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第4回 「私が勉強に費やした時間は、代替医療を志す人たちの学びの土台になればと思っています」森井 啓二 先生

東京の荒川と隅田川に囲まれた緑豊かなエリア、足立区新田に「しんでん森の動物病院」を1980年代後半に開業。一般診療に加え、ホメオパシーや鍼、メディカルハーブなどの代替医療と伝統医療を取り入れた、日本でも数少ない動物の「統合診療医」としてご活躍中の森井啓二先生。診療のかたわら数ケ国語で書かれた論文を読み、数万種類にも及ぶハーブや漢方の勉強に勤しむばかりでなく、エドガー・ケイシーの著書の大半を読破し、その医療リーディングから実際にいくつかの治療法を試したこともあるというほど、ケイシーに造詣の深いドクターとしても知られています。今回はそんな森井先生に、日々の現場でのことやケイシーとの出会い、先生の長年のご趣味で日課でもある瞑想についてなど、ちょっぴり不思議な内容も交えながら興味深いお話をたくさん伺いました。

森井啓二(もりい けいじ)
しんでん森の動物病院院長。専門は動物の統合診療医&外科医
東京生まれ

北海道大学大学院獣医学研究科卒業後、オーストラリア各地の 動物病院で研修。1980年代後半から動物病院院長として統合医療を開始。日本ホメオパシー医学会の理事、同会獣医師部会代表を務め、日本ホメオパシー医学会認定専門医、英国 Faculty of Homeopathy認定獣医師。
著書に「臨床家のためのホメオパシー・マテリアメディカ」「一歩すすんだセルフケアのためのホメオパシー」など。
趣味は、瞑想、ヨガ、走ること、油絵を描くこと。 自然が大好き。40年前にクリヤヨギたちと会う。クリヤ・ヨガ実践。

しんでん森の動物病院
森井啓二先生のツイッター

テンプル――
森井先生はまだ日本では数少ないホリスティックな獣医師さんですが、そもそもどうしてこの仕事を始められるようになったのですか?

森井――
私がまず獣医になったのは、昔ここで動物病院を開業していた父親の影響によるところが大きかったかもしれません。もともと私自身が動物好きだったということもあって、小学生の頃から父が診察や手術をする際に助手をさせてもらっていたんです。

テンプル――
え~っ!小学生にしてすでにお医者さんの助手を!?

森井――
ええ。それで、当時はまだそんなに獣医の需要がなかったのでお客様も少なく、「ああ、こんなに暇な仕事があるんだ」と思いましてね(笑)。本当のことを言えば私は風景や動物の絵を描くのが好きだったので、その頃は獣医よりも画家になりたかったんですが、よく考えたら獣医になれば絵を描く時間もいっぱいできるだろうと(笑)。

テンプル――
それで好きなことを両立させるために、獣医の道にターゲットを絞られたわけですか。子供なりに計算されていたんですね(笑)。

森井――
はい(笑)。そうして絵は趣味の世界にとどめておくことにして、いつしか本格的に獣医を目指すようになっていきました。やがて大学生になり、東京よりもっと広いところに出たいと北海道に移り、広々とした環境の中で牛や馬の飼育などを学んでいたのですが、そのうちにさらに広いところへ行こうと思い立ってカナダに留学することにしたんです。それでカナダの獣医師会や地元の獣医さんにも連絡を取り、留学先も決め、あとは飛行機のチケットをとって出発するのみ、という段になったところで突然行き先をオーストラリアに変更することにしてしまって。

テンプル――
それはまたどうしてですか?

森井――
チケットを買いに航空会社のカウンターに行ったら、まだ窓口が開いていなかったんですね。それでカウンターが開くまで時間をつぶそうと、近くの映画館に入って映画を見ることにしたんです。『クロコダイル・ダンディ』という映画でした。

テンプル――
オーストラリアのジャングルで、ワニと戦いながらサバイバルしているタフな探検家が主人公のコメディですよね。

森井――
そうそう。それを見て『やっぱりオーストラリアに行きたいな』と。その閃きに従ってカウンターへ行き、チケットを買ってそのまま現地へ飛び立ちました。

テンプル――
ええ~!? カナダに留学する準備をすっかり整えられていたんですよね?
たまたまご覧になった映画をきっかけに、行き先を大幅に変更されるとは何とも大胆(笑)。

