んだ。親指と人差し指の間に、ジェニファーの子供ができた。私は小さく、おめでとう、と呟いた。

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