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"新卒採用"のPEST分析|新卒史と就活サイト経済、求められる価値、AI技術...

こんにちは、へりおです。noteでは読書記録や本の紹介、Twitterではマルチな情報発信をしています。

ワンテーマPEST分析をしていきます。
PESTで扱う観点は、政治、経済、社会、技術といった4つになります。マクロ環境(外部環境)を分析するマーケティングフレームワークで、このような観点を持つことで、正しく世界を見ることができると考えています。



今回のテーマは、、、

”新卒採用”

です。


4つの観点から、見ていきましょう!


Political:政府主導の”色褪せた”就活ルール


個人的に日本独自の新卒採用の歴史が気になったので調べてみました。

まず一括採用のルーツは、大学が不足していた第一次世界大戦期。旧帝大しかなかった日本では、企業が高卒の若者を育成するポテンシャル採用がはじまりました。(それ以降、大学がつくられたものの、お金の面から、大学より就職を希望する学生が増えました。)

そして日中戦争の頃には、政府が企業に新卒者を割り当て初任給の均一化を図りました。(国家総動員法に基づき発令された「学校卒業者使用制限令」によるものでした)

高度経済成長期には、採用が激化。ここで、文部省が1953年に「卒業予定者の就職に関し大学が求人側に推薦を開始する時期に関する申合せ」を行いました。ここで、就職開始日を定めた就職協定が発表されました。(しかし守られない新卒採用無法地帯に対して、1997年には廃止されました)

就活協定は、倫理憲章として緩いルールという形になりました。日本経団連が、採用選考に関する指針を出しましたが、罰則規定もなく意味があったとは言えず。2021年からは、このような”就活ルール”すらも消失しました。これに伴い新卒一括採用を廃止して通年採用を行う企業も現れました。

2021年以降は政府が再び新たなルールづくりをする予定だそうです。(学生に混乱が生じないように25卒までは現行の日程を維持すると報道されていますが)これがどのような効力をもたらすのかは未知数ですが。

当時学生だった私からすれば、学生の学業の妨げにならないとはいいつつも、4年生手前の3月から就活に出遅れることで、結果的に就活が長引き4年生の学業を妨げる印象を持っていました。(個人的には大学1年生の頃から、ベンチャーの長期×有償のインターンに参加していましたね)そもそも、経団連に所属しないベンチャー系はインターンからの採用しており、すでに形骸化していた制度でした。

採用の前倒しが、学業の妨げという考えがそもそも間違い。特にインターンは、常に次のステップである社会人のリアルを想像できる大事な取り組みだと思います。バイトばかりの中だるみ大学生にならずに済みますし、自分が大学で取る講義が鮮明になります。彼らの知識体系がより強固になることでしょう。(学生を労働力とみなす一部のブラックインターンは見過ごせませんが)

戦争期がルーツの新卒採用。日本のビジネスが停滞している現代に適応する新しいカタチの新卒採用が必要かもしれませんね。


Economic:コロナで苦境に、”個別”にシフト



新卒採用で用いられるナビサイトなどの新卒採用支援サービス市場は、前年度比2.5%増の1,286億9,000万円(2019年)となっています。新型コロナにより、イベントが軒並み中止になり、2020年以降は減少に転じる予測です。

新卒採用支援サービス市場


新卒採用における主要就職サイト(リクナビ、マイナビ、キャリタス)について、22年卒向けサイトオープン時点(21年3月1日時点)での掲載企業数を確認するとリクナビ(リクルート)は1万830社。前年比で44%だ。マイナビ(マイナビ)2万4215社、キャリタス(ディスコ)は1万6330社と比較すると業界最大手だったリクルートは、もはや3番手だ。

谷出 正直
採用コンサルタント/採用アナリスト


業界の競合同士は熾烈な戦いを繰り返しています。しかしながら、リクナビやマイナビなどのナビサイトは学生のプラットフォームになっている一方で、利用する企業側にとってコストが高いという欠点があります。そして、企業側がアクションしにくいことに加え、個別対応がやりにくいということがあります。

