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緑の勇者-J1昇格プレーオフ決勝2023-

東京ヴェルディがJ1昇格を果たした。
その瞬間は、不思議な感覚だった。
喜びの感情はたしかに爆発した。
その瞬間に、涙は出なかった。

5年前のジュビロ磐田とのプレーオフ、自分はヤマハスタジアムで試合後に泣いていた。負けて悔しかったからではない。
それまで目の前でサポーターを鼓舞していたコアサポーターの方が「また来年頑張りましょう!」と泣きながら言った瞬間、自分は涙をこらえることが出来なかった。


あれから5年。迎えた2023年プレーオフ決勝。相手は同じくオリジナル10クラブの清水エスパルス。舞台は新しくなった国立競技場。観客は5万人を超えた。緑に染まったゴール裏に感動すら覚えた。これまでの努力や想いや出来事がこの光景を生み出したのだろう。

緑に染まる国立のゴール裏

試合はエスパルスのペースで進み、多くのシュートを浴びた。後半早々に下部組織からの生え抜きでキャプテンの森田が不運なハンドでPKを献上。サッカーの神様が居るとしたなら、なんて残酷なことをするんだ、と思った。PKを決められ、時間が過ぎていく中「このまま終わったらつまらんなぁ」「でもこういうのがサッカーだし決勝だよな」とも思った。
自分の座席からは今が後半の何分なのかわからなかった。アディショナルタイムは8分あったらしいが、表示されたことにも自分は気付いていなかった。「あとどれくらい時間が残っているんだ...?」とずっと思っていた。

しかしヴェルディは今年やってきたサッカーで、チャンスを狙い続けていた。そしてそれが身を結ぶ。
エスパルスのボールロストから中原がボールを前に送り、抜け出した染野がPKを獲得。
周りの知らないサポーターの方から歓喜のハイタッチをされるも「まだゴール決まってへんから!」と叫んでいた。
とてつもない緊張感。どんなPKよりも、背負わされるものが大きすぎる。誰が蹴るのかもわからないまま、とにかくボールだけを見ていた。そのボールはネットに吸い込まれた。興奮しすぎて身体のバランスを崩すくらい周りの人とハイタッチした。
そこからのことはよく覚えていない。意味もないのに腕時計を叩くアピールを何回もしていた気がする。

試合終了の笛。引き分け、この試合においてそれは勝利を意味した。
ゴール裏は無茶苦茶になった。大歓喜。サポーターはきっとこんな瞬間があるから、試合を見にわざわざスタジアムへ行くのだろう。

東京ヴェルディはJ1昇格を、いやJ1復帰を果たした。16年ぶりのJ1である。
ヴェルディを支え続けたサポーターの皆さん、関係者の皆さん、J1復帰おめでとうございます。
これまでヴェルディを支えてきた人たちが報われたのが、自分は嬉しかった。

あの瞬間に立ち会えたことは忘れないと思う。
試合後に自分の最前列をふと見ると、ヤマハスタジアムにいたコアサポの方が…
いやさすがにそんな出来すぎた話はない、人違いだと思うことにする。

2023年12月2日 J1昇格プレーオフ決勝
東京ヴェルディ1-1清水エスパルス
国立競技場

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