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目標は「月でのアスパラガス栽培」。収穫が始まった「月面アスパラガス」とは?

天地人は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。
Tenchijin New Age Blogでは、天地人に所属する学生インターンが、これは面白いと思った宇宙のトピックスを、定期的にお届けします。

天地人学生インターンの鈴木です。
今回は、昨年から栽培を始め、2023年の春から収穫が始まった「月面アスパラガス」をご紹介します。

天地人には、JAXAと兼業している百束泰俊さんや、稲岡和也さんをはじめとする宇宙関係のスペシャリストが在籍しています。
また、天地人のメンバーのバックグラウンドは広く、「農業」の専門家も在籍していて、農業に深く関わるプロジェクトも進行中です。

月面アスパラガスとは?

天地人には、「天地人ファーム」というプロジェクトがあります。「天地人ファーム」は宇宙の視点から農業の課題解決を目指していて、2つのプロジェクトに取り組んでいます。

①気候変動に対応したブランド米をつくる「宇宙ビッグデータ米」

②月面でのアスパラガス栽培を目指す「月面アスパラガス」

どちらも、農業に関わる皆様と同じ視点で課題解決できるように、農地探しから栽培・収穫まで携わっています。

今回は、天地人の学生インターンが「農業×宇宙が面白い」と感じたところから始まり、1つのプロジェクトまで成長した「月面アスパラガス」を紹介します。

世界各国が取り組む「宇宙での作物栽培」

まず、「宇宙での作物栽培」について紹介します。
現在の宇宙空間では、栄養価が高く、宇宙で食事しやすいようにパッケージされた宇宙食が主流です。しかし、宇宙食は定期的な補給が必要で、時間とともに栄養素が劣化してしまいます。そこで、不足している栄養素を補い、食事のバラエティを増やすために、宇宙空間で作物の栽培を目指すプロジェクトが世界中で行われています。
過去には、葉野菜や、トマトなど幅広い作物の生産が試みられました。

月でのアスパラガスを栽培を目指す「月面アスパラガス」

天地人ファームのアスパラガス「月面アスパラガス」は、過酷な環境である月面においても通用するアスパラガスの栽培方法を探求し、得られた知見を地球の農業に応用することで、現在の農業が抱える課題解決に貢献したいとの思いから始まったプロジェクトです。

将来、月面での栽培を目指しています。

「月面アスパラガス」は、農学部に在籍する22〜24歳の現役学生インターン生を中心に栽培が始まりました。農地を探すところから始まり、栽培管理から収穫までを川崎市の農家さんにも指導を仰ぎながら天地人ファームが中心に行っています。

アスパラガスは、栄養ドリンクに含まれる「アスパラギン酸」や強力な抗酸化物質「ルチン」が豊富に含まれます。宇宙では、生活習慣病を抑える働きをしている、体内の抗酸化物質の量が低下する可能性が報告されており、アスパラガスは、月面で生活する人類の健康の維持に貢献できると考えます。

「月面アスパラガス」は、宇宙飛行士が宇宙に近い環境に段階的に移行して訓練するのと同様に、月面でのアスパラガス栽培を最終目標として、段階的な研究開発を進めています。

Phase1:通常の畑で美味しいアスパラガスを栽培する
Phase2:耕作放棄地で美味しいアスパラガスを栽培する
Phase3:過酷な環境もしくは限られた資源で美味しいアスパラガスを栽培する
Phase4:月面で美味しいアスパラガスを栽培する

2022年はPhase1として、栽培適地でアスパラガスを栽培しました。本当に美味しいアスパラガスを作り、その価値を消費者の皆様に実感していただくこと、今後、耕作放棄地などの悪条件の土地で美味しいアスパラガスの栽培を試みるにあたって必要なノウハウを蓄積することなどを目標としました。

「月面アスパラガス」は、2022年3月に定植を行いました。現在、順調に生育中で、2023年3月から収穫が始まり、5月末までの収穫を予定しています。

今後も天地人ファームでは、農業に関わる皆さまと同じ目線に立ち、課題解決できるようなプロジェクトを立ち上げていく予定です。

天地人ファーム学生インターンの見解

天地人ファームの鈴木です。私は農学部の学生です。研究内容は、アスパラガスや、スイートコーン、オタネニンジンなど、10品目ほどにわたる栽培や分析にまつわる研究です。月面アスパラガスでは、栽培や広報などに幅広く携わっています。

私はアスパラガスの研究で、全国のアスパラガスの生産現場に出張する機会があります。
さまざまなアスパラガスを食べてきたのですが、普通のアスパラガスは、下のほうが硬いので、皮を剥いたり、切り落としたりして調理されることが多いです。
ですが、「月面アスパラガス」は下までみずみずしく皮を剥く必要も、切り落とす必要もありません。「月面アスパラガス」の味は1回食べると忘れられないものだと思います。

今回収穫できた月面アスパラガスは現在、レストランのみに卸しています。月面アスパラガスのサンプルをレストランに持っていったときには、美味しさを評価いただき、すぐさま「使いたい」と言っていただけました。

普段私がやっているアスパラガスの研究は役に立つのかなと思うことがあるのですが、今回「月面アスパラガス」の味が評価されて、研究が報われましたね。

私たちが相手にしている農業は、「キツい・汚い・危険」の3Kのイメージが強いと思います。私たちも農業に携わっていると、その思いは捨てられないのですが、それを上回る美味しさや感動があると思っているので、月面でのアスパラガス栽培を目指しながら「感動」を伝えられるように、今後もプロジェクトを進めたいです。

月面アスパラガスは、渋谷にある天ぷらと白ワインのお店「テンキ」で食べられます。ご興味のある方は足を運んでみてください。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000068.000045963.html

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(学生インターン 鈴木)