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初心者のための機動戦士ガンダム兵器解説『MS-06 ザクII』

●開発経緯

 ジオニック社によって、初めて制式採用された“MS-05 ザクI”はMSの有用性を確信させる出来でした。そのため、ジオン公国はMSを宇宙艦艇に替わる主力兵器として採用することを決定します。

 そのプランは、ベースとなる汎用機を開発し、一部パーツの換装やプログラムの変更によって、局地戦用機を展開していくというものでした。

 同一の生産ラインを用いて、バリエーション展開していくことは、コストダウンや生産効率を上昇させることができるため、国力の乏しいジオン公国にとって、最善であると考えたのです。

 既に完成していたMS-05は、徹底的に無駄を省いた完成度の高い機体でしたが、それ故に拡張性に乏しく、ベースとなる機体としては不適格と判断されました。

 中身がギッチリ詰まった道具箱のようなもので、道具を順番通り、決まった場所に置いていかないと、綺麗に収まりません。道具を買い替えるにも、少しでも形が違えば、蓋が閉まらないような状態です。

 そのため、バリエーション機を作るのが難しく、整備性も悪いという欠点を克服するために新たな機体が開発されることになります。

●MS-06の誕生

 ジオニック社はMS-05の欠点を克服するため、思い切った改修を施しました。それは動力パイプの一部を外部に露出させたのです。

 MS-05は駆動を司る重要なパーツである動力パイプを守るため、装甲の内側に収めていました。しかし、高速で移動するMSの動力パイプを狙い撃つことは困難を極めますし、仮想敵である宇宙艦艇のメガ粒子砲やミサイルを浴びれば、ほとんど意味がありません。

 動力パイプを露出させることで、機体内部に余裕ができ、パーツの換装が可能になります。これにより、バリエーション機の展開だけでなく、整備性も向上、新規パーツを取り入れることで、性能の底上げも可能となり、兵器としての寿命も延ばすことができます。

 さらに動力パイプの大口径化も可能になり、駆動効率が向上しただけでなく、新たな冷却システムも導入されます。従来機では推進剤に蓄熱剤を混ぜ、熱核ロケットエンジンから放出することで、排熱を行っていましたが、動力パイプ内に冷媒の通る道を設け、熱を比較的温度の低い部分に分散させることで、稼働時間の延長に成功しています。

 機体内部に余裕が生まれ、排熱の問題も改善されたことで、ZAS社の新型熱核反応炉を搭載することが可能となりました。これにより、ジェネレーター出力が向上し、MS-05を遥かに上回る性能を実現しました。

 また、ランドセルの換装を前提に設計されていて、汎用性と拡張性も確保されています。

 当初、MS-05Cとして開発されていましたが、外観も内部構造も大幅に変更されたため、新たな型式番号“MS-06”が与えられることになりました。

●MS-06C 前期生産型ザクII

 こうして、新たな主力兵器として開発された“YMS-06 試作型ザクII”は制式採用されることになります。若干の手直しが加えられた後、U.C.0077年8月に“MS-06A 先行量産型ザクII”がロールアウトされ、翌U.C.0078年1月に量産が開始、84機が軍に納入されました。

 しかし、MS-06Aの評価は高かったのですが、突然生産が打ち切られてしまいます。“キシリア機関”と呼ばれる諜報機関が「連邦軍もMSの研究開発を始めた」という情報をキャッチしたことによって、兵装の強化が命じられたためです。

 MS-06Aは、両肩部にMS-05のような球状のショルダーアーマーを装備していたのですが、右肩をL字型の複合装甲を用いたシールド、左肩をスパイクの付いたショルダーアーマーに変更されました。

 また、戦術核の運用を前提に装甲を三重複合装甲に変更し、核爆発による放射線を完全に遮断できるように改修が加えられました。

 この“MS-06C 前期生産型ザクII”はU.C.0077年9月にロールアウトされ、U.C.0078年1月から生産が開始、同年6月にはA型から完全に生産が切り替わっています。236機が生産され、ルウム戦役までの主力機として活躍することになります。

