20231018マケラ/オスロフィル感想

20231018日、クラウス・マケラ指揮、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団が演奏するシベリウスの交響曲第2番、第5番を聴きに行きました。アンコールでは、レンミンカイネンの帰郷が演奏されました。

以下、感想となります。

正直に言うと、前半のシベ2を聴いて帰ろうと思った。
現代のPOPsなどではよくある、メロディーの押し売りのような演奏で全体の構成力の弱さが目立った。

シベ2は、特に部分的に良いメロディーが多い。
弦楽器は8型で、まず冒頭の伴奏系が、大編成らしく茫洋として柔らかい音作りは注意を惹きつける。
楽譜に書かれている以上の細かな強弱や、メロディーの弾き方、一つ一つは非常に参考になるのだが、
残念ながら、そこに物語性を感じず、短期的な快楽ばかりを求めるような演奏に聞こえた。
メロディーの頭に大袈裟にアクセントをつけたり、強弱もsubitoで変化することが多く、心拍数の早い音楽であった。

また、弦楽器の強奏部分は、弓圧をかけすぎていて、弓のリリース時の残響が短いことからも察せられる。
フォルテとフォルテッシモの違いがわからず、音楽の頂点が明確になっていない。
2楽章冒頭のように、弱奏、ピチカートだが、の部分は、弱奏の中にも強弱や表情がよく出ており個々人の上手さを感じることができたのは良い点。弱奏の幅は広い。

3楽章から4楽章へのアタッカーの部分は、顕著に乱れを感じた。8型のデメリットで、弦楽器がクレッシェンドすると、木管が埋まってしまい、金管・木管・弦楽器の間のアンサンブルも乱れた。音楽の方向性が定まらず、最後の方には飽きてしまったというのが正直な感想である。

だが、後半のシベ5は、一転して、計算されたような音楽であった。計算せざるを得ない曲なのかもしれない。1楽章は、後半に向かって、徐々に加速し続ける音楽で、特に最後にバイオリンは難しい分散和音の伴奏があるのだが、よく聞こえて、アンサンブルもよく、この日一番印象に残った部分である。
3楽章の最後は、長身の若き指揮者がやると非常に映える。音だけでなくビジュアル的にも印象に残った部分だ。
個人的にシベ5で少し残念なのは、楽譜以上の微妙なクレッシェンド・ディクレッシェンドが多かったこと。シベリウス音楽は、特に後期になればなるほど、音は少なく、朴訥としたような、無駄を削ぎ落とすような印象が強く、わずかな強弱をわざわざ入れなくても、十分に曲の魅力は伝わると思う。

と、ここまで書いて、前半はもしかしたら、最近の聴衆を惹き込むための意図的なお祭り騒ぎの演出かもしれないと思い始めた。
惹きつけて、後半のがっつりしたクラシックにも興味を持たせる。
そういう策士的な一面もある演奏会だったのかもしれない。

p.s
さらに気になり手元の別の指揮者・オケによる演奏を聴き比べてみた。やはり全体的に構成力にはまだまだ発展の余地はあるように感じた。勢いだけではない、老獪な演奏が聞ける日が待ち遠しい。

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