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琉球王国時代の復元①

てるる詩の木(うたのき)工房メールマガジンへようこそ!Vol,35

2023年12月13日号

復元で再現した『巻胎』(けんたい)技法

こんにちは。
てるる詩の木(うたのき)工房、高良のり子です。

今日は12月13日、旧暦11月1日の新月です。
師走の忙しい時期を皆様お過ごしでしょうか。
新しい年への希望をそっと温めるような時期ですね。
気持ち良い新年が迎えられるよう、ラストスパートを頑張っています!

今回は「琉球王国時代の復元①」についてです。

私たちは楽器を制作する工房ですが、
「文化財復元業務」で木地製作者として関わっています。
もう一つの大切なライフワークです。
 
「レプリカ」と「復元」の違いとは、
「レプリカ」が表面的に似せるのに対して
「復元」は資料に基づいた根拠を持ち
技法や材料も往時のものを再現します。

これまで色々な復元木地製作に関わってきましたが、
今回はその中から徳川美術館所蔵の国指定重要文化財、
「花鳥七宝繋文密陀絵沈金足付盆」
(かちょうしっぽうつなぎもんみつだえちんきんあしつきぼん)
の復元のエピソードです。

沖縄から消えてしまった技法の一つに巻胎(けんたい)があります。
テープ状に裂いた木をぐるぐると巻いて作る技法です。
同じ技法で有名なものには、正倉院の漆胡瓶(しっこへい)があります。
「曲げわっぱ」で知られている曲げ木ですが、
古くは沖縄でも器を作る時に木を巻いて形作ることが行われていました。
技法を辿っていくと、東南アジアにも竹を割って巻きつけて
宝珠のような大きな形を作っており、
その技法が海を伝って広がっていったと考えるとロマンがありますね。

今から14年前の2009年に木地の製作依頼がありました。
この足付き盆は王家の神事に使われた「御供飯」(うくふぁん)という器でした。
実物を名古屋の徳川美術館に熟覧に行く機会をいただき
美しい器をつぶさに眺めて寸法を測ったり製作の手掛かりを探しました。

これまで、消えてしまった技法「巻胎」を復元しようと試み、
様々方法を試してきました。
接着剤も漆なのか膠(にかわ)なのか、どうやって巻いていったのか、
30個以上はトライ&エラーを繰り返したと思います。
いにしえの人がいったいどのように、どんな気持ちで作ったのか、
半年あまりをかけて作る中で少しずつ近づいていきました。

この器は薩摩が沖縄に侵攻した際に島津義久が持ち帰って
当時駿府に住まわれていた徳川家康に献上し、
家康の形見分けとして尾張徳川家に伝えられました。
そのため年代がはっきりとしています。

沖縄では大戦で多くの文化財が消失してしまいましたが
徳川家にあったために戦災を逃れることができました。
しかし琉球漆器の名品でありながら沖縄に戻ってくることはできません。

依頼のあった2009年は奇しくも薩摩侵攻から400年目という
節目の年でした。
武力で奪われた「御供飯」でしたが
「作る」という平和的手段でもう一度沖縄に戻ってきたことは
とても誇らしく嬉しい出来事で、
そこに関わる機会が与えられたことに感謝しています。

*今回もてるる詩の木(うたのき)工房メールマガジンを
 ご購読いただきありがとうございます。
 今日も良い日となりますように。


私たちは沖縄県うるま市で、 楽器を制作する工房です。
2002年より、 厳選した沖縄の木を用い、
手加工で竪琴・ライアーをはじめ
心を込めた手作りの楽器をお届けしています。

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編集後記
楽器と復元、かけ離れているようですが以外と共通点があります。
木を曲げることや接着剤に膠(にかわ)を使うこと、
またいにしえの人の思いに触れることも同じです。
楽器制作の技術は復元にもつながります。
4年前に火災によって消失してしまった首里城ですが、
私たちも今回の復元に一部関わっています。
近い将来にまた美しい首里城の姿が再建されるのを楽しみにしています。
いつかまたご紹介出来ると思います。

今年も多くの方々に大変お世話になり感謝申し上げます。
皆様どうぞ良い年をお迎えください。
(のり子)

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