森井――
そうですよね(笑)。まあそんなわけで、何のあてもないオーストラリアへと急きょ行き先を切り替えてしまったものですから、まず現地に着いたら研修先を探すことから始めなければならなくなりました。そこで毎日毎日、色々な動物病院をひたすらまわり続けたのですが、全く相手にされないわけです。というのも、オーストラリアではイギリスかオーストラリア、ニュージーランドいずれかの医師免許を持っていないと獣医師として通用しないんですね。日本の免許というのは効力が無いものに等しいんですよ。

それで研修先が見つからずどうしたものかと思っていたある日、現地で知り合った人が獣医師の学会に招待してくれて、そこで発表をさせていただくことになったんです。そうしたら、その学会発表が評価されて今度は逆に沢山の病院からオファーがくるようになってしまって。それで、今回は仕事ではなく勉強をするために来たのだからと、二週間ごとにあちこちの色々な病院に行かせていただくことにしたんです。

テンプル――
またとない勉強のチャンスですね。

森井――
ええ。それで約1年間、さまざまな病院で学ばせてもらいました。その間に貴重な体験をたくさんさせていただきましたが、なかでも面白かったのが、「フライングドクター」という仕事をしていた時のこと。フライングドクターというのは飛行機でオーストラリアじゅうをまわって診療をする医師のことなんですが、あるとき実際にその仕事をしているドクターのビデオを見せてもらったことがありまして。彼が世界遺産の眠る谷間の上を飛行機で低空飛行しながら診療先に向かう映像を見た時に、これはいいなあと。すぐさまその病院に「これから行きます」と手紙を出したんですよ。

テンプル――
そんなお仕事があるんですね!楽しそう。でも研修先を探すのにも苦労したほど受け入れの厳しいオーストラリアで、すぐに希望が通るわけではないですよね?

森井――
ええ。おっしゃる通り、普通なら私のような飛び込みの人はたいてい断られます。でも私の場合はラッキーなことに受け入れてもらえたんですね。その手紙を出す前に、すでにあちこちの病院に行って結構有名になっていたことや、シドニー大学などで学会発表をしていたこと、大学の生徒さんに講師として教えていたことなどが評価されたようでした。大学の先生たちや専門医、獣医師会長など皆さんが紹介状を書いてくださったことも大きかったですね。

テンプル――
そのコネクションも、森井先生がオーストラリアに渡られてから短期間のうちに築かれたものでしょう。コミュニケーション能力はもちろんですが、それだけの実力をお持ちだったからこそ、皆さんに推薦されたわけですよね。すごいなあ。

森井――
いえいえ。それで、念願のフライングドクターをするためにその病院に行くことになったんですが、そこは周りには自然以外に本当に何もないところで。私にとっては天国のような場所でした。そういえば、住む場所として家を一軒あてがわれたんですが、玄関から入り口のドアまでが50㎞ありました。しかも、その家は100万エーカー(1エーカー=3000坪)という広大な敷地内に建っていましたね。あまりに広すぎるので車では用をなさず、移動にはもっぱらプライベートジェット機とセスナを使用していたんです。

テンプル――
ええ~!? さすがオーストラリア。スケールが大きい……。

森井――
当時は政府が推奨している「牛の結核撲滅プログラム」に携わっていまして、飛行機で移動しながら野生のバッファローやアウトバック(砂漠地帯)に散らばっている牛のツベルクリン反応を調べてワクチンを打つ、という仕事をしていました。そのために毎朝、まず飛行機に乗って自宅前の滑走路から飛び立つのですが、よく通過するバングルバングルという秘境や美しい自然を上空から眺めるのが楽しみでした。

また、オーストラリアというのは国土の1割くらいが自由に入れる場所で、残りの8~9割はアボリジニの聖地か私有地のため原則的には立ち入り禁止なんですが、こういう政府がらみのプロジェクトに関わっているとどこにでも自由に入ることができたのでそれもまた貴重な経験でしたね。そういった1年間の研修期間を終えて日本に戻った後、当時父が閉めかけていた病院を受け継いで再スタートさせることにしたのです。

テンプル――
わずか1年の間にずいぶん濃い経験をなさったんですね。カナダではなくオーストラリアに行かれたのは、ある意味必然だったのかもしれないですね。

森井――
そうですね。もしあの時にカナダに行っていたら、ただ地道に研修だけを積んで帰ってきていたような気がします。オーストラリアでは雄大な自然に加え、細かいことは誰も気にしないという人々の大らかな気質のおかげで、かなりのびのびとした時間を過ごさせてもらいました。それから、オーストラリアでは西洋医学だけを徹底して行うという主流派と、代替医学のみに偏った一派とに医療が二極化していたんですが、その狭間でバランスの取れた医学を学ぶことができたという点でもとても良い環境にいたと言えますね。

テンプル――
なるほど。ということは、森井先生がホリスティックな医療を目指されるようになったのはその頃から?

