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「JAXAで衛星を打ち上げ、エヴァンゲリオンの設定に関わった天地人創業者」COO 百束 泰俊l\\てんちびとインタビューVol.10

皆さんこんにちは! 天地人の学生インターンの鈴木です。
 
天地人(てんちじん)は、衛星データを使った土地評価コンサルを行っているJAXA認定ベンチャーです。地球観測衛星の広域かつ高分解能なリモートセンシングデータ(気象情報・地形情報等)や農業分野の様々なデータを活用した、土地評価サービス「天地人コンパス」を提供しています。
 
今回は、てんちびとインタビューの第十弾として、天地人の創業者/COO・百束 泰俊さんにインタビューします! 月1回、天地人の社員を紹介しています。

百束 泰俊(ひゃくそくやすとし)プロフィール
JAXAと天地人、早稲田大学の招聘研究員として、3足のわらじを履く。
JAXAではGPM主衛星や、いぶき2号といった人工衛星の開発と打ち上げに携わった。
天地人の創業者であり、宇宙のスペシャリストとして様々なプロジェクトに関わる。
普段の理系的な生活とバランスを取るため、休日は文化的な料理や芸術に浸かる。
愛犬家で、午後には犬に会いたくなっているそう。
好きな野菜は、アボカド。

JAXAでの下積み期間

百束さんは、新卒でJAXAに入社されていますが、JAXAに入って、どんなお仕事をされたのですか?

JAXAに入って最初に経験した大きな仕事は、世界中の雨や雪を観測できるGPM主衛星の開発と打ち上げでした。
私は、この人工衛星に関する設計や開発全般を担当しました。
JAXAでの私の仕事は最終的に人工衛星を動くようにすることが仕事内容で、設計の上流部分とテストや組み立てといった最終工程を行う部分を担当していました。

JAXAの最初の印象はいかがでしたか?

宇宙は、開発に長い時間がかかるなというのが印象に残っていますね。
新卒だったこともあり、仕事のやり方を学ぶために熱中して取り組んでいました。
ある程度、仕事の全体像や雰囲気が分かるようになるにはGPM主衛星のプロジェクトを完遂するまで、つまり8年ほどかかりましたね。

8年もかかったのですね。

振り返ってみると激動でした・・・・・・
GPM主衛星は、NASAと共同で行うプロジェクトだったので、大統領の交代で計画が大きく変わったり、日本でも東日本大震災があり電気を自由に使えなかったりする時期もありました。とにかく濃い8年間でしたね。
ですが、やっているときは、忙しいけど、熱中していたのもあって、辞めたいとは思わなかったです。


NASA時代の百束さん ©NASA

その後、気持ちに変化はありましたか?

8年間を過ごすうちに、私はプロジェクトマネージャーをやりたくなっていました。GPM主衛星の打ち上げが終わった後は、いぶき2号という衛星を打ち上げる仕事をやることになるのですが、その過程で、より一層「私のやり方で、何かをやりたい」と考えるようになっていました。

どんなことに興味を持つようになったのでしょうか?

開発者としての私のJAXAでの仕事は、人工衛星を打ち上げて一旦終わりでした。
ですが、私は、その先の人工衛星と社会を繋ぐ部分に興味が出てきました。

人工衛星と社会をつなぐとは、具体的にどういったことをしたかったのでしょうか?

天地人創業(2019年)の3〜4年前。2015年頃だったのですが、人工衛星の役割は縦割り的で、1つの人工衛星の役割は1つしかないといったように、1対1の使い方が一般的でした。またその使い方は、科学研究に重きが置かれている印象がありました。

でも、私はこのとき異なる種類の2機の人工衛星を造ったことがあったのもあると思うのですが、人工衛星同士を組合せて活用することに、社会の課題解決をするチャンスがあると思ったんですよね。

私はこのときから、衛星が役立つサービスを作ることや、衛星を世の中に役立てることが夢になりました。

なるほど。そういった考えが天地人の創業にも繋がっていくんですね。

そうですね。私は、何かの価値を生み出す最前線の場所に身を置きたくなりました。そして、モノと社会のつなぎ役になりたいと考えるようになりました。

ちなみに、JAXAの中でその考えを実現しようとは考えなかったのですか?

残念ながら当時のJAXAにはその仕組み自体がなかったんですよね。なかなかJAXAの中でその夢を実現させるのは難しいなと感じました。

ビジネスコンテストという、分岐点

そして、JAXAの外でその考えを実現させようとなったんですね。

私がその夢を周りに伝えていたら、天地人の共同創業者・CEOになる櫻庭さんと私を共通の知人がつないでくれました。
当時、櫻庭さんは、地上データに関するビジネスをやっていました。
櫻庭さんと情報交換するうちに、複数の衛星データに加え、さらに地上データもかけ合わせられるなと可能性の広がりを感じたんですよね。

そしてそのアイデアを引っさげてビジネスコンテスト(S Booster2017)に出てみようという話になったんですよね。
最初は賞金ももらえるしという、軽い気持ちも少しあったかもしれません(笑)

その結果は・・?

