これから社会に出る人が、最低限必要な行動力|行動分析学から考える
こんにちは。京都在住大学生のぐりです。
今回は
『プログラム学習で学ぶ行動分析学ワークブック』
本著では、行動分析学を多くの事例から考えていきます。普段何気なく行動をしていますが、その行動に至るプロセスには日々の経験の学習が伴っていることがわかりました。また、日常生活への応用についても図を用いて記されているので、自分自身のスキルとして実践しやすいのではないかと思います。
本著を参考にしながら、行動の形成までのプロセスを理解します。そして、社会に出た時にどのような行動が必要かを行動分析学の観点から考えていきます。
今回はキーワードが多用されているので、理解しやすいようにあらかじめ図解を載せておきます。
行動には2種類
それでは、まずは行動というものどういうものか理解していきましょう。
一般的には、あることを行うことを指しますが、行動は大きく2つに分けられます。
それは、レスポンデント行動とオペラント行動です。
レスポンデント行動は、レスポンス=反応というように、生体が外部からの刺激によって誘発される行動を指します。
例えば、
「ベルを鳴らして、エサを与えていた犬が、あるときからベルを鳴らしただけでよだれを垂らすようになった」
という『パブロフの犬』はレスポンデント行動の中の古典的条件付けというものに当てはまります。
外部の刺激によって、行動(反応)が変わるという部分が面白いです。
次に、オペラント行動はオペレート=操作というように、生体が自発的にする行動を指します。
行動をすることで、外部の環境や状況がどう変わるのか。それに伴う行動の変化に焦点を当てています。
ここまでをまとめると、
外部(環境)と内部(生体)と分けた時に、「外部から内部へ」と考えるのが誘発的なレスポンスデント行動で、「内部から外部へ」と考えるのが自発的オペラント行動だということです。
行動が形成されるワケ!
今回は自発的な行動を中心に考えてみます。
オペラント行動は、内部から外部へ影響をもたらしますが、その変化後の外部環境の結果の違いによってその後の行動が変わっていきます。
行動の変化は、主に強化・弱化・消去の3つが挙げられます。
1つずつ説明していきます。
「ある行動が、自分にとって良い結果をもたらした。だからやり続けるようになった。」というものが強化です。
小さい頃に世界の偉人というマンガを読んで、それで知ったことを親族に話すと、「すごいね、よく知ってるね。物知りだね。」という風に褒めてくれました。その経験から、歴史に関する本を自分から積極的に読むようになりました。高校時代得意な教科について尋ねられたら、世界史だと迷わず言えるなぁと今振り返って思いました。
この褒められたという良い結果・因子を、好子と言います。
逆に行動が悪い結果をもたらすこともあると思います。「悪い結果が起こったことにより、次回以降その行動が減ること」を弱化といいます。
皆さんも、怒られたがために行動を変えたことが多いのではないでしょうか。誰しも何度も同じことで怒られたくないですよね。僕には1つ下の弟がいますが、喧嘩をすると基本的には兄が怒られるので、喧嘩をそもそもしなくなるようになりました。成長して、我慢強くなったということも当てはまりますが...
