【Jリーグ第33節】FC東京 1-3 札幌
■ 2023年11月25日(土) 14:00キックオフ
■ 味の素スタジアム
今季ホーム最終戦。昨日までの小春日和と変わって薄曇りの寒い秋の土曜日となった。ダウンを着てヴェスパで味スタへ。天文台通りからバイクでアプローチを走るのも今年はこれが最後だ。
昨日川崎が勝ったため、東京は順位表上半分でのシーズン・フィニッシュが消滅、目指すものはもうほぼなにもないが、そのぶん純粋な意志の力やチームとして何を共有しているかが問われる試合であり大事にしたい。今季の到達点を見せてほしい。
トレヴィザンと松木が警告累積で出場停止。U22代表から帰国したばかりのバングーナガンデもメンバー外となり、徳元が左SBで先発した。
布陣
野澤
長友 木本 森重 徳元
小泉 原川
仲川 渡邊 アダイウトン
オリヴェイラ
前半
東京は窮屈な局面でもボールをしっかりつなぎ、最後はスルー・パスや息を合わせたフィードで裏を取ろうとするねらいがいつになくはっきりしている。4分、オリヴェイラのスルー・パスで二列目から一気に裏に抜けた原川がシュートを放つが敵GKが触りファーに外れた。
流動的に選手が動くうえに、ビルド・アップでは自陣の深いところでも簡単にけらず前に付けることを徹底しているため、ミスひとつで大きなピンチになってしまうリスクがあるが臆せずボールを動かす。いくつかチャンスを作られるが敵のシュート・ミスにも救われて失点は回避。
一方でねらいどおり後ろからの飛びだしで裏が取れ、チャンスにつながるシーンも出てくる。15分、オリヴェイラがエリア外からシュートを放ったが敵GKがセーブ。18分には木本からのスルー・パスで右サイドを抜けだした仲川がGKと一対一になってシュートを放ったがファーに外れる。これは絶好機だったが決めきれず。
その後も東京がボールを握り、自陣の深いところからでも敵をはがしながら前進して前に付けるチャレンジをくりかえす。野澤のパスが敵にわたるなど怖いシーンもあるがリスクを取っているんだからしかたない。
36分、原川からパスを受けたアダイウトンが左サイドからカット・イン、シュートを放ったが敵DFに当たり枠外へ、37分には原川の左CKにオリヴェイラが頭で合わせるが枠におさまらず。40分にはスルー・パスを受けて裏に抜けた仲川がエリア内に持ちこんでフリーの徳元に横パス、徳元がダイレクトで流しこもうとするがバーを越えてしまう。
41分、原川からの縦パスを斜めに走りこんで受けたアダイウトンがこれをオリヴェイラに落とすと、オリヴェイラがファーに決めてゴール、1-0と先制する。このブラジリアン・コネクションはエモかった。前半はそのまま1点のアドバンテージを得て終了。
プレッシャーがかかってもボールを捨てず、前に前に付けようと試みた45分。ピンチもあったが札幌のシュート・ミスにも助けられ、失点は免れつつオリヴェイラのゴールで先制することができた。勇気を持って戦っている。後押ししてともに勝ちたい。
後半
しかし、後半立ち上がりは選手を二人替え修正してきた神戸が流れをつかむ。51分、札幌のビルド・アップにズルズルと下がってしまい最後は斜めに通されたパスにダイレクトで合わせられて失点、1-1と同点になってしまう。
その後も札幌にボールを持たれ、57分、右サイドから中央にクロスを入れられ、ファーで押しこまれてさらに失点。1-2と逆転を許してしまう。どちらの失点もDFラインにギャップができてしまい裏をねらわれた。
60分を過ぎたころから東京が再びボールを持つ時間となるが、再三のCKにもフィニッシュまでもちこめない。66分、小泉と渡邊に代えて青木と東を投入、ともにそのままの位置に入る。74分、徳元に代えて白井を投入、白井は右SBに入り長友が左SBにスライド。
その後も東京はラインを高く保ち縦に刺しこむチャレンジを続けるが、札幌がスペースを固めてきたために前半ほど効果的にチャンスが作れない。84分、オリヴェイラと原川に代えて熊田と寺山を投入。
87分、右CKからのこぼれ球をアダイウトンが狙うがバーの上。90分にはスルー・パスを受けて裏に抜けた仲川がシュートを放つが敵GKがセーブ。アディショナル・タイムが7分と表示されどよめく。そんなに試合止まってたっけ…。
