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ポピュリズムに潜むナショナルアイデンティティ|現代史から考える

こんにちは、自宅でひんやり涼しい夏を過ごしているぐりです。クーラーに頼りっぱなしの今年は、光熱費がとてつもない額になっているかもしれないとヒヤヒヤしています(笑)

今回読んだ本は、

『世界と日本の今がわかる さかのぼり現代史 』

です。

著書は、現在の実状から、10年前や20年前というように遡って歴史を紐解いていきます。この手法によってこれまでの結果の原因となった事柄が非常にわかりやすい形で表されており、馴染みのない国際情勢や政治経済の課題についても容易に理解することができました。国内の北方領土問題や沖縄基地問題、国外のイギリスEU離脱やクルド人問題など多岐に渡るテーマで教養を深めることができました。

今回は、この中からポピュリズムについて独自に見解を述べていきたいと思います。


ポピュリズムとは?

ポピュリズムはどのようなものなのでしょうか。著書では以下のように述べられています。

世の中が混迷しているときほど、人々は言葉にできない不満や不安を抱えています。そんなときに、自分たちの暮らしがうまくいかないのは誰が悪いのかを、単純でわかりやすい言葉で示してくれる人が現れると、ついその言葉に飛びついてしまいます。このように民衆にとってわかりやすい敵をつくることで、人々の支持を得て、その支持を動力源に政治を推し進めようとするのがボピュリズムです。

僕は、「敵をつくり攻撃することでまとまろうとする考え方」だと解釈しました。実際、集団心理学には共通の敵を創ることで団結力を高める手法が存在します。このことからも、ポピュリズムは集団心理をコントロールする効果があると言えます。


本著では続けて、ポピュリズムの問題点について述べられています。

政治家が民衆の側に立つこと自体は間違っていません。しかしポピュリズムの問題は、敵を創出することで、さらに深い分断や敵対心を社会の中に生み出してしまいかねないことです。

ポピュリズムは、多様な人類が住む現代社会において非常に差別的な考えだと言えます。このような考え方の背景には、過剰なナショナルアイデンティティが潜んでいると考えています。


ポピュリズムとナショナルアイデンティティ

これからはナショナルアイデンティティについて触れていこうと思います。

ナショナルアイデンティティは国民としての自己認識のことです。日本人なら日本人としての帰属意識を持つことです。多民族な世界において、ナショナルアイデンティティは重要な意味を持ちます。なぜなら、人々が社会を形成するための基盤となり得るからです。

例えば、日本人は日本人としてまとまったことで、国際的にも緩い政策にもかかわらず、コロナの感染者数は低いままで抑えることができました。(最近では1日に1000人以上の感染があると発表されており、まだまだ予断を許さない状況ではあります。)このように、国民意識を持ち団結することで、社会課題に立ち向かうことができたという事例もあります。

しかし、このナショナルアイデンティティが膨らみすぎ、高い自尊心になってしまうことが問題です。この自尊心が、他者を卑下するポピュリズムに繋がってしまったと考えています。


過剰な自尊心がもたらす弊害

自尊心が高いことによるデメリットを、ポピュリズムに関係する具体例とともに考えてみました。

1.  自分自身と他者を比べ、見下す。

→白人至上主義を唱えた人々による有色人種差別

2.  他者を否定し、敵対視する。

→グローバル化の経済的恩恵を受けられなかった白人工場労働者などの「忘れ去られた人々」による移民排斥運動

3. 挫折・失敗に弱い

→財政難を引き起こした南米諸国の左派政権による「ばらまき政策」

このように考えると、過度のナショナルアイデンティティの高揚は敵を創りあげることで、様々な社会問題の本質から目をそらし、失敗に陥ることが過去をふりかえっても多いような気がします。


世界市民としてのアイデンティティ

ナショナルアイデンティティとして国民意識を持つことは大事です。しかし、過去をたどると国の文化や伝統は他国から入ってきたものであることが多いことがわかります。日本でいえば、中国から伝来した漢字や、仏教などが有名です。仏教は北インドの釈迦によるものですから、遠いインドから日本に伝わったといっても良いでしょう。

このように、私たちの持つナショナルアイデンティティは、他国の文化や伝統が入り混じってできたものだと考えられます。

また、僕たち自身も完全な日本人というわけではありません。以下の動画は、それぞれ異なるナショナルアイデンティティを持つ67人の人々のルーツを調べる「The DNA Journey」というものです。


今では遺伝子によってルーツの検査もできるようですが、動画にもあるように、僕たちの体には世界各国の血が流れています。


このように、国の文化や伝統、我々国民自体までもがグローバルなものであることを理解することが、ナショナルアイデンティティが膨らみすぎ、高い自尊心をもたらすことを防ぐことができます。


ナショナルアイデンティティによる適度な自尊心は、人々が社会を形成するための重要な基盤になります。それに加え、地球全体を見渡した「世界市民」としてのアイデンティティも構築することで、ポピュリズム的な差別的な考えを押し返し、数多くの国際課題解決の糸口になるでしょう。


【参考文献】

長谷川敦(著者)祝田秀全 (監修)(2018)、『世界と日本の今がわかる さかのぼり現代史 』、朝日新聞出版





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