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It's購買系10~12月:「サプライチェーンというもの」のモノ不足とインフレ

バイデン大統領の「サプライチェーンというもの」発言から始まり、パンデミック後のサプライチェーンの混乱がさらにクローズアップされたのが、2021年第4四半期(10月~12月)だったのでは思います。そこで、備忘録的な要素も含め、主だった事象を羅列したくといます(今後の材料に使えるかもしれません)。加えて、It’s購買系で10月~12月に投稿した調達購買トピックスの一覧も付します。

バイデン大統領が「サプライチェーンというもの」を定義する

サプライチェーンってそれほど一般認知された用語ではないのかと思い知らされたのが、10月13日のバイデン大統領ブリーフィングでした。大統領は次のように話し始めました。

皆さん、お座りください。ありがとう。こんにちは。ところで、皆さんは「サプライチェーン」というもの(something called “supply chains”)を、そしてトースターからスニーカー、自転車、寝室家具に至るまでの広範囲のものが、いかに手に入りにくいかを随分と耳にしていると思います。

それゆえに、私は2月にサプライチェーンに関する法案、つまりサプライチェーンに関する大統領令に署名し、それを実行に移さねばなりませんでした。

しかしホリデーシーズンを迎えて、買おうと思っていたプレゼントが間に合うかどうか、心配されている方もいらっしゃるでしょう。

では、説明しましょう。「サプライチェーン」とは、基本的に、私たちがどのようにモノを作り、どのように材料や部品をモノを作る工場に届けるか、そして、どのようにモノを移動させるか、完成品が工場から店舗、そしてあなたの家までどう移動させるか、ということです。

Remarks by President Biden on Efforts to Address Global Transportation Supply Chain Bottlenecks
(White House Briefing)

バイデン大統領は、後半で港湾の24時間稼働などの対応策を発表し、民間協力を得た直轄のサプライチェーン・タスクフォースが行われました。そしてその結果は、12月23日に「多くの人が予測した危機は起こらなかった。荷物は動き、贈り物は配達され、棚も空になっていない。(And much — you know, the much-predicted crisis didn’t occur. Packages are moving. Gifts are being delivered. Shelves are not empty.)」との勝利宣言となりました。

大統領が「「サプライチェーン」というもの」と語るくらい、サプライチェーンに関する世間の認知度は無いのかと唖然とする面もあります。まあ、うまくいっていて当然で、あまり表立ってはいけないのかもしれません。それが今回は問題として表面化してしまいました。とはいえ、今回の「「サプライチェーン」というもの」などの大統領の発言は、将来どこかで引用できるのではと、ふと思います。

経営トップの関心が感染拡大から、サプライチェーンの混乱とインフレに

コンサルティング会社マッキンゼーが10月に行ったGlobal Surveyでは、今後12か月のリスク項目のトップ2は「サプライチェーンの混乱(回答者の40%強)」と「インフレ(回答者の3割半ば)」となり、「COVID-19パンデミック(2割半ば)」を越えました。マッキンゼーは「2021年の最初の3四半期とは打って変わって、COVID-19に対する不確実性は、もはや経営者にとって最も重要な経済的懸念事項ではなくなっている」としました。

オミクロン変異株感染拡大後の12月の調査結果ではCOVID-19パンデミックへのリスク懸念が増えましたが、依然サプライチェーンの混乱とインフレも高い回答数を保っています(上記レポートの図2を参照)。
一方で、日韓中の経営リスク調査結果を報じたのが、日本経済新聞です。1月14日の記事「日韓、供給網を不安視 中国は人手不足懸念」では、3国共に「新型コロナ禍の影響」が大きいものの、日本と韓国では「供給網の問題」と「原油、LNG、石炭などの価格上昇」が続いています。
傾向として、グローバルを調査範囲としたマッキンゼーの調査結果とほぼ一致するのが興味深く思えます。

現在は、急激なオミクロン変異株の感染拡大が国内で続いています。しかしパンデミックそのものから、パンデミックが引き起こした状況、すなわち「サプライチェーンの混乱」と「インフレ」への対応への対応に国内外で視線が向かっているようです。好む好まざるにかかわらず、購買調達部門が、しばらくはセンターステージに立たざるを得ない状況になっています。

