嘘の学歴でイキってたらSNSで全部バラされた話

三流大学に入学したがプライドが許さず似た名前の一流大学に受かったと友人に吹聴。
最初は尊敬の眼差しを集めたが後にSNS経由で全部バレてしまった。

筆者の知人にこんな悲惨な人がいた。
ズバリこの人!と言うわけではなく筆者が今まで会ってきた人物の掛け合わせの中における人物像ではあるが、大体こんな悲惨なエピソードを経験した人がいた、という話である。
本稿では仮名として多中田君と呼ぶことにする。
筆者と多中田君とはたまたま同じバイト先で知り合った。
バイト初日に彼本人から一流大学出身であることを聞かされ面食らった。バイトの歴も長いのでその仕事ぶりやさぞ万能たるものか、と思いきや案外そうでもなかった。むしろその仕事ぶりはチームの足を引っ張ってるんじゃないか?くらいのなかなか厳しい評価である。
高学歴イコール仕事が得意なんて言説は偏見もいいところの差別的視点でしかないということは筆者も年齢や経験を重ねてるので重々承知の上なのだが、その当時筆者は高学歴=仕事が出来る人という認識を持っていた。
なので多中田君のような人と会った時はちょっとカルチャーショック的な感覚になった。
実際に多中田君のエピソードをいくつか抜粋すると

  • やるべき仕事を忘れている

  • ミスが多い

  • 報連相が出来ない

などなど社会で働く上で基本的な事ができていない。とはいえ彼も社会に出る前の若者であり、しかもバイトしか経験がないとすれば正直あるあるな感じはする。筆者自身だってこの手のミスをやらかして何度か迷惑かけたこともあるし、あまり人のことは言えない。
しかし彼に対する違和感は上記内容ではなく彼の立ち振る舞いにあった。
例えば新人バイトが入ってきて自己紹介をするときだ。
多中田君はバイトの初日にいきなり新人の子に向かって大学名を聞く。自分よりも下の大学、または専門学生、高卒だと分かると

努力が足りてない!
人生甘えてるからそんな学歴なんだ!
そんなレベルの大学に親の金出させているお前はクズだ!(相手が学生の時限定)


等々、ブラック企業よろしくの不快な言葉を浴びせていた。
そんなこんなで仕事ができないことに加え、人格を疑う不愉快極まりない発言により彼は一層孤立した。
もう一つ腹が立つ理由としては明らかに腕っ節が強そうな男性に対してはこれらの暴言はは陰を潜めている点である。彼はいくら罵倒しても反撃してこないであろう相手を選んで暴言を浴びせていたのである。

嘘がバレるきっかけ

ある日、筆者はとある学生向け就活イベントに参加していた。そこに偶然多中田くんもいた。どうやら運営のボランティアとして参加したようだった。
この時点でイベントに参加する気が失せて引き返そうかとも思ったが、もう会場まで来てしまっている。致し方なし。筆者はそのままイベントに参加した。
イベントの詳細は伏せるが、とにかく熱い?熱狂的スタイルのセミナーである。
ピチピチの青いスーツを着た茶髪の青年が登壇し、参加した学生を怒鳴り散らす、小グループに分かれて一人一人の欠点を大声で叫び皆にダメ出しされる、場合によっては鉄拳制裁(筆者の年代ではまだギリギリ体罰やら暴力やらは容認されていたのだ)、とにかく力という力を以て甘えた学生気分など一掃してやる!ということが主旨の何とも有難いイベントであった。

お前らは何者でも無けりゃ何の才能もない!
ただ金と時間を浪費してるだけの動物以下の存在や!地面に這いつくばって全ての人間に土下座せえや!
出来なきゃ〇ね!
もし○にたくねえ奴がいたら今すぐマインドを変えろや!
就活は戦争や!負けたやつに人格はあらへんねん!

まあちょっと、いやかなり脚色は加えているが何とも怪しく香ばしいセミナーだ。
(本当はこんなセミナーは無いので学生の方がいたら安心してください)

このイベントには受講者じゃなく運営する側の立場として参加してる学生もおるんや!
そいつらはお前らの一歩先、いや何百歩も先を走ってるんや!!
それに比べてただ口を開けてエサを待っているお前らはなんやねん!
何やねんこのザマはああ!