森井――
いえ、それよりもう少し前からで、正確に言うと大学に入ってすぐの頃でしょうか。きっかけはエドガー・ケイシーが与えてくれたんですよ。というのも、ある日時間をつぶすのにたまたま寄った本屋さんで、エドガー・ケイシーについて書かれたジナ・サーミナラ著の『超能力の秘密』がふと目に留まったんですね。気になってすぐに購入し、家に帰って読んでみるとこれがまた面白い。そこで彼について書かれた他の本も読むようになり、ケイシーというのは稀代の超能力者であったというだけでなく、現代医学で見放された患者さんたちの症状を診断し、通常の医学や代替医療を使って治癒に導く方法をたくさん述べているということを知ったんです。

それで、私もホリスティック医療というものに関心を持つようになって、各種治療法を勉強しはじめました。ただ、日本ではまだそういった療法があまり一般的ではなかったので、本格的に勉強を始めたのはオーストラリアに行ってからなんですが。

テンプル――
他にどんな本を読まれたんですか?

森井――
日本では『転生の秘密』を。その後オーストラリアに渡ってしまったので、あとは現地で英語の本を買って浅く広くという感じで読んでいました。ケイシー・リーディングの面白いところは、時間を置いて読んでみるとまた違った内容に感じられるという点。読み返すごとに新たな気付きがありますね。

テンプル――
実際に病院でケイシー療法なども試されていたんですか?

森井――
ええ。オーストラリアにいた頃は、ヘリテージストア(アメリカにあるケイシー製品を販売しているマーケット)の商品をほとんど買って、動物に試していました。たとえばひまし油湿布とかね。

テンプル――
動物というとネコにはどうですか? うちにも二匹いるんですが、さすがに彼らにひまし油湿布をするのは難しくて、せいぜい私がひまし油湿布をしているお腹の上で一緒になって寝ているのが関の山なんですが(笑)。

森井――
確かにネコはワンちゃんのようにおとなしく受け入れてはくれないですね。動けないような相当末期の状態にならないと難しいでしょう。ただ、温かいものは好きなので湿布はいいとしても、ベタベタになる油を塗られるとなると嫌がって逃げてしまいます。また、ネコの場合はとくにその子が喜んでくれないと治療にはならないんですよね。

テンプル――
ほかに試されたものは何でしょう?

森井――
血行を促進させるためのバイオレットレイ、カルシオス、各種フォーミュラシリーズ、咳止めシロップ、イプサプetc.……、ほとんどのことを試してみましたよ。今でもバイオレットレイやヘリテージストアの製品などは必要に応じて治療に使っています。焦がした樫樽を購入したこともありますが、これは動物には使えませんでした。

現在病院では一般の診療や外科手術に加えて、こうした代替医療をいろいろと取り入れていますが、もっとも適用が多いのはホメオパシーですね。動物に対する効果が非常に分かりやすいからです。

テンプル――
ホメオパシーは動物にも有効なんですね。否定する人はよく「それはプラシーボ効果だ」と言いますが、動物には暗示なんて効かないですよね(笑)

森井――
ええ。たとえばマウスを使ったこんな実験があります。ヒ素や鉛などの元素を直接体内に注入した一方のマウスにはお水を、もう一方にはホメオパシーを飲ませるんです。そして体内の残留濃度を調べると、ホメオパシーを飲ませたマウスのほうが圧倒的に体内からヒ素や鉛などの元素を排泄している、ということが分かったんです。

これは金属ごとに研究した論文がいくつもありますが、その論文からも、また長年の経験からも確実に効果はあると言えますね。うちでは外傷からガンまでいろんな症状にホメオパシーを使いますが、たとえばガンを手術と並行せずにホメオパシーを投与しただけで治したケースがいくつもあります。少なくとも延命効果は高いと思います(※動物に対する臨床において)。

テンプル――
レントゲンで腫瘍がなくなったのを、目で確認できるんですか?

