初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MS-06J 陸戦型ザクII』
●開発経緯
U.C.0076年、ジオン公国は“MS-06 ザクII”をベースに様々なバリエーション機の開発を行いました。その中のひとつが“ブリティッシュ作戦”の後に行う地球占領作戦に投入するための地上戦に特化した機体の開発です。
MS-06について、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
しかし、コロニー国家であるジオン公国には、現地でのテストを行う術がなく、技術者は実際に地球に降りたこともありません。そのような状況で本格的な地上戦用MSを開発することは不可能だと判断し、高い汎用性を持つF型をベースに蓄積された実働データやシミュレーターを使用することで、開発が進められていくことになります。
●F型からの改修点
最初にF型から地上では必要としない宇宙線による被爆を防ぐための対放射線装備、コックピット内の酸素濃度を一定に保つための生命維持装置などをオミットしました。
地上での移動は基本的に歩行がメインとなるため、スラスターはあくまでも補助的なものです。従来の推進剤に冷媒を混ぜて、スラスターを使用する際に排熱を行う方式では、十分な機体の冷却を行うことができません。しかし、地上には大気が存在するため、熱核反応炉を空冷式に換装しました。
また、脚部の姿勢制御用スラスターもオミットし、空いたスペースに対地センサーやハードポイントを設置しました。これにより、脚部にも火器を装備することができるようになりました。
各部インテークには防塵フィルターが設置され、関節部は軟質素材でシーリング処理が施されています。重力圏で特に負荷の大きい脚部関節は大きく強化されました。
その他にも、マニピュレーターは手持ちの兵装には常に1Gの負荷がかかっていることを前提としたシステムに刷新され、モノアイは大気層の存在に対応した改修が施され、赤外線センサーも向上しています。
●第二次降下作戦より実戦投入
こうして、J型はU.C.0078年9月下旬にロールアウトされ、翌10月には80機が生産されています。その後、“地球侵攻作戦”の発動に伴い、U.C.0079年2月よりグラナダ工廠にて増産されます。ただ、第一次降下作戦には間に合わず、本格的な実戦投入は第二次降下作戦からということになりました。
その後、J型の生産拠点は本作戦で手に入れたキャリフォルニア•ベースに移ります。また、第一次降下作戦で地上に降りたF型はすべてJ型に改修されました。
●スペック
頭頂高:17.5m
本体重量:49.9t
全備重量:70.3t
ジェネレーター出力:976kw
スラスター総推力:45,400kg
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:アコース、コズン•グラハム等ランバ•ラル隊、キリー•ギャレット、エルマー•スネルほかジオン公国軍MSパイロット
宇宙用装備をオミットしたことで、軽量化や生産コストの軽減に成功し、重力戦線における主力機として活躍しました。当然の話ですが、これにより宇宙での運用はできなくなりました。
総推力がF型よりも低下しているのは、先に述べたように地上での移動は主に歩行であるため、スラスターが小規模なものに換装されたことや姿勢制御用スラスターがオミットされたためです。軽量化された分、地上での機動性はF型を上回っています。
また、地上用のオプション兵装も開発されたことで、火力も向上しました。
●基本武装
○120mmザク•マシンガン
MS-06以外にも広く使用されたジオン公国軍MSの一般的な兵装です。モノアイとスコープを連動させることで、精密射撃も可能です。装弾数は145発で、セミオートとフルオートに切り替えが可能になっています。徹甲弾、榴弾、徹甲榴弾、成形炸薬弾など弾種も豊富に用意されています。
○280mmザク•バズーカ
弾速に難のある兵装でしたが、地上戦ではより猛威を振るうことになりました。装弾数は単発もしくは5発とされますが、装填する描写がなく、詳細は分かりません。
○ヒート•ホーク
セラミック系高分子化合物の刃を赤熱化することで、対象を溶断します。数回使用すると、刃先が劣化してしまい、交換が必要になります。
○シュツルム•ファウスト
使い捨てのロケット・ランチャーで、命中精度に難はありますが、威力はザク・バズーカ以上と非常に強力です。本機以外のMSにも広く使用されています。
○3連装ミサイル•ポッド
両脚部のハードポイントに装備されます。火力強化のためのサブ•ウェポンという位置付けです。劇中では、ガンタンクの脚部を破壊していました。
○クラッカー
MS用の多弾頭手榴弾で、投擲後に6つの弾頭が分離、爆発します。榴弾であるため、効果範囲が広い反面、威力は高くありません。目眩まし用の閃光弾もあります。
○Sマイン
機体各部に内蔵された近接防御用の対人兵器です。発射後に空中で爆発して、破片の雨を降らせます。
○マゼラトップ砲
マゼラアタックの主砲をMS用の手持ち火器に現地改修されたもので、制式採用された兵装ではありませんが、十分な補給を受けることができないジオン兵にとっては貴重な兵装でした。
●“YMS-07計画”と“YMS-08計画”
J型は決して悪い機体ではありませんでしたが、宇宙用の機体を地上用に改修することに限界を感じており、J型が生産されている間にもMS-06を全面改修した新たな地上戦用MSの開発が進められていくことになります。この新型開発にはジオニック社だけでなく、ツィマット社も手を挙げ、“YMS-07計画”と“YM-08計画”が同時に進行していきました。
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