流石は一流大学の多中田君。
バイトでの仕事ぶりは就活に関してはもう動いてるのか。なんだかんだですごい人なんだな、、と多中田君の意識の高さと自身の生きてる価値の無さ講師の熱血ぶり実感した。

※このイベントは筆者が妄想した架空のものです。現実の団体とは一切関係ありません。

筆者の妄想

後日、就活の意識の復習?のため筆者はイベント内容をホームページで振り返っていた。そしてそこで衝撃の事実を目の当たりにする。
ホームページで多中田君は学生運営ボランティアとして紹介されていたのだが、なんと大学名は彼が名乗っていた一流大学では無かった。一流大学によく似た名前だが全く別の大学だったのだ。
実際に書かれていた本当の大学名の偏差値は下から数えた方が早く、というか筆者の大学の方が高いくらいのレベルだった、
とてもじゃないが人の学歴を貶せるような立場には無かった。

その後の展開はもうお決まりである。
早速この事実を筆者は参照リンクごとバイト仲間に共有。
嘘だろ?
アイツ嘘ついてたの?
Fランじゃん!
どういう嘘ついてんの?
やべえやべえww、まじウケるww、こんな感じでお祭り状態になったことは言うまでも無い。

騒ぎはそこでとどまらなかった。バイト仲間1人がそのURLをとある会員制SNSに本人とその他大勢が全員タイムライン場所に貼り付けた。
多中田君本人とSNSの知り合い全員がその事実を知ることになる。
いうまでも無いがSNSでは多中田君は一流大学の名前を書いている。
案の定、多中田君のSNSは大炎上。
バイト先以外でも同じように学歴マウントを取りまくっていたのだろう。
SNSの友達からもなかなかに厳しく辛辣なコメントが寄せられた。

そしてその一週間後くらいだろうか、多中田君はバイト先の責任者に呼び出され激しい叱責を受けた。その後筆者らが多中田君をアルバイト先で見ることはなかった。

何故嘘をついたのか

普通に考えればこんな嘘はいつかバレるし、もしバレたら大恥をかく。
そもそも学歴を偽って働くのは結構リスクのある行為だ。最悪の場合は解雇になる。
勿論、三流大学よりは一流大学にいると周りに行った方がチヤホヤされるし気持ちいい。
しかし解雇というリスクを背負ってまで偽るものなのだろうか。
彼本人を除けば少なくともアルバイト先では他人の学歴を馬鹿にする人はいなかったし、皆それぞれが学歴や経歴に関係なくリスペクトし合っていた。逆に一流大学の人は必要以上に周りからヨイショされている、というわけでもなかった。
つまりバイト先では少なくとも学歴を偽る理由が無かったのである。
何故彼はこんなリスクの高いことをしたのだろうか。

多中田君はもともと偽っていた一流大学を志望して受験勉強していたようだ。2年浪人して努力を重ねるが、とうとうそこに受かることはなかった。
元々小学校、中学校の頃から勉強が得意ではなく、高校は中堅どころの進学クラスに何とか入学出来たようだ。
ここが実に中途半端な進学コースの悪いところなのだが、その学校は生徒たちに学歴の一発逆転を夢見させて、非常にスパルタな指導を行っていたようだ。
だが元々小学校、中学校の基礎が出来ていないところにいくら高校レベルの学問を積み重ねても伸びる実力の天井は見えている。
結果として大多数の生徒が非常に不本意な結果で大学受験を終えるのだ。
多中田君も例に漏れず現役で一流大学を受験したが失敗した。
浪人して再度チャレンジをするのだが、高校以前の学習の基礎が出来ていないことには変わりないのでその年も同じく失敗。
一流の大学がだめなら滑り止めの二流でもいいじゃないかとも思うが、滑り止めで止まることはなく三流レベルにようやく受かった。
が、この時点ですでに2浪。そして入った先がその辺の三流大学では周りに何と言われるかわからない。
だからと言って進学しないわけにはいかない。今更就職なんてしたら浪人時代の空白はただの空白になる。
多中田君は一流大学と名前がよく似ている三流大学に進学し、SNSでもそれを公開した。
地元の友人たちの間ではこのことがしばらく話題となった。
あいつがこの大学!?、嘘だろ!?、俺あいつに負けた!
など感嘆、驚愕、時に絶望の声が入り乱れていた。

しかし…やはり人生とはうまくいかないもの。
偽物で固めたメッキはすぐに剝がれてしまうのだ。
しかもこれがインターネットの恐ろしいところで、SNSに公開された彼の正体は瞬く間に拡散し、感嘆の声は一瞬で嘲笑に変わった。  

こんな顛末にも懲りることはなく多中田君はその後とある一流企業に内定したという報告をSNSにアップした。就活で逆転ホームランを打った!という主旨の投稿を添えて。
しかし一度看破された術が2度目も通用するはずもなく、これまた誰かの仕業で一瞬にして派遣社員での内定であることがバレてしまった。

その後、多中田君がどうしているかは分からない。
風の噂ではとあるフリーのコンサルタントとして活躍しているとかいないとか。
努力と結果は必ずしも結びつかないので本人に対してとやかく言うものでは無いというのが筆者の持論ではあるが、一度承認欲求に囚われるとこういう悲惨な顛末を迎えてしまうこともあるのだ。

それにしても多中田君のような素晴らしいプロフィールを持った人がSNSには多く存在するがそれは実は虚像なのかもしれない。
人を取り巻くブランドイメージというものは実に水物であるということを思わされた一件だった。

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