ナビサイトのクライアントである企業の悪口は書けませんので、学生側も″広告″な情報を間に受けて採用フローに入っていきます。結果的に新卒3ヶ月で退社してしまうこともあるかもしれません。

このようなことを背景に、個別に且つ自社内で完結させる採用形態も増えています。今後はスカウトをはじめとしたダイレクトリクルーティングや、SNSなどでオウンドメディアを構築し、直接応募に乗り出す企業も増えていくでしょう。インターンで長期にわたって相性を見極めるかもしれません。このような新卒採用では、営業畑や技術畑の社員であれ、採用活動を学び参加する必要があるように思えます。


Socio-cultural:新卒に求める能力”不易流行”


採用の文化ということで、日本で求められてきた能力の変遷についてご紹介します。

変わらず求められる能力8項目 by リクルートワークス研究所(2006)


社会に合わせて変化する求められる能力 byリクルートワークス研究所(2006)

URL:https://www.works-i.com/research/paper/works-review/item/060601_WR01_05.pdf


元々、年功序列の日本企業では、かつては出る杭を排していました。つまり長期安定勤務に適正があるかということです。しかしながら、時代を経るにつれ、将来伸びるであろうポテンシャルをみるように。(一説には、学生不足が原因とも)その後は、新しいモノを生み出す好奇心創造力など、イノベーションができる起業家精神を求めるようになりました。チームで円滑に働くことができる協調性やコミュニケーション力も重視されています。

実際、若手に足りないなと思われている能力はこちら。参考までに

労働市場における人材確保・育成の変化第3章 by 厚労省

URL:https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/13/dl/13-1-5_01.pdf

創造力や働きかけ力は、前述の通りですね。


アメリカでは、通年採用且つポジション別採用。学生であれ、大学で身に着けた専門知識とインターンシップの実務経験から即戦力となり得る人材を採用します。そもそも新卒枠がないアメリカは、日本でいえば新卒も中途採用に参加するようなものなのです。

アメリカのカレッジリクルーティングについてはこちらのURLから
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2014/special/pdf/081-091.pdf


Technological:”機械”が人間を採用するトキ


新卒採用の段階で注目すべきは、AIによる採用でしょう。
ソフトバンクも動画面接を評価するAIシステムを共同開発し、2020年5月末から使い始めています。ソフトバンクは、ベテラン人事のノウハウを学習させることで、動画面接の選考作業にかかる時間を約70%減らすことができると予測しています。

シリコンバレーに本社のあるVCV.AIの採用AIは、顔認識音声認識を使用して求職者を評価します。AIが微妙な表情の変化などによって自動的にスクリーニングするのです。ウソつけないと開き直るしかありませんね(笑)

しかしながら、AIの学習不足による諸問題も噴出しています。合理化を推し進めたことで、履歴書がみられず人材を取りこぼす問題。そして特にAIのバイアスの問題があります。アメリカでは、過去に採用したエンジニアは男性が多いことをAIが学習した結果、女性に不利に評価していたことが判明し、企業は利用を停止したこともあります。





結論


新卒採用についてPESTの観点から分析してみました。

さてこれからの”新卒採用”はどうなるでしょうか。

アメリカのように大学在学中からインターンシップに参加し、実務経験を積むことが主流になるかもしれませんし、逆求人などから採用フローに乗る人も多くなることでしょう。つまりは新卒と中途の境界が融解していくと予測されます。だからこそ、学生も一定の成果を求められます。何か新しいことをやってみた経験や誰かと一緒になし得たことが評価されやすいかもしれません。しかしながら、このような話を面接の場で”盛る”ことも難しくなります。なぜなら、AIによってウソが見破られてしまうからです。つまり、学生にとっては中学、高校、大学の初等からキャリアについて見据えて動かなければ通用しなくなる時代になります。特にこれからの大学生にモラトリアム期間などないのです。早期のキャリア教育が必要になるということは、自分のやりたいこととは何なのかを常に考える教育が求められているのです。この中で政府や企業は、学生の教育を阻害しないために就活ルールを設定するという考えを捨て、大学での学びが社会で実践的に利用されていることを目で見ることで、学生教育に相乗効果をもたらすという考え方を持つべきなのです。


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