すると90+4分、ハーフウェイ近くで青木が敵のフィードを処理しきれず敵FWにボールを奪われると、野澤が前に出ているのを見た敵FWがロング・シュート。これが野澤の頭を越えてゴールに入り失点、1-3に。結局試合はそのまま終了し、ホーム最終戦は逆転負けとなった。
戦評
互いにイーブンな立ち上がりからリスクを負いながら前を向いて攻め、前半のうちに先制できたところまではよかったが、後半修正してきた敵にやられて逆転を許し、最後は決定機をモノにできず逆に追加点を決められた。
数字を見ればシュート数11-18、CK9-4、ポゼッション52-48と打ち合ったことが窺え、時間帯にもよるが互いに受けにまわらず主導権を争った試合という印象だった。
この試合ではこれまでの戦い方と異なり、まず自陣の深いところでも決してけらずにつなぎ、怖がらずに受けることを徹底するとともに、ビルド・アップの出口の複線化を意識して、逆サイドや縦へもボールを動かすことができていた。
長友、徳元の両SBは内側に入りこんでときにボランチの位置におり、外側のレーンをウィングが使うのみならず、森重は自由にボランチやインサイド・ハーフの位置まで上がってボールをさばき、空いたスペースは木本がケアするとともに原川らがカバーした。
前にコースが開けば果敢に縦に付けることも徹底されており、最終ラインでボールが往復するだけのこれまでのビルド・アップに比べて「隙を見て差しこむ」ことが明確に意識されていた。
もちろんそうやって矢印を前に向ける分、裏を取られたときのリスクは大きく、前半は敵のシュート精度や野澤のセーブもあってそれが顕在化しなかっただけ。先制できたのであまり気にされてないかもしれないが、前半よかったのは得点できたことではなく、失点しなかったことでもなく、矢印を前に向けてチャレンジし続けられたことである。
後半は立ち上がりに失点したことでマネージが難しくなった部分はあるし、もちろん疲れも出て間延びしたが、それでも安易にけったりボールを捨てたりせず、保持から裏へ、ワンタッチで優位を取る意識は維持されていた。結果として失点を重ねることにはなったが、試合を通じてこれまでにないリスク・テイクの姿勢を見せた。
問題は、こうしたチャレンジが本来はシーズンのもっと早い時期になされるべきであったということ。試合結果は残念だったが、今日やろうとしたことは決して失敗ではなく、ただ完成度が低かっただけ。この取り組みを開幕から、せめて監督交代からやり続けることができていればと感じた。
少なくとも試合単体として見ればブーイングが出るような内容ではなかったし、見るべきものはあった。ボールの動かし方に明らかにこれまでとは違った意図を感じたし、うがった見方をすれば、これはクラモフスキー監督留任の布石なのではと思った。
これでシーズンは残り1試合。タイトルも残留も関係のなく思いきってトライできる試合でこうしたゲームを見せたことは、結果は別として評価すべきだと思うしシーズン最終戦が少し楽しみになった。
33試合を終えて11勝15敗7分で勝ち点40(1試合あたり1.21)での11位という成績にはまったく納得できないが、今日の試合は今季限りでリセットしてしまうにはもったいない可能性を感じた。
評点
[評点はドイツ式(最高1~最低5)]:
野澤(4) 来季は正GKでいいのではないか。
長友(4.5) ほぼ内側にいて新境地を開いた。
木本(4) 仲川に通したパスにしびれた。
森重(4) あのポジショニングはまさかアドリブか?!
徳元(4.5) やはりセンスある。使い続けたい。
小泉(4.5) リスクが取れるのは彼がいてこそ。
原口(4.5) CKの精度か今日は今イチではなかったか。
仲川(4) 頭の下がる働き。来季も残ってほしい。
渡邊(4.5) アイデアはいいがひらめきが過ぎることも。
アダイウトン(4.5) アシストは見事。残ってほしいが。
オリヴェイラ(4) キャリアハイの15ゴール。尊い。
===
東(4.5) ライン上げろと味方を鼓舞したのが印象的。
青木(4.5) ボール・ロストあったが代えがたい働き。
白井(4.5) 白井と徳元の両サイドを見たい。
寺山(-) 時間短し。たくましくなってきた。
熊田(-) 時間短し。ポテンシャルはあるが。
次節対戦する湘南は今日残留を決めており、来週悲壮な雰囲気のなかで試合をすることだけは免れた。
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