森井――
ええ。実際にレントゲンだけでなく、MRIやエコーの写真もありますよ。

テンプル――
それはすごいですね。

森井――
ただ、ガンや白血病、エイズといった難病の場合には、なるべくこまめに来院してもらい、毎回丁寧に体を触って診るようにしています。動物もストレスが原因で病気になりますが、人間と違って何にストレスを感じたのかが明確ではないので、よく見ていないといつ症状が急変するか分からないんですよ。動物って不思議なもので、飼い主の病気を引き受けてしまうこともあるんです。

テンプル――
どんな風にですか?

森井――
たとえば、糖尿病の人が犬を飼うとワンちゃんも糖尿病になってしまうとか。面白い例では、ある事故で特殊な骨折をした方が手術をした後に、飼っていた犬も事故で全く同じ部分を骨折し、同じような手術をしたというケースがあります。
そして普通ならありえないんですが、その飼い主さんの包帯を留めるギブスが、ある日どこかにぶつけたか何かで変な折れ方をしたんです。そうしたら、ワンちゃんのギブスも全く同じように折れてしまったという。

またこんな話もあります。ある飼い主さんとペットのワンちゃんのあごの部分に同じようにガンができてしまい、飼い主さんは手術をしたものの3週間で亡くなってしまったんです。そしてワンちゃんも手術をするときっと死んでしまう、と思ったご家族の方が、ホメオパシーだけで治療することを望んでうちにいらしたんですね。それでその希望通りに治療したら治ってしまった。でも、それから1年半後にホメオパシーをやめたら3週間で再発し、また再投与してよくなり……ということを繰り返し、結局亡くなってしまいましたが、その症例での寿命から考えると2年半は長生きしたんです。
もし飼い主さん同様に手術をしていたら、同じようにもっと早いタイミングで亡くなっていたかもしれません。そう考えると不思議ですね。

テンプル――
どうしてそういうことが起こるんでしょう。やはり常に一緒にいるとエネルギーが同調するので、同じような出来事に遭いやすいということでしょうか。

森井――
そう、動物はエネルギー的に敏感だということもありますし、非常に愛情深いので飼い主の波動を何でも共有するというか引き受けてしまうところがあるんです。

テンプル――
そうなんですね~(涙)。そんな森井先生も、動物の気持ちがよくお分かりになるのでは?

森井――
アニマルコミュニケーターさんのように動物と会話をするということはできませんが、目の動きや仕草、オーラなどから、ある程度は動物の言いたいことを理解できているようには思います。でも、それが本当に動物が言おうとしていることなのか、それとも自分のフィルターを通してのことなのか、確信はないですね。まあ朝から夜まで動物とずっと一緒にいますので、全く触れ合っていない方よりも多少はコミュニケーションが取れているとは思いたいですが(笑)。

テンプル――
以前、森井先生が「動物はぎりぎりまで痛みや苦しみを我慢しているので、末期になるまで病気にかかっていることが分かりにくい」と仰っていました。森井先生はそういう動物たちの心の声も読み取られるんでしょうね。

森井――
そうですね。パッと見れば「いまこの子はここが苦しいんだな」ということは分かります。でも、犬なんかは比較的病気を分かりやすく示してくれますが、ネコの場合は本当に分かりにくい。それはより野生に近い動物だからでしょうね。というのも野生動物の場合、体が弱ること=死を意味するので、具合の悪さを隠してしまうという性質があるからなんです。

だからワクチンを打つ時や健康診断で、大きい病気を発見するということが結構多いんですね。そうならないようにするには、毎日彼らの体をよく触ること。人間の手の感覚というのはものすごく精密なので、ちょっとした感触の違いも検出できるんですよ。それに、ネコの一部は違いますが、基本的に動物というのは触られるのが大好きです。とくに犬は一番喜びますから、ぜひ撫でたりハグしたりとたくさん触ってあげてほしいですね。

チャクラの状態が見えるという特異能力を持っている人たちに言わせると、犬はハートのチャクラがないんだそうです。つまり、その部分のエネルギーを溜める必要がない=愛に溢れているということ。本当にそうなのかどうかは分かりませんが、飼い主にいつも忠実な犬の姿を見ていると、確かにそうかもしれないなと思います。