この怒られたという悪い結果・因子を、嫌子と言います。
最後の消去については、「行動をする前と後で外部環境が変わっていないがために意味がない考え、行動が消えること」を指します。
消去の例で挙げるとするならば、
異性に対してアプローチをかけるものの、まったく振り向いてくれない。だからもう告白せずに諦めてしまう。
近年の恋愛傾向として多いシチュエーションですね(笑)
以上をざっくりとまとめると
3つの自発的行動の変化に共通する点は、外部環境や状況の結果と密接に関わっているということです。
新しい行動を覚えるには
これまで、自発的な行動が結果と密接に関わっていることを述べていきました。これからは新しい行動を得るにはどうしたらいいのかということを考えていきます。
本著では、新しい行動について以下のように述べられています。
形成していきたい行動であっても、その人が現在おこなっていない行動の場合は、いくら待ってもその行動が生じることはありませんから、そもそも強化することもできません。(中略)その人がまだ獲得していない行動を形成することを反応形成・シェイピングといいます。
つまりは、いくら良い因子(好子)があっても、しっかり反応形成がされていなければ、行動は強化されていきません。学習しないというわけです。
では、反応形成をするにはどうしたらいいのか。
簡潔に表すとこのようなフローで形成していきます。
漸次接近法(まねる)→課題分析(違いを見つける)→行動連鎖(自分に取り込む)
まず一つ目の漸次接近法は、本著で以下のように述べられています。
シェイピングの中でも、その人がもっている行動レパートリーの中で、目標の行動に少しでも近い行動が生じたらその行動を強化しながら、徐々に本来目標としていた行動に近づけていくという方法(後略)。
例を挙げるとするなら
赤ちゃんが、「ママ」と言えたらお母さんが喜んでくれる。喜んでくれることで、しっかりとママと発音できるようになる。
そのような感じです。
まねてみるだけでは、目標とする行動ができない複雑な行動形成の場合に、課題分析と行動連鎖のフローが追加されます。
課題分析は、レシピを考えるとわかりやすいです。
ケーキを作るという大きな行動に対して、スポンジにクリームを塗ったり、イチゴを盛りつけたりするというような細かな工程に分けて考えてみる。
複雑な行動に対して、細分化して単純な行動に分けることが課題分析になります。
行動連鎖では、細分化したものを一連の動作に再構築します。
スポンジケーキを作るために、卵とグラニュー糖を混ぜた後に、薄力粉を加え、最後にバターを加えて混ぜるというように、一連の動作として理解するわけです。
ここまで読んでいただいた方には、私たちが新しい行動形成をするために重要なポイントが、課題分析と行動連鎖だということがわかると思います。
社会で必要な最低限の行動力
これまで、自発的な行動とその結果の関係性によって行動が形成されることがわかりました。そして私たちが新しい行動を形成するとき、それは複雑なものがほとんどなので、課題分析と行動連鎖の過程が重要になっていきます。
反応形成を
私たちは、これらを1人で行ってきたでしょうか?
そんなことはないですよね。
ほめてくれたり、喜んでくれたりする。
そのような、誰かとのかかわりが好子となって、反応形成を手助けしてくれました。
このように、内部ではなく外部からの手助けというものも大事というわけです。
この手助けというのは、先ほどの好子の提供に加え、直接的な行動形成の手助けも含まれます。
例えば、テニスの正しい打ち方を覚えるとき、
コーチが素振りを見せてくれたり(モデリング)、私の腕を誘導してくれたり(身体誘導)、言葉で教えてくれたり(言語教示)しますし、テニスがうまくなるための本を買えば、細かく文字で説明されています(視覚呈示)。
このような手助けは、新たな行動ができるようになる時間に影響します。コーチの教え方が上手だと、できていない部分を的確に指摘してくれて、正しいストロークを体で覚えれるようにしてくれます。このように外部からの手助けによって、課題分析と行動連鎖をスムーズに行うことができます。
これから社会人になるために最低限必要な行動とは、これら環境を自発的に作り上げることです。
インターンに行ったり、トップレベルの人のセミナーに行ったり、本を読んだりする。この経験から、自分ができていない部分を分析して、新たな行動を形成します。コーチがいれば、私たちの行動に対して褒めてくれたり、課題を提示してくれたりして全力でサポートしてくれることでしょう。
このように新たな行動形成には、人とのつながりが重要になっていきます。良い結果(好子)も、正しいコーチングもすべて他者によるものです。だからこそ、周りの環境・人間関係が重要になります。自分から目的意識をもって、適切な環境を作り上げることで、自然とできることも増えていきます。
自分自身が学習できる外部環境こそが、社会で成長していくためのカギになっていくでしょう。
以上、お読みいただきありがとうございますした。
【参考文献】
吉野智富美, 吉野俊彦(2016)『プログラム学習で学ぶ行動分析学ワークブック』, 学苑社
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