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SI vs プロダクト エンジニアのキャリアパスを考える

 自社プロダクト開発、SI、SES、とエンジニアの市場価値の高まりとともにエンジニアのキャリアも多様化しています。今回は、SIと自社プロダクト開発の両事業をもつ株式会社テンダの事業部長二人に、「プロダクト開発エンジニア」と「SIエンジニア」のキャリアパスとその違いについて徹底討論していただきました。

ビジネスプロダクト事業部 富澤和宏
編集業務からのキャアリアチェンジでエンジニアを目指しテンダに入社。テンダの自社プロダクトを統括するビジネスプロダクト事業部の事業部長。SIの事業責任者経験もある。

◎ビジネスプロダクト事業部について
ビジネスプロダクト事業部の業務内容は、自社プロダクトおよびクラウドサービスの開発、保守、運用。事業部の目指すゴールは、ホワイトカラーの「ワークスタイル変革」の為のソリューションプロバイダーとして、顧客にとって不可欠なサービスを提供し、長期的な戦略パートナーとなっていくこと。主力商品は、「Dojo」「Dojo Sero」など。

ITソリューション事業部 髙木洋充
バンド活動、植木屋、ADなどの異色の経歴から27歳でテンダに入社。プログラマー・SIエンジニア・PMというキャリアを経て現在はITソリューション事業部の事業部長を務める。

◎ITソリューション事業部について
SIとして、お客さまの課題を解決するITソリューションパートナー。顧客に対するコンサルティングなどを通じて課題を発見し、お客様が気付いてる課題はもちろん、見えていない、気付いていない課題もテーブルに上げ、システムの力によって「業務改善」し解決する事が主務。


エンジニアとしての技術を磨ける人・磨けない人

 そもそも前提として、エンジニアとして「伸びていく人」にはどのような特徴があるのか。エンジニアとして長いキャリアを積んできた二人に、特徴を聞いてきた。

富澤:
「やっぱり技術を磨ける人に共通しているのは、”新しい技術や情報に対してどれくらいアンテナ張っているか”だと思うんです。一つのプロジェクトを進めるにあたって、効率的に業務を行うためのノウハウを持っているか・持っていないかで全く進め方が変わってきます」

髙木:
「たしかにそうですね。加えて、ただ技術を身につけることだけを目的とするのではなく、その技術で何が出来るのか、何を成し遂げたいのかをイメージできる人は強いと思います」

富澤:
「あとは、勉強会や交流会で他のエンジニアと関わる機会を意図的に作れる人。こういう、エンジニアとしてのマインドは、プロダクト開発でもSIでも変わらないんじゃないでしょうか?」

髙木:
「そう思います。”技術を高めよう!”というだけでお客様からお金はもらえないんですよね。技術の先に何を成し遂げるのか、ということを考えてビジネスをしていかないといけない。技術の先を見据えられる人じゃないと、逆に技術がついてこないんです」

富澤:
「例えばテンダで活躍してるエンジニアは、すごくコミュニケーションやチームワークを大切にしてるなと思います。個人で技術研鑽するだけじゃない」

髙木:
「ちゃんと自分の考えを持ってコミュニケーションを取れる人は強いですよね。たとえば何かを質問するにしても、自分で3つくらいの選択肢をもって質問しにいける人は伸びます」

富澤:
「あとは、ちょっとしたことを周りに相談して抱え込まないことも案外重要だと感じますね。たとえば、ビジネスプロダクト事業部ではスムーズなコミュニケーションのためにDiscodeなどの音声チャットツールを使用します。少しの気付きや気軽な雑談から、良い連携が生まれています」

 コミュニケーションが重要といえど、求められるコミュニケーションはエンジニアの主務によって異なる。たとえば、対社内へのコミュニケーションと、対社外へのコミュニケーションは全く性質の違うものだ。

髙木:
「SIとしてお客さまの課題を発見するコミュニケーションと、社内の気心知れた相手と議論しながら課題を見つけるコミュニケーションってやっぱり全然違いますよね」

富澤:
「SIとプロダクト、両方経験したからこそ、その違いはとても感じます……。
例えば、自社プロダクトでは”お客さまと直接話す”経験に関しては、SIほどは積めないんですよね。もちろん展示会や営業と同行する際にお客さまに会って反応を聞いたり、売上の数字から市場の反応を分析することは出来ますし、それはすごく大切にしています」

髙木:
「SIとしての仕事は必ずお客さまとのやりとりが発生しますからね。コンサル的な課題発見・ソリューション提供能力も、打ち合わせに出るうちに伸びていったりします」

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プロダクトエンジニアに向いている人とは?