モノが足りない:巧拙が大きな差を生みもした

国内外の企業マネジメントがリスクととらえる項目の1つが、サプライチェーンの混乱に基づくモノ不足にあることは、前述のとおりです。

日本企業でも、東南アジアサプライヤーの操業停止や半導体逼迫などの部材供給不足で、自動車産業をはじめとして、生産ラインの停止が10~12月も相次ぎました。最悪期を脱したとして挽回生産を図るも、突発的に数日停止する事態が、2022年1月でも継続しています。給湯器、温水便座やゲーム機・プリンターから、養殖水産品(冷凍エビなど)まで、さらには物流混乱の年末のマック・フライドポテトまで様々な品不足が発生しました。マッキンゼーは、このような事態を「平均的な企業は、今後10年間で年間利益の45%が吹っ飛ぶ」と推計します。

一方で、トヨタが、90年君臨したGMを抜いて、2021年米国新車販売市場でトップに立ったことが、年明けには報じられました。日本経済新聞の1月5日の記事では、ウォールストリートジャーナルの半導体の在庫を積み増すというトヨタの判断が寄与した」との報道を取り上げつつも、さらに「小まめな生産調整で影響を最小限に抑えた」との指摘もその要因として、「小まめな生産調整で影響を最小限に抑えた」との在庫確保だけではないことを匂わせる指摘をしていました。おそらくは、このあたりの対応力をどう強化するかが、2022年の課題になると思います(機会があれば、私も書きたく思います)。

モノ不足が解消に向かい...となると、巧拙はさらに明確化

一方で、モノ不足は解消に向かいつつあるとの記事が、年末の少し前から目につくようになりました。例えばISM PMI指数のサプライヤー納期指数(Supplier Deliveries Index)は低下してきています。

ということはどうなのでしょう、これは調達力の巧拙がより浮き彫りになりかねない状況になってきたのではないでしょうか。誰もが買えないときは言い逃れもできますが、うまくやっているところがでてくると、自社が買えない状況は責められます。生産ラインが止まり、それが売り上げにまで影響していると尚更です。その点で、2022年は個々の購買調達部門にとって難しくなるかもしれません。

インフレ:消費者物価指数(CPI)上昇幅は〇〇年ぶりで高止まり

昨年12月に発表された米消費者物価指数(CPI)は、前年比7.0%高と1982年6月以来39年半ぶりの上昇幅になりました。11月が6.8%高でしたので、さらに上昇幅が拡大しました。変動幅が大きい食品とエネルギーを除いても5.5%上昇と1991年2月以来の30年10か月ぶりの上昇幅でした。これが、米連邦準備理事会(FRB)の規制緩和縮小、政策金利引き上げの推進要因になっています。

OECD加盟38か国でも、昨年11月の消費者物価指数(CPI)は、前年比5.8%の上昇と1996年5月以来の上昇幅となりました(日本経済新聞「OECD、2021年11月の物価上昇率 25年ぶり高水準に(2022年1月12日))」。食品とエネルギーを除いても3.8%の上昇となっています。また、特に上昇幅が大きいエネルギーは前年比27.7%高となりました。12月はさらに上昇幅が大きくなることが想定されています。一方で、中国(OECD外)の経済鈍化による伸び率縮小はありますが、依然高止まりになっています。

円安も相まって、日本では企業物価の値が35年11か月ぶりの高水準に

エネルギーと食料を除く消費者物価指数(CPI)の伸び率が、主要先進7か国(G7)の中で唯一、前年比マイナスの日本ですが、円安もあり、国内企業物価指数の値の方は1985年12月以来35年11か月ぶりの高水準(108.7)になりました。上昇率も9.0%と比較可能な範囲(1981年1月以降)では最大となっています(読売新聞産経新聞)。

他国が経済緩和に動く中、当面は緩和継続の日本は円安継続で、購買部門が担当する企業物価指数の高止まりは継続と思われます。それに対して、昨年の日刊工業新聞の記事「企業物価指数が40年ぶり高水準、投資マインド冷やす「原材料高」の行方(2021年12月15日)」などが出されています。