何も受賞できなかったです。ファイナリストまで残って、会場の注目も浴びていたのに、賞を受賞できなかったので、かなり悔しかったですね。

目立っていたのに、受賞できないのは悔しいですね。

中途半端に目立って、賞を取れなかったので、個人的に結果に満足することも、あきらめて次に行くこともできなかったんですよね。

なので、翌年、リベンジすることにしました。

2年目の結果はどうだったのですか?

S Booster2018では審査員特別賞を含むトリプル受賞を達成できました。
トリプル受賞という自分たちも想像していなかったような結果が出たことで、本気でビジネスにしようと思いました。
賞金ももらえたのですが、飲み会などで使おうという雰囲気ではなかったです。

その時、百束さんと櫻庭さんは今後についてどうお考えだったのですか?

このまま続けたいと思ったんですよね。
ここで、「会社を作るか」となりました。
コンテストに出たときのチーム名が「天地人」だったので、そのまま社名になりました。
今思うと、1年目に賞をとっていたら天地人を創業していなかったと思います。

会社を始めるとなればJAXAと兼業をすることになると思うのですが、難しさはありませんでしたか?

会社を作るときに、兼業することをJAXAに申告する必要がありました。
でも、このときはすでにJAXAは2足のわらじを履くことを許し始める風潮があったんですよね。
宇宙が、人とともにじんわりと周りに染み出して、化学反応を起こすことを、JAXAも応援しているのだと私は考えています。


S Booster2018での1枚

「マニュアル破り」に衝撃を受けた幼少期

百束さんはご自身をどんな人だと思いますか?

私は、人と違うこと、人がやっていないことをやってみたいという気持ちが大きいです。
人が行かないような飲食店に行ったり、みんなが読んでいない漫画を読んだり(笑)
小さい頃から、天の邪鬼だったと思います・・・・・・
いろいろなことをやりたいという思いがあるので、天地人の仕事もやっていますし、2021年3月8日に公開された、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」で、取材・考証協力にも関わったことがあります。

「人と違うことをやりたい」という気持ちのきっかけはあったのですか?

私が中学生の時、「アポロ13」という映画に影響されたからですね。

月に向けて飛び立ったアポロ13号でトラブルが発生したときに、宇宙飛行士が地球に帰れるように、NASAと宇宙飛行士が全力を尽くすという映画です。

私は特に、「マニュアルを破れ」という言葉に衝撃を受けました。

アポロ13号でトラブルが発生して、船内の二酸化炭素濃度が上昇し続けている場面で、
地上のNASAの司令部から、アポロ13号に、宇宙飛行士の手元にあるロケットを操作するためのマニュアルを破れという命令が来るんですよ。
二酸化炭素を除去できるフィルターを即席で作る場面で、パーツとしてマニュアル(内容でなく厚紙として)が必要になるので、この言葉が出てきたんですけど、今でも鮮明に思い出されます。

マニュアルを破れ。かなり強い言葉ですね。

学校の勉強だと、決められた道筋で答えにたどり着かないとダメと教わるじゃないですか。決められた順序で進まないと、正解にたどり着いても、満点はもらえないですよね。
私はそれが嫌だったんですよね。
「マニュアルを破る」という行為が認められる、宇宙業界っていいなと感じたんです。
私は、「誰もやっていない新しいことをしたい」「手順をハックしたい」という気持ちが強いんだと思います。

その後、就職先を決める際にも宇宙に関わりたいという思いは変わらなかったのですか?

私が大学生になっても、宇宙に関わりたいという思いは変わらなかったです。
就職先としても、JAXAは一番入りたい企業でした。

JAXAに入って、「マニュアル破り」という点からみてどうでしたか?

私がやりたかった、「誰もやっていない新しいことをする」「手順をハックする」は、そもそも、普通どうやるかを知らないとできないんですよね。
私は、「マニュアルを破る」という目標を達成するために、正しいやり方を学ぶための長い時間に耐えられたのはあるかなと思います。

そして始まる「マニュアル破り」

実際に天地人とJAXAの両方で働かれてみていかがですか?

JAXAでは、技術的に高い精度や信頼性を求められる仕事が多かったのですが、
天地人で求められるのは、「ユーザにとっての価値」だと思います。
天地人でできる仕事は、「マニュアル破り」の要素が強いので、楽しく仕事ができています。

兼業自体は、周りの皆さまにも応援してもらっているので、両立できています。
目に見えないところでも、応援してもらって、サポートしていただいているおかげだと思っています。


いぶき2号打ち上げ直前の百束さん

天地人で今後、やりたいことはありますか?

世界中で起こっている気候変動による影響を、宇宙ビッグデータとビジネスの力で解決していきたいです。
衛星は広い範囲を継続的に観測することができ、まさにビッグデータです。最近は、民間衛星も増えてきており、データはますます増加しています。
天地人コンパスはその宇宙ビッグデータとAIで、様々な課題に対して、「答え」を届けるサービスになると確信しています!

以上、百束さんのインタビューでした。
これからも天地人のメンバーにインタビューしていくので、お楽しみに!

 
天地人では、衛星や地上の様々なデータとAIを活用して、課題解決に向けて情報分析、ソリューション提供を行っています。ご質問等ございましたら、info@tenchijin.co.jp までお気軽にお問い合わせください。
 
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