 SIを経験後、プロダクト事業部の事業部長として多くのエンジニアを見てきた富澤。自社プロダクトに携わることで、どのような技術が伸ばせるのか、どんなキャリアが描けるのかを深堀りする。

富澤:
「自社プロダクトのエンジニアをやる上で一番のメリットは、”技術選定を自分たちで出来る”ことですね。自社のプロダクトを自社の責任で開発するからこそ、エンジニアが取り入れてみたい最新技術を活用することもできる。そういう意味では挑戦がしやすい環境です。

加えて、新しいものを作る時や既存プロダクトの新機能追加に“企画から携われる”、というのはエンジニアにとって経験値・市場価値を上げることに繋がりますし、その分担当プロダクトに愛着がもてて、やりがいにもつながります。

SI業務では、既にお客さまから依頼を頂いてから走り出すことが多い。企画段階から練り上げ、トライしてみたい技術を取り入れる……という意味では、SIよりも自社プロダクトエンジニアのほうが柔軟にできます」

髙木:
「そうですよね。SIとして働くときは、サポートはしますが当社が主導で企画を作ったり、業界に浸透してない最新技術を導入することは機会が少なかったりします。
もちろん、お客様に対して最新の技術を提案することもありますが、やはり社内の方が導入障壁は圧倒的に低いですね」

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 一方で、対社外のコミュニケーションスキルに関しては、自社プロダクトの開発経験だけでは補いきれないという。

富澤:
「やっぱり長期的にキャリアを考えると、お客さまと直接やりとりをして折衝する経験はあった方がいいです。もちろん、社内の仲間と連携しディスカッションを通してモノづくりをする経験も価値がありますが、要件定義をするためにお客さまと一緒にベストな方法を模索したり……ということは基本的に少ないです」

髙木:
「ただ、自社プロダクトは直接お客さまの反応が見られるのはいいな、と思います。商品が売れているということは、お客様から愛されているということなので」

富澤:
「そうですね、だからこそプロダクトエンジニアに向いているのは”自社プロダクトへの想いが強い人”だな、といつも実感させられます。」

 また、プロダクトエンジニアを経験した後のキャリアパスに関しては、いくつか道しるべがある。

富澤:
「まずは、開発責任者ですね。PM・PL、もしくは運用保守の経験を経て、いずれはプロダクトの総責任者として企画に携わっていくことが出来るようになります。また、プロジェクトの原価管理・労務人事管理などの経験を積むと、”開発部門のリーディングメンバー”としてのキャリアも歩むことが出来ます」

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SIエンジニアに向いている人とは?

 SIで磨けるスキルは、やはり「対社外コミュニケーション」だ。SIとして長年テンダで開発を続けてきた髙木は、SIで積むキャリアの魅力をこう語る。

髙木:
「お客さまとの折衝ができるようになる、と言う意味で、コミュニケーションスキルはすごく伸びていきます。テンダの場合、SIのゴールは”顧客の課題を解決すること”です。その都度違う、お客さまにとっての最適な技術を選び、ソリューションを提供する経験は積んでいけますね」

 具体的に「課題解決としてのSI」というのはどのようなことをやっていくのか。

髙木:
「いわゆるただの”開発する人”ではなく、コンサルティングを通してお客さまの見えていない課題を発見していくことがSIにとっては重要なスキルです。お客さまがSIerに仕事を依頼する時、既に見えている課題はほんの一部です。その業務フローの前後に、もっと本質的な課題が眠っていたりする。一つの課題からワークフローを見渡して、最適なものを見極めることが求められます。プログラミングやプロジェクト管理能力だけを伸ばすのではなく、課題を見つけて全体を設計する能力も向上します」

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富澤:
「SI=コードを書く人、じゃないというのはよくわかります。IT技術全般に対する知見を身に着けないと、お客さまへの適切なソリューション提供は出来ないんですよね」

髙木:
「そうですね、必要に迫られて情報感度も高くなりますね。いわゆる個人の”得意分野”のどこを伸ばせるかは、正直入る会社によります。たとえばテンダの場合は、WEB系の技術が得意分野になります。すでに実績がありノウハウがある・土壌が整っているので、依頼される案件もWEB系が増えています」

 多くの案件に携わり、コミュニケーションスキルも身につくSIとしての仕事。一方で、エンジニアが”食いっぱぐれない”レガシーな技術の習得は難しいという。

髙木:
「いわゆるレガシーな技術は、エンジニアにとって安定性が高いです。例えば銀行や大手企業のシステムは、COBOL(1959年からある技術)でつくられていることが多いと思いますが、そういう既に安定した、古いけれど息の長い技術は使えなかったりします。
また、業界にまだ浸透してないような(安定していないような)超最新の技術を使うのも難しいですね」

