It's購買系9月🎑:①モノがない、不足がさらに切迫

2021年10月5日 20:22

9月23日の投稿「部材不足の大規模減産が続々、それを契機に"持たざる"サプライチェーン(Just-in-time)の見直し機運が高まる-日本経済新聞他 (2021年9月23日)」をクローズアップしてみました。

自動車業界の減産規模は年間生産台数の1ヶ月分の見込み

東日本大震災に学んだ優等生のはずのトヨタまでが、9月に引き続いて10月も全世界で4割減産との報道が出たのが、9月10日。さらに23日には、半導体不足から自動車生産が世界全体で770万台、金額ベースでは2100億ドル（約23兆円）の減少(5月予想の2倍に拡大)とするアリックスパートナーズの推定値をブルームバーグが報じました。コロナ前の2019年の世界年間生産台数が約9,000万台とされていますので、約1ヶ月分の世界の自動車生産が止まったというものすごい規模となりました。

こんなことが...春先には予期しなかった事態が発生中

コロナ禍で逼迫は見られたものの、ここまでになるとは春先には予想外だったと思えます。例えば、2021年1月～4月に350人の購買トップ(CPO)に調査したArdent Partnersのレポート「Procurement Metrics that Matter in 2021(ググると複数社から入手可能。参考例として下にGEP経由のリンク)」には「どの領域がCOVID-19の影響を最も受けましたか(What area has been impacted the most by COVID-19?)」との設問があります。その回答結果は、「売上/収益/キャッシュ(Sales/Revenue/Cash)」が35%でトップ、次が「社内オペレーション(Internal Operation) 」で25%、「サプライチェーン(Supply Chain)」は19%で3位です(ちなみに、4位は「労働力(Workforce)」の17%)。

Covid-19の感染が急拡大した2020年前半から、感染者の発生で工場が止まった、港湾が止まったとの「サプライチェーン断絶(Supply Chain Disruption)」は発生してきました。さらに、それ以前から貿易摩擦の「買えないリスク」が取り沙汰されてもいました。しかし、需要があるのに作れない、さらにひょっとすると今後1年以上も逼迫が続く(半導体など)とする状況は、まさに想定外の異常事態です。

価格上昇云々でなく、”作れない”という異常事態

この状況をいち早くアンケート調査してくれたのが、価格明細レベルの直接材見積システムを展開するA1A。「B2B取引をワンランク上に」のモットーのもとにテレワーク、電子帳簿保存法などのタイムリーな調査活動なども手掛けてくれてもいます。今回はまさに時機を得た調査「2021年08月調達材料の逼迫状況におけるアンケート」を2021年7月16日〜 2021年8月13日に製造業調達購買部門79名を対象に行い、その結果が日本経済新聞や日刊工業新聞に採り上げられました。結果からは半導体だけでなく、電子部品や樹脂にまで広範囲に実際の影響が出ている様子が読み取れます。

その中に「材料逼迫に対する事業のインパクトを教えて下さい」との設問があります。製品原価の増加が70.89%で多くを占めるのは首肯できますが、加えて「製品販売台数の減少」が45.57%をもあります。購買業務の鉄則で「価格を下げる(安値買い)」よりも「不要なものを買わない(無駄買いしない)」方が遥かに効果があるというのがありますが、ちょうどこの逆が生じています。すなわち「製品を作って売れない」のは「利幅が狭まる」よりも遥かに深刻な問題です。ゆえに「直接材では価格低減よりも安定供給」、よく言われてきたことです。今回は、その「安定供給」が大規模かつ長期間にわたって危ぶまれる異常事態となっています。

サプライチェーン網の上流まで影響は及ぶ

2020年の感染拡大期には、自動車業界は4月から8月まで国内減産を行い、トヨタを例にすれば6月に4割減産まで陥りました(他社ではもっと厳しい減産に追い込まれたところもありました)。そのときには、自動車関連４団体がサプライヤー各社の資金資金調達支援にともに動く「助け合いプログラム」を始めたりしていました。
しかし、世界全体で今年の9月と10月は連続して4割減産をトヨタが発表しました。さらにこれが一過性に終わるのか、あるいは11月以降まで続いてしまうかの展望も現在不透明です。このままでは昨年以上に悪影響が出てしまう可能性がある、まさに今はそんな状態です。

となると、完成車メーカーの減産の影響を昨年以上に受けかねないサプライヤー各社をどうしたらよいのか。日経新聞は9月11日に「トヨタ、取引先支援も減産継続、部品・素材各社が警戒」がとタイトル記事でこのあたりを取り上げました。ただしこれはトヨタだけの問題ではありません。サプライヤーに対する買い手企業の窓口である購買部門が、どの会社でも直面する課題になると考えられます。

基礎知識をもう一度見直そう

ただし具体的な購買部門の細かな施策の話が不思議と出てきていないような気がします。「在庫の積み増し」や「取引先に部品確保を要請」などの大きな話は出ているものの、サプライヤーとより具体的に話をするための詳細施策レベルの話が不思議なくらいに話題になっていないように思うのです(値上対応の方面はいくつか出ていますが)。

例えば、以下のような話題がどこかで出てきてもよいように思えます。
①指定納期遵守率と回答納期遵守率
②発注量の余裕幅の調整
③サプライヤー在庫保有に伴うデカップリングポイント(半導体ですし)

四半世紀前から存在する話題ゆえ、分かりすぎている状況であればよいのですが、なにか浮足立っているような気がするのは思い過ごしでしょうか。

※2021年9月の購買調達トピックス投稿は次の7件でした。
①サプライヤーでの最低賃金引き上げ反映に言及した「中小事業者等取引公正化推進アクションプラン」を公正取引委員会が発表-時事通信ほか (2021年9月13日)
②製造業の7割超で"悩み"の原価上昇、4割弱が部材不足で生産抑制、関心の高まりはCSR調達とサプライチェーン見直し-ニュースイッチ(日刊工業新聞社)他 (2021年9月16日)
③日立が50年度目標でサプライチェーン温室効果ガス排出量をゼロに、トヨタやBMWの自動車業界でもサプライヤーとの取り組みが進む-日本経済新聞他 (2021年9月21日)
👉④部材不足の大規模減産が続々、それを契機に"持たざる"サプライチェーン(Just-in-time)の見直し機運が高まる-日本経済新聞他 (2021年9月23日)
⑤サプライチェーンの対応力アップにはツール導入だけでは達成不可、サイロ化分断組織の体制面の見直しが不可欠-Mckinsey他 (2021年9月23日)
⑥ビジネスへの戦略的価値創造者として購買部門を捉え直す動きが、パンデミック後を見据えて提起され始める-Forbes他 (2021年9月24日)
⑦さようならタクティカルバイヤーたち、人手ソーシングが消滅し、AIが代替する「自律調整」への動きがより鮮明に-BIRD INITIATIVE他 (2021年9月24日)

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