テンプル――
犬や猫なども亡くなると霊として存在するんでしょうか。輪廻をするという話もたまに聞きますが……。

森井――
私がオーストラリアにいた時代のことですが、一緒に住んでいた友達がフランスの有名な霊能力者のところに行ったことがあって、「あなたと一緒に住んでいる日本人の男性のまわりに、たくさんの犬猫がいてサポートしているのが見える」と言われたそうなんです。自分でも昔からそんな感覚を感じていたので、それを聞いて「ああやっぱり思い過ごしではないんだな」と思いました。今だに自分のまわりには治療して亡くなった動物たちがいて手助けしてくれているのを明らかに感じますよ。

ただ、そのメンバーは当時の子たちとは違うようなんですね。ですから、ある一定の時期になると光の中に行ってしまうんじゃないかなと思っているんです。彼らが輪廻しているかどうかは全く分かりませんが、ケイシーやシルバーバーチは、動物は輪廻をしないと言っていますよね。確かに人間のように悪いカルマを積むことがないので、生まれ変わってやり直す必要がないですから(笑)。

テンプル――
想像するだけで何だか胸が熱くなるようなお話ですね。ところで森井先生ご自身は、ケイシー療法を試されたことはありますか?

森井――
はい、もちろん。今でも一番よく使うのはやはりひまし油湿布ですね。以前はケイシーの教え通りに規則正しいサイクルで行っていましたが、今は気が向いた時だけにしています。そもそも体調が悪くなるということがあまりないので、そろそろ浄化したほうがいいかな、という時や断食の後などに行うことが多いですね。それから以前はケイシー療法のハーブトニックを飲んだり、シャンプーや歯磨き粉をヘリテージストアから購入したりしていましたし、インピーダンス装置も使っていました。ケイシー療法で推奨される製品はほとんど網羅しましたね。

テンプル――
ひまし油湿布をされてみて、実際に何か体感なさったことはありますか?

森井――
体が元気なので何かが明らかに変わったということはないんですが、ひまし油湿布を行った後はとにかく気分がすっきりしますし、体がぐっと軽くなるのを感じますね。それからうちの一族の中で私だけ盲腸炎に罹っていないんですが、これまで盲腸のあたりが痛くなると必ずひまし油湿布をしていたので、そのおかげではないかなと思っています。

テンプル――
それは嬉しいお言葉ですね。手前味噌ですが、私もひまし油湿布がもっと世の中に浸透していけば、日本の医療費の問題はかなり軽減するのではと思うんですよね。

森井――
そうですね。西洋医学は確かに素晴らしいものではありますが、それ一辺倒ではこの先きっと治療に限界が出てくるような気がします。だからといって代替医療のみに頼るのも命を危険にさらす場合があって危ない。ですから、両方を取り入れていくというのがベストですね。外科に内科、そして東洋医学や伝統医学、民間療法などを網羅している医師であれば、その方に合った最適な治療ができるんじゃないでしょうか。

テンプル――
先生はまさにそれを実践されている方ですが、代替医療についての勉強量といったら並ではないと以前、同業の方からお伺いしました。

森井――
いや、私の場合はずいぶんと無駄な勉強ばかりしてきてしまって(笑)。たとえば漢方薬でいうと、かつて15000種類ほどの生薬について全て詳しく覚えましたが、実際に治療に使えるものというとわずか数種類にすぎませんでした。ホメオパシーの『マテリアメディカ』の本を書く時にも25000種類のハーブを徹底して勉強しましたが、そのうち使えるものはたった3~400種類のみ。ですから、残りははっきり言って無駄な知識になっているわけです。

それでも勉強を続けて、体型的にまとめようとしているのは、その無駄なことでも知っているのとそうでないのとでは知識の厚みや深みが変わってくるから。そして、後からこの道を志す人にとってこれが楽に学べる土台になればいいと思うからです。こうして誰かが無駄な時間を費やさないと、代替医療の世界が進歩していきませんからね。

テンプル――
先生がそこまで時間を費やされるのに値するほど、ホメオパシーには魅力があるということですよね。

森井――
そうですね。やはり、回復は難しいと思われた動物の病気が実際に良くなっていくという奇跡を一度でも目の当たりにすると、やめられなくなりますよね。

テンプル――
先生は診療をなさり、その合間に勉強をなさって、本も書かれてetc.……。一体どんな風に一日を過ごされているんだろうと思います。きっとかなり凝縮したスケジュールをこなしてらっしゃるんでしょうね。

森井――
確かに生薬の勉強をしていた45歳くらいまでは、毎日診察が終わってから100~300の論文に目を通していましたから、一日3時間くらいしか寝ていませんでしたね。でも今は寝ることも大切にしていますし、夜中は瞑想の時間を極力とるようにしているので、以前に比べてだいぶゆるやかな時を過ごしていますよ。

テンプル――
そういえば、先生は瞑想の達人だと各方面から伺っていますが、何か特別な瞑想法でもしていらっしゃるんですか?