富澤:
「もちろんお客さまからご依頼があれば検討しますが、保守性が悪かったりしますからね」

髙木:
「そうなんですよ。なので、”一定使われている”、”新しすぎず、古すぎない技術”に限定されるという節はあると思います」

富澤:
「とはいえプロダクトエンジニアとしては、決まったプロダクトだけではなくいろいろなサービスに関わることが出来るSIの仕事は学びが多いな、と感じます。自社プロダクトの開発をするということは、一つのサービスにつきっきりになるということです。弊社ではプロダクトごとに担当が分かれ一定期間でローテーションもありますが、プロダクトに縛られず、多種多様なお客さまを相手に幅広い案件に携わることで知見を手に入れられるのはSIのメリットだと感じますね」

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 ここまでのインタビューで、自社プロダクトエンジニア・SIエンジニアともに、「キャリアの先にマネジメントを見据えられる」という意見が出てきた。しかしそれぞれの経験によって、目指していくべき”マネージャー像”も異なるようだ。

富澤:
「プロダクト出身のPMは、やはり”自社で開発すること”の難しさを経験しているので、その後も自社プロダクトを持っている会社やチームでマネージャーをやっていく上では即戦力ですね。自社プロダクトは自分たちが作ったものでどれだけ売上が立つかも責任範囲になってくるので、売上まで意識したものづくりやマネージャーを目指す場合は、自社プロダクト開発の経験は活きてきます」

髙木:
「それでいうと、テンダのITソリューション事業部では、プロダクト経験”しかない”人はPMポジションでは採りませんね」

富澤:
「そういえばそうですよね」

髙木:
「外とのコミュニケーションの習熟度が違うんです。お客様に対して見積もりと工数計算をするのって、自社プロダクト開発だけでは経験できないことなので。自社開発のように作ったものの売上に責任を追う、ということは少ないですが、SIという仕事の利益を考えたことのある経験はとても重要です」

プロダクト開発・SI、それぞれが感じる課題

富澤:
「自社プロダクトの開発をしていると、やはりプロダクトに対する愛情は皆強いですね。

たとえばビジネスプロダクト事業部でランチをしたり、飲み会に行くと、”こういう機能を入れたい” ”ああしたい、こうしたい”が一番盛り上がる話題なんですよ」

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富澤:
「一方で、全て自社内で完結させるということは、いろいろな経験を持った技術者が必要になります。そういう意味で、テンダのビジネスプロダクト事業部ではまだまだ人が足りていませんね。例えば、スマホアプリ開発の経験があるエンジニアさんはすぐにでも採用したいです。

あとは、やっぱり社内でのコミュニケーションに臆さない姿勢は良いものを作る上でこれからもっと必要になりますね」

髙木:
「テンダの場合、中国の大連との開発連携もありますしね」

富澤:
「そうですね、言語の壁はAI翻訳で乗り越えたとしても、ニュアンスを伝えたりするのは案外難しいんです。そのあたりを面倒がらずに取り組めるようになることも、自社プロダクトエンジニアには求められます。日本語でのやり取りでも”伝わらない”ことってあるじゃないですか。だからこそ、自主的にコミュニケーションを取っていく姿勢は必要ですね」

髙木:
「ITソリューション事業部は、やはりお客さまとの関係性によって結果が出せることが魅力ですね。案件のボリュームは大小様々ですが、多くのプロダクトに関わることが出来るのはメリットです。たとえば、自分が普段使っていたサービスのリニューアルに携われる! という経験も出来ます」

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髙木:
「テンダの場合は、独自の制度も結構充実しています。事業部のメンバーが講師をして社内外に習得したスキルや技術知見を発表する”社内講師制度”、事業部で所有しているプロダクトの新機能実装に取 り組める”TimeKrei機能開発制度”、加えて、自身の事業企画を代表・役員に提案できる”アイハブアイディア制度”など、チャレンジできる機会が多いです」

富澤:
「社内で見ていても、ITソリューション事業部は過渡期を迎えている印象です。課題はどんなものがありますか?」

髙木:
「もっと、お客さまの課題を見つけて解決していくという力を事業部全体で高めないといけないと感じています。テンダも会社として成長して、”作るだけ”、”開発するだけ”の人手を求められるのではなく、お客さまと一緒に課題を見つけて解決していくことが求められるようになってきました。コミュニケーション力はもっと強化したいですね」

 最後に、富澤さん・髙木さんそれぞれに「どんな自社プロダクト開発エンジニア/SIエンジニアと働きたいか」を伺った。

富澤:
社内でも、積極的にコミュニケーションが取れる人。そして、お客さまの目線で物が考えられる人でしょうか。自社のプロダクトに責任を持って働くというのは、そのプロダクトを使うお客さまに向き合うということでもあります。自責で考え、積極的に動ける人と働きたいですね」

髙木:
「自分の力だけでなく、周りと協力しながら何かを作る喜びを感じられる人と働きたいです。SIとしての仕事は、お客さまや関係者と長期的にプロジェクトを動かすこともあります。だからこそ、チームでものづくりを楽しめる人は強いです!」

▼テンダで働いてみたい! という方はこちらをご覧ください。


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