初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『PVN.42/4 マゼラ・アタック』
●開発経緯
U.C.0076年、ジオン公国は“MS-06 ザクII”をベースに様々なバリエーション機を開発しました。その中には、コロニー落とし後の地球占領作戦に投入するための“MS-06J 陸戦型ザクII”や“MS-06M ザク・マリンタイプ”といったものがありました。
しかし、主戦場はあくまで宇宙であったため、局地戦用MSに多くのリソースを注ぎ込むことはできません。そこで、MSよりも遥かにコストの低い戦闘車両や航空機で戦力を補おうとしたのです。こうして、開発されることになったのが“PVN-42/4 マゼラ・アタック”です。
●特異な形状と性能
マゼラ・アタックは公国軍の主力戦車だった“M1戦車”をベースに開発されました。駆動にはガスタービン・エンジンが使用されており、コロニー内での運用は考えられていません。最高速度は時速120kmと意外と速く、ザク以上です。
砲塔部は“マゼラ・トップ”、車体部は“マゼラ・ベース”と呼ばれ、分離機構を備えています。分離したマゼラ・トップは航空機のように時速300kmで飛行することができ、両翼に設置されたVTOLエンジンによって、ヘリコプターのようなホバリングも可能です。これは地球連邦軍の主力戦車である61式戦車の不意を突いて、弱点の上部装甲を狙うために設けられました。
機体の操縦はワンオペで、マゼラ・トップのコックピットで行われます。人的資源の乏しい公国軍らしい措置と言えます。また、コックピットがキャノピーになっていたり、砲塔が異常に高いのは、ミノフスキー粒子散布下での広い視界の確保や射程距離を延長するためです。
●様々な問題点を抱える結果に
大口径の主砲による高い火力、MSと共同作戦を取ることのできる機動性、分離機構という特異な機能を持つマゼラ・アタックでしたが、実戦投入される中で様々な問題点が浮かび上がりました。
まず、様々な要素を取り込んだが故に機体が異常に大型化してしまいました。一緒に並ぶと、大型と言われる61式戦車ですら可愛いと思えるほどの巨大さです。これにより、被発見率、被弾率は跳ね上がりました。
次に分離機構を採用したことにより、砲塔を旋回させることができません。そのため、射角が制限され、車体を動かして向きを変えなければなりません。これは戦車としては致命的な弱点です。
また、分離したマゼラ・トップは僅か5分程度しか飛行できません。しかも、飛行しながらの砲撃は安定性を欠き、命中精度は著しく低下してしまいます。さらに一度分離すると、再接続には専用の設備が必要になり、ほとんどの場合、不時着するしかありませんでした。
やはり地上戦力に関しては、連邦軍に一日の長があり、61式戦車の方に分があると言えるでしょう。
●スペック
全高:13.4m
全長:15.9m
全幅:7.4m
全備重量:42.4t
馬力:16,000馬力
最高速度:時速120km、時速300km(マゼラ・トップ)
乗員:1名
主な搭乗者:クラウレ・ハモン、ボーン・アブスト、バリー、ルネンほかジオン公国軍兵士
●基本武装
○175mm無反動砲
本機の主砲で、マゼラ・トップ部に装備され、高威力、長射程を誇ります。榴弾、成型炸薬弾、装弾筒付翼安定徹甲弾など弾種の切り替えも可能です。
○35mm3連装機関砲
マゼラ・ベース部に装備され、歩兵支援に使用されます。61式戦車やMS相手には威力不足だったようで、ほとんど効果はありませんでした。
○スモークディスチャージャー
発煙弾発射機で、北米戦線のものには装備されていませんでしたが、欧州戦線やアフリカ戦線、東南アジア戦線の一部で運用されていました。
●意外な形で終戦まで活躍
“戦車”としては問題も多かったマゼラ・アタックでしたが、MSや歩兵の突入を支援する所謂“自走砲”としてはそれなりに有用であったようで、多くの戦果を上げています。
また、補給の行き届いていない前線では、マゼラ・トップを“カーゴ”に接合して武装させたり、MS用の手持ち火器“マゼラ・トップ砲”に改造して物資不足を補うような現地改修が行われていました。
マゼラ・ベースの方も脚部を損傷したMSと接合して“ザクタンク”に改修され、作業用や後方支援機として運用されました。
このようにその姿を変えながらもマゼラ・アタックは終戦まで活躍したのです。
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