森井――
西洋におけるヨーガの先駆者、パラマハンサ・ヨガナンダ大師が1920年に設立した、SRF(セルフ-リアリゼーション フェローシップ)という由緒正しいグループで学んだテクニックによる瞑想をしています。このテクニックに基づいて地道に2年ほど瞑想を続け、ある程度のレベルに達すると簡単なテストが行われるのですが、それにパスすると高度なヨーガのテクニックであるクリヤ ヨーガを学ぶことができるようになります。

これは、内なる静けさの中で、平安や神の存在への気付きを得られる瞑想法としてかなりおすすめですね。SRFでは偏った思想の押し付けなどはなく、純粋に瞑想やエネルギーを動かすテクニックを体系的に教えてくれるので、初心者から安心して取り組めるんですよ。

※パラマハンサ・ヨガナンダ大師……1893~1952年。数千年前のインドに源を発する神聖な霊性の科学、クリヤ ヨーガの普及に努める。世界中の宗教の根源的な共通性を強調し、直接、個人的に神を経験するための誰にでも実践することのできる方法を教えた。彼の生涯を描いた『あるヨギの自叙伝』は、長年にわたるベストセラーとして世界で18の言語に翻訳されている。(参考―SRFオフィシャルサイト)

テンプル――
瞑想はいつから始められたんですか?

森井――
瞑想自体を始めたのはもうだいぶ前からなんですが……。オーストラリアから日本に戻ってきた後なので、20代後半~30歳くらいの時でしたね。実は、瞑想を始めたいきさつにも面白い話があるんですよ。かなり時を遡って8歳くらいの頃だったかな。私のところにある方が来てくれまして。それはヨガナンダ師の師匠のさらに師匠の師匠、といった方でした。

テンプル――
どういうことですか???

森井――
光に包まれた何人かのお付きの方々とともに、上から降りていらした「その方」にお会いしたという、ほんの一瞬でしたがかなり強烈な体験をしたんですね。睡眠中ではなく起きている時のことでした。今から思えば、あの頃からちゃんと瞑想をやっておけばよかったと思うんですが(笑)。

それで大人になってもその記憶がずっと残っていて、またあの方に会ってみたいと思うようになりまして。彼の顔も名前も分からないけれど、風貌からしてインドのヨギーのようだったなと。それなら、とっかかりとしてインドの瞑想でもしてみれば、何か分かるようになるかもしれない。そんな気持ちから20代になってまずTM瞑想を始めてみることにしたんです。すると始めてからしばらくした頃、また瞑想中に子供の時に会った方とは違いますがすごい人が現れまして。その方が人間のいない手つかずの太古の星に連れて行ってくれ、いろいろな体験をさせてくれたんですね。

なかでも一番強烈に覚えているのは『千里眼』で、2㎞先に流れている美しい清流だけでなく、さらにその川底に沈む石の裏に張り付いた虫を克明に見る、という体験をさせてもらいました。それまでは高次元から降りてくる方というのはギリシャ彫刻のような美しい姿をした存在だろうと勝手にイメージしていましたが、その方は光り輝いてはいるものの背が低くて太っていて、ハゲた普通のおじさんだったんです(笑)。でも、実はその方はTM瞑想を広めたマハリシの師匠だったと後で知って驚きました。

テンプル――
ええ~。それは後で写真か何かをご覧になって気付かれたんですか?

