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30:2のCPRって、どこが決めたの?

はじめに

救急処置を行う上での根拠って何?
30:2で胸骨圧迫と人工呼吸を行うなんて、どこの誰が決めたの?

こんなこと、あまり普段の仕事では意識することはないかもしれません。
しかし、我々が最良の医療を提供すべく活動している背景には、さまざまな組織がエビデンスに基づいたアプローチを行い、ガイドラインを示してくれています。

今回はその一部を紹介します。

ILCOR(International Liaison Committee On Resuscitation:国際蘇生連絡委員会)

ILCOR(International Liaison Committee on Resuscitation)は、心肺蘇生(CPR)に関する国際的なガイドラインを策定する非営利組織です。ILCORは、世界中の専門家が集まって構成され、心肺蘇生に関する情報を収集し、最良の実践を促進することを目的としています。

ILCORの歴史は、1992年に始まります。当時、心臓蘇生については、国ごとに異なるガイドラインが存在し、共通の基準が欠けていました。そのため、アメリカ心臓協会(AHA)などの各国の組織が、ILCORを設立しました。

ILCORは、世界中の専門家が集まって構成され、心肺蘇生に関する最新の科学的研究をレビューし、心肺蘇生の最適な実践に関する国際的なガイドラインを策定しています。ILCORが発行するガイドラインは、各国の蘇生術に関連する組織が採用することが多く、世界中の医療現場での蘇生術に大きな影響を与えています。

蘇生術、心肺蘇生は以下の、BLS(Basic Life Support:1次救命処置)、PLS(Pediatric Life Support:小児1次救命処置)、ACLS(Advance Cardiovascular Life Support:2次救命処置)を包括して記述しています。

AHA(America Heart Association:米国心臓協会)

AHAは「American Heart Association(アメリカ心臓協会)」の略称です。

AHAは、心臓と血管疾患の予防、治療、健康管理に関する情報提供や研究などを行う非営利団体です。心臓病、動脈硬化、脳卒中、高血圧、肥満などのリスク要因に関する健康教育を提供しています。

AHAはこの全世界に通用する蘇生法ガイドラインを出版物として6年毎(1980年、1986年、1992年)に改訂しながら、それぞれの時代にマッチした最新の蘇生法を紹介しています。

その後、AHAのガイドラインに国際性を持たす作業をILCORとAHAの協同作業により行われ、8年間かけてガイドライン2000の出版となりました。その後は5年ごとにガイドラインを更新し続けています。


JRC(Japan Resuscitation Council:日本蘇生協議会)


Japan Resuscitation Council(JRC)は、日本において蘇生術に関連する情報提供や研究などを行う非営利団体です。JRCは、心肺蘇生の普及、向上に向けた活動を行っています。

JRCはRCA(アジア蘇生協会)の一員として、ILCORに加盟しCoSTRの作成に正式メンバーとして参画している。
CoSTR (Cardiac Arrest Survival Targeted Review) は、心肺停止に関連する研究や治療法に関するレビューシステムである、心肺停止に関連する研究の最新の情報を整理・分析することにより、心肺蘇生に有効な方法を提供することを目的としています。

その後、CoSTRを基に、日本の地域性を考慮しJRC蘇生ガイドラインが作成され、出版されいます。
日本における心肺蘇生は、このガイドラインに沿って実施されています。

最後に

これらのガイドラインを知っておくと、現在のトレンドが掴めたり、実際に行なっている処置のエビデンスや科学的コンセンサスが理解できるかと思います。

読んでいて面白い部分もあります。
1件のコホート研究によると、15:2のCPRを受けた傷病者より、50:2のCPRを受けた傷病者の方が生存率が高かったという結果も出ていたりします。

読み込んでみると、いがいと新たな発見があって面白いかも知れません。

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