 一方、A型は教導機動大隊に送られ、訓練に使用された一部を除いて、ほとんどがC型に改修されたため、“幻の機体”と呼ばれるレアな機体となってしまいました。

●MS-06F 量産型ザクII

 C型は対核装備が施されている関係で、本体重量が72tにも達していました。そのため、燃費が悪く、稼働時間が短い、重力圏内では機動性が著しく低下するという欠点がありました。また、生産コストの問題も付きまといます。

 そこで、対核装備をオミットし、汎用性に特化した“MS-06F 量産型ザクII”が開発されます。開戦までにロールアウトしているのですが、本格的に実戦投入されたのは、核兵器の使用を禁止する南極条約締結後になります。以降は主力量産機として、終戦までに3246機が生産され、MSの生産数としては最多記録を打ち立てました。

“MS-06F 量産型ザクII”

●スペック

頭頂高:17.5m
本体重量:56.2t
全備重量:74.5t
ジェネレーター出力:976kw
スラスター総推力:43,300kg
装甲材質:超硬スチール合金
主な搭乗者:デニム、ジーン、スレンダーほかジオン公国軍MSパイロット多数

 対核装備をオミットしたことで、軽量化とコストダウンに成功しました。重力圏内での機動性も確保され、より汎用性の高い機体へと昇華しました。さらに推進剤の容量も増加し、稼働時間の延長も行われています。

 さらに熱核反応炉をジオニック社とM&Y公社によって共同開発された新型に換装、コックピットの緩衝装置も改良されました。また、新たな火器の開発に伴い、火器管制システムも更新されています。

●基本武装

○120mmザク•マシンガン
 105mmザク•マシンガンの発展型です。威力向上のため、口径が120mmになり、ドラムマガジンが上部に移設されたことで、取り扱いが改善されています。装弾数は145発で、セミオートとフルオートに切り替えが可能になっています。徹甲弾、榴弾、徹甲榴弾、成形炸薬弾など弾種も豊富に用意されました。本機以外のMSにも広く使用されています。

○280mmザク•バズーカ
 MS-05のものの改良型で、スコープやグリップが追加されています。後部にガス噴出口が設けられており、反動も軽減されています。装弾数は単発もしくは5発とされますが、装填する描写がなく、詳細は分かりません。

○ヒート•ホーク
 MS-05のものの改良型で、刃先の加熱効率が向上しています。しかし、開発が遅延したため、完成したのは開戦後です。数回使用すると、刃先が劣化してしまい、交換が必要になります。

○シュツルム•ファウスト
 使い捨てのロケット・ランチャーで、命中精度に難はありますが、威力はザク・バズーカ以上と非常に強力です。本機以外のMSにも広く使用されています。

“ヒート•ホーク”

●何故やられ役となってしまったのか?

 MS-06は一年戦争緒戦で大活躍し、今後のMS開発の礎となった名機として語られることの多い傑作機です。しかし、本編ではやられ役として描かれることが多いのも事実です。それにもちゃんとした理由があります。

 まず、『機動戦士ガンダム』本編は一年戦争後期を描いており、連邦軍もMSを持っています。連邦軍のMSはMS-06を始め、先に実戦投入されたMSを仮想敵としているわけですから、それらを倒せないと意味がありません。

 また、ジオン公国は資金や資源以上に兵士不足に悩まされていました。ルウム戦役で熟練パイロットを多数失ってしまったことも大きく影響し、ほとんどのパイロットは新兵です。本編をご覧いただくと分かると思いますが、シャアのファルメル隊でいえば、ドレンとデニム以外は新兵ばかりで、補充される兵士も同じく新兵です。

 シャアのようなエースでさえ、ガンダムの性能に苦戦していたわけですから、新兵が駆るMS-06が太刀打ちできないのは当然といえば当然のわけです。

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