森井――
そうなんです。写真を見て、「あっ、このおじさんだ!」と(笑)。もっとも、そのマハリシの師匠も子供の頃に会ったヨガナンダ師の師匠も、自分から名乗ったわけではないですしすでに亡くなっているので(笑)、本当に本人に会ったのかどうかを確かめるすべはありません。ただ、写真を見た私の感覚だけでなくその後に導かれた流れからみても、2人に会ったのはほぼ間違いないだろうなとは思っています。

そんな面白い体験もできてTM瞑想はいい学びになったんですが、もっと他の瞑想も試してみようと思い、あれこれ探して最終的にヨガナンダ師のSRFに辿り着いたというわけです。

テンプル――
なるほど~。私も光に包まれた存在に会ってみたいですね~。

森井――
会えますよ。どうすればいいかというと、毎年クリスマスイブからクリスマスにかけてずっと瞑想して過ごすんです。クリスマスの日ってなぜか瞑想が深くなりやすいうえに、低次元の存在からも守られるような磁場ができているから、安全に瞑想ができるんですよ。それを毎年ずっと続けていると、誰かしら降りてきてくださるようになりますよ。

あと最近は昔に比べて瞑想をしやすい「場」ができているので、気軽にトライされてみるといいんじゃないでしょうか。瞑想は純粋なテクニックだけを学んだら、あとは自己流で行っても構わないんです。ただし、毎日同じ時間に、同じ場所で瞑想するのが一番効果的ですね。

テンプル――
光の存在に会えるようになるまで、そう簡単には行かないと思いますが(笑)、クリスマスの瞑想はぜひやってみたいですね。ところで先ほど、8歳の頃に神秘体験をされた話をなさっていましたが、もともとそういう不思議な能力をお持ちだったんですか? 大学生の頃にケイシーの『超能力の秘密』を読まれたのも、もしかするとご自分の経験とどこかリンクすることがあったから……?

森井――
実は、私は小さい頃からいわゆる勘の冴えた子供で、ちょうど『超能力の秘密』に書かれているのと同じようなことをすでに体験していたんですね。ですから、読んでいてどれも思い当たるなと。たとえば生まれてすぐに『不自由な肉体に入ってしまった』と自覚していたり、前世や中間世(今世と前世の間)の記憶をずっと覚えていたり。

生まれる前までは食事と排泄のない世界にいたのに、それをしなくてはいけなくなったことに理不尽さを感じて離乳食を食べることを拒んだり、といったようなことですね。

テンプル――
ええ!?(笑) 赤ちゃんの頃にそんな体験を?

森井――
はい。多分2~3歳の頃のことだったと思います。前世の記憶は小さい時のほうが鮮明に残っていましたけれど、今も断片的に覚えていますよ。今世に強く影響を与えているのは、アメリカ大陸で先住民だったときの前世。それとインドで何か悪いことをした記憶がありますね。ですから今世では、積極的に良いことをしようと思っています(笑)。

テンプル――
う~ん、もう十分おやりになっているような気がしますが(笑)。最近は何か不思議な体験をされましたか?

森井――
とくに声を大にして言うようなことは無いのですが……。以前、瞑想中にガイドから未来の世界へと連れて行ってもらい、ある場所を見たことがあったんですね。それがどこなのかずっと分からずにいたのですが、最近になってある人が私に「ここに土地を買わないか」という話を持ってきて、そこを見てみると……。以前、瞑想中に見たのと同じ場所だった、という不思議なことがありました。それから360年後の世界を見に行った時には、この地球が緑に溢れていてとても明るく綺麗な場所になっていたのが印象的でしたね。

テンプル――
360年後、地球が美しい場所になっているようで安心しました。そんな先生がこれから目指されていることは何ですか?

森井――
身近なところではチーム医療の体制を整えること。たとえば獣医さんだけでなく、ハーブやフラワーエッセンスetc.……いろんな専門家と組んでみんなで治療していく、というようになれば理想ですね。それから、すでにまとめてはあるものの、まだ出版していないホメオパシー関連の書物を世に出すことができればいいなあと。ただ、これが世に出ることになるかどうかはもう上の方で決まっていることだと思うので、それにお任せするだけですね。必要がなければお蔵入りになるんでしょうし。

テンプル――
えーっ! それはもったいなさすぎます! どなたか出版社の方、ご協力願えませんでしょうか(笑)。最後に、動物と一緒に暮らすということについて飼い主さんに何かアドバイスがあればお願いします。

森井――
動物と一緒に暮らす子供は、明らかに優しく育っていくという傾向があります。うちの地区でも以前、子供による動物虐待があったんですが、誰が虐待をしているのか周りが教えに来てくれたんですね。すると虐待をしているのは例外なく動物を飼ったことのない子供だということが分かった。その一方で、通報しに来てくれるのは全員動物を飼っている子たちだったんです。