モノ不足と相まって「ここまでくると経営課題。購買部門だけが責められることはなくなった」との開き直り発言も耳にしますが、2021年第4四半期同様に悩ましい状況が継続しそうです。

2021年10~12月の購買調達トピックス投稿一覧

※2021年10~12月の購買調達トピックス投稿は次の24件でした。
2021年10月

サプライヤーとの情報連携を見直し、業務透明性の確認を、情報提供を一方的に強要するのではなく-ハーバード・ビジネスレビュー (2021年10月2日)
無理強いしたら決算まで歪んだ...コスト削減偽装スキャンダルが68億円の巨額罰金でようやく決着-Financial Times他 (2021年10月6日)
"やる気はあるが準備できていない"状態から、持続可能な購買をさらに具体化する論考を発表-Mckinsey (2021年10月9日)
「パートナーシップ構築宣言」を公表した企業が半年で約500社、さらに直近で約200社強増えて、1700社を突破-経済産業省ほか (2021年10月9日)
災い転じて福となせ-原材料逼迫はまずは"守り"姿勢も、これを契機に次に"攻勢"へ転じる準備を怠るな-Kearney (2021年10月13日)
購買変革が続々と報道の日産: 半導体調達方針、製品開発手順/コスト保証、排出削減目標など-日刊工業新聞社など (2021年10月21日)
情勢混乱の現状下、他社比較で進む方向を測るに有効なベンチマーク指標を連ねた資料「CPOハンドブックを発表-ベロア (2021年10月22日)

2021年11月
サプライチェーン戦略成熟サイクルモデルや評価シートなどの良さげな資料を発表、でもアジア-太平洋地区トップ10に入る日本企業は2社に半減-Gartner (2021年11月17日)
調査回答企業の45%が取引先の温暖化ガス排出を把握、日産、ホンダ、日立と調達スコープ3事例の報道も相次ぐ-日本経済新聞 (2021年11月17日)
"勝ち組"ダイキン、部品不足を軽微化し、最高業績確保の見通しを発表-日経クロステック他 (2021年11月25日)
あと1か月強、しかし電子帳簿保存法への対応が未決定の企業がいまだ6割‐A1Aプレスリリース (2021年11月25日)
「困りごと全部聞きます」、サプライヤーとの協調路線に舵を切り、新たな購買改革施策を打ち出す日産‐日刊工業新聞 (2021年11月25日)
コロナ禍はサプライチェーンに焦点を当て強化改善が行われたが、それを継続していけるかの分岐点が今まさに到来-Mckinsey (2021年11月27日)
サプライチェーンレジリエンス強化策には、具体説明する5段階の実践アクションでの対応が有効-Gartner (2021年11月27日)
デロイトトーマツが「Global CPO Survey2021」日本語版を2年ぶりに発表、わかりやすく読む価値あり-デロイトトーマツ (2021年11月27日)
2か月で取引公正化推進アクションプランが改定されるなど、下請取引に対する監督体制の強化が進む-産経Bizほか (2021年11月27日)

2021年12月
改正電帳法の「電子受領取引書類の紙印刷保管禁止&電子保管義務化」の2年猶予が確定-与党税制改正大綱(原文リンク)、IT mediaほか (2021年12月10日)
平均年収506万円、生涯賃金2億5471万円、前年比ほぼ横ばいの給与水準の購買職-doda 平均年収ランキング (2021年12月14日)
品質基準や特許補償の緩和などサプライヤーとの基準の見直し余地が、自動車業界を例に報じられる-日本経済新聞ほか (2021年12月22日)
次は何が不足? 見通し不良の中、部材調達難での突発的生産停止は今後もしばらく続きそう-ニュースイッチ(日刊工業新聞) (2021年12月22日)
平均的な企業の年間利益の45%を今後10年で棄損する今回のサプライチェーン混乱、究極の特効薬は?-Mckinsey (2021年12月24日)
「下請〇〇強化月間」が今後も毎月続くんですか? 岸田政権の新しい資本主義。不祥事おこさないように要注意‐首相官邸他 (2021年12月30日)
購買の世界で次は何が? 2022年への大胆な24個の予測-Procurius他 (2021年12月30日)

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