つまり、動物を飼っているかどうかで、それくらい動物への対し方に違いが出てきてしまうんですね。ですから、とくに小さい子のいるご家庭で動物を飼ってみてほしいですね。普段なかなか自然の中で遊ぶ機会を持たない子供たちにとって、動物と触れ合うことはまさに自然を知ることに繋がりますし、命の勉強にもなります。また人付き合いが苦手でも、動物になら心を開くことができるかもしれない。もちろん世話などで大変なことはあるでしょうが、それを上回るようなメリットがたくさんあるんです。

そうして人と動物が対等であるということを学び、小さな命を大切にできるようになると、人のことも大事にできるようになる。もっと言えば動物や人、自然に愛情を注ぐことは、ひいては世界や地球、宇宙に貢献することにも繋がるんです。お子さんに限らず、ぜひ皆さんにより動物の存在が身近に感じられるような暮らしをしていただきたいですね。

テンプル――
小さな命を大事にすることが、宇宙に貢献することにも繋がるなんて素晴らしいですね。私もうちにいる二匹の子たちにしっかり愛情を注ぎます(笑)。今日はどうもありがとうございました。

インタビュー:2011年

今日は素敵なお話をたくさんしていただき、本当にありがとうございました。
インタビュー、構成:河野真理子

<お願い>
ペットに対するホメオパシーのご相談は、お近くでホメオパシーを学んだ獣医師をご自身で探してご相談下さい。森井先生は、近隣にお住まいの方のペットのみ診察を受けつけています。

人間に対するホメオパシーのご相談は、資格あるホメオパシードクターにご相談下さい。

・東京:赤坂ロイヤルクリニック 渡辺順二先生
・大阪:クラシカルホメオパシークリニック 渡辺奈津先生

森井先生からのアドバイス

ハーブは鮮度が命なので、常備せずに必要になった時に購入するのがよい。
ホメオパシーは一般的には使用法が難しいので、ホメオパシーを学んだ獣医師に相談するほうが無難
救急用には、Aconite(急病、事故、ショック)、Arnica(打撲、外傷)、Arg-nit(不安)、Arsenicum albun(胃腸炎)、Belladonna(高熱)、Staphisagria(虐待時)などを推奨。

風景画:作/森井先生

病院の待合室には、森井先生の描かれた風景画のほかに、とくにお気に入りだというケイシーのリーディングが2つ飾られている。またスタッフ向けのトイレには、毎日日替わりでやはりケイシーのリーディングが貼ってあるのだとか。とくに森井先生が個人的にお好きだというリーディング。

「岸辺に打ち寄せる波の大自然の声とともに訪れる朝の、虫たちの声とともに更けゆく夜の奏でる音楽に、また自然界に本来の意識とめざめを与えている全創造的力を讃える歌の中に1つとなっているあらゆる世界の奏でる音楽に、ひととき思いをはせてみよ。そして、天体の歌声にも似た音楽を引き出すために、あなた自らがそれをよく味わい、調和をとってみよ」2581-2

Think, for a moment, of the music of the waves upon the shore, of the morning as it breaks with the music of nature, of the night as it falls with the hum of the insect, of all the kingdoms as they unite in their song of appreciation to an all-creative influence that gives nature consciousness or awareness of its being itself. And harmonize that in thine own appreciation, as to bring music akin to the song of the spheres.(2581-2)

「(このリーディングによって)、美とは、外の状態としてよりも、むしろ内から来るものであることを、この実体は理解した。 なぜなら、外見は色あせる。しかし、生命の美しさ、人間性の美しさは、自己のパーソナリティを通して輝き、色あせることのない美を与える。 この人の理解に関して与えられた警告にあるように、自分の努力によって達成されるべきものであるが、美しさは内から輝き出さなければならない。
肉体の外見や、容姿の造作は、自己の理想に従って型取られなければならない。自己の内的存在を通してその人が輝くことで、それらのことは外に現れるだろう。 自分がなろうとするところの者になるための自分自身の努力によって、これを達成せよ」2071-2

Through those same channels that the entity gained this understanding that beauty comes from within, rather than as an external condition - for the external fades, but that beauty of life, of individuality shining through that personality of self, gives the beauty that fades not - and as the warning was given respecting the understanding of self, and that to be accomplished through the efforts of self, these must radiate then from within. As to the physical appearance, and the outward show of face and figure, necessary that these be modeled after that of the self's ideal, that these may manifest that the body would radiate through its inner being. Accomplish this through that of self's own application to BECOME that the body would make